中国神華能源(チャイナ・シェンフア・エナジー)
香港1088 7月3日 27.30HKドル
2社買収で埋蔵量上乗せ、A株IPO計画は株価押し上げ要因に
- 中国神華能源は親会社の神華集団有限責任公司から、子会社2社を総額33億3000万元で買収する計画だ。この買収による短期的な利益の上乗せには期待しにくいものの、同社の石炭埋蔵量(過半数権益を保有する炭鉱の販売可能分)は6%増加し、発電容量(過半数保有の完工済み発電所分)は11%拡大することになる。同社はまた、A株の新規株式公開(IPO)で最大18億株を発行する計画。BOCIはこの2つの動き、特にA株発行が今後、同社株価の押し上げ要因になると見ている。
- 同社が買収を予定しているのは、神華集団神府東勝煤炭有限責任公司と神華神東電力有限責任公司の株式各100%で、買収価格はそれぞれ11億7000万元、21億6000万元。買収価格は独立系評価会社の評価に基づいて算出されており、2社の2006年実績PERにして18倍の水準となる。
- 買収対象の2社は数多くの子会社を抱えているが、中でも重要なのは神華神東電力が権益51%を保有する黄玉川炭鉱。この炭鉱は内モンゴル自治区に位置し、可採埋蔵量は5億7300万トン、うち販売可能分は3億6900万トンに上る。現在は開発途上にあるが、完成後の年産能力は1000万トンに上る見通し。総投資額は2億200万元。この炭鉱の取得により、同社の2010年の石炭生産量は3%増加することになる。
- 黄玉川炭鉱に続いて重要度が高いのは、炭鉱産の残留石を原料とする3つの発電所。3カ所の総発電容量は1340MWで、同社の既存発電容量(過半数権益を保有する既存発電所)の11%に相当する。2社はまた、石炭ベースの化学プラント(カルシウムカーバイドやポリ塩化ビニルを生産)の権益を保有。さらに神華炭鉱エリアで水処理や水供給、環境保護、不動産開発、不動産管理などの業務を手がけ、自社グループ向けにホテルや病院などのサービスも提供している。
- 一方、同社はA株のIPOを実施し、既存発行済み株式総数の10%に相当するA株18億株を発行する計画。公開価格が仮に直近終値を15%下回る水準に設定された場合、資金調達額はおよそ420億元となる。同社は既存の炭鉱、発電所、交通施設などのアップグレードや、将来の買収資金に充当する方針。
- なお、2社買収およびA株IPOはいずれも株主による承認が前提条件。また、買収については国務院国有資産管理監督委員会の認可が必要であり、BOCIは年末の取引完了を見込んでいる。
- BOCIは今後、同社に対する評価を再検討する予定。ただ、主要資産の稼動が2009年以降に予定されることから、利益見通しの上方修正は小幅にとどまる可能性が高い。BOCIは非中核資産の取得に対して慎重な見方を示しながらも、A株上場が短期的な株価押し上げ要因になると指摘。同社株価に対して強気の見通しを維持している。
エン州煤業(イエンチョウ・コール・マイニング) 香港1171 7月3日 11.94HKドル
2007−09年の利益見通し修正、石炭価格の上昇とコスト増大を予想
- BOCIはエン州煤業の2007年、2008年度の利益見通しを5%、4%の幅で下方修正する一方、2009年度については4%上方修正した。石炭価格の上昇や単位生産コストの増大が予想されるため。また、これに伴い、同社株価の先行きに対する見方を中立から強気に引き上げている。
- BOCIは人件費や政策関連費用などの増大を受けてコストがかさむとの見方から、国内石炭価格の高止まり、あるいは一段の高騰を予想している。BOCIはこれまで、2008年の国内スポット価格に関する想定値を「前年比2%低下」としていたが、今年6月末には「前年比5%上昇」に上方修正。また、エン州煤業の2008年の国内契約価格についても、「前年並み」との予想を「トン当たり10元の上昇」に変更した。
- 『ロイター』が先週、日本向けの石炭輸出契約価格をトン当たり75米ドルと報じたことに対し、同社経営陣は明確なコメントを控えたが、BOCIはこの情報はほぼ正しいとの見方。増値税(付加価値税)の輸出還付廃止や人民元の対米ドル相場の上昇、国内石炭価格の高止まりなどを背景に、「輸出価格が大幅に上昇しない限り、同社にとっては製品を輸出に振り向ける価値はない」と指摘している。こうした状況から、BOCIは日本向けの発電用炭輸出価格(2008年3月期)に対する想定値を、当初のトン当たり67.9米ドルから75米ドルに上方修正。次年度以降については横ばいを予想している。
- BOCIは単位生産コストの上昇を予想する理由として原材料価格や人件費、政策関連費用の増大を挙げたが、ほかに生産地盤沈下・修復関連コストも引き続き負担となる見通し。BOCIはこれまで2007年、2008年度に同コストの大幅な減少を予想していたが、同社が年内に6つの村を移転させる計画を受け、横ばい推移との見通しに転じた。こうした要因から、BOCIは2007年度、2008年度の単位生産コストに関する想定値を7%、10%上方修正。新たな想定値をそれぞれ、前年比9%増、同4%増としている。
- BOCIは石炭価格の上昇と単位コストの増大を織り込んだ上で2007−2009年の利益予想を修正したが、同時に1株当たりNAV(純資産価値)も見直し、2007年の予想値を8.86HKドルから9.15HKドルに引き上げた。
- 中国政府はこのところ、本土の機関投資家による海外投資を認めるQDII(適格国内機関投資家)制度を拡大しており、BOCIは今後、AH価格差(同一企業のA株、H株の価格差)が段階的に縮小に向かうとの見方だ。エン州煤業の場合、過去2−3カ月間のAH価格差は最小でも20%に達している。
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