嘉里建設(ケリー・プロパティーズ)
香港00683 3月19日 16.80HKドル
08年通期決算はコア利益が14%減少、慎重見通しを継続
- 嘉里建設の2008年12月本決算は、純利益が前年比54%の30億5000万HKドルにとどまった。不動産評価益などを除いたコア利益は同14%減の22億2900万HKドル。税負担の増大や中国本土での賃料収入の減速、さらに減損損失2億7600万HKドルの計上を受け、BOCIの予想を19%下回った。また、同社は業績の悪化を考慮して減配を実施し、年間配当を前年比26%減の1株当たり0.70HKドルに引き下げた。BOCIは09年予想NAV(純資産価値)比で63%のディスカウント水準を適用し、同社目標株価を引き上げながらも、株価の先行きに慎重な見方を維持している。
- 同社が香港に保有する開発用地は期末時点で270万平方フィート相当。香港の不動産販売利益は08年通期に前年比47%減少した。同期に主な計上対象となったのは、「15 Homantin Hill」「SOHO38」の分譲収益と、「The Belgravia」の物件売却益。一方、同社が香港に保有する賃貸不動産は期末に246万平方フィートに達した。主要物件の入居率をみると、「Mega Box」が97%、「Enterprise Square Five」が99%といずれも高水準を維持。「Mega Box」の通期寄与を受け、同期の正味賃料収入は前年比87%増の2億9500万HKドルに達した。なお、アプレイチャウ(香港島南部)で進めるサンフンカイ・プロパティーズ(00016)との合弁プロジェクトは2010年から11年に延期されており、この点が2010年の業績に影響する見通しとなっている。
- 同社が中国本土に保有する開発用地は期末時点で3560万平方フィート。本土部門の同期利益は前年比6.1倍増の13億HKドルに達したが、繰延べ土地再評価税4億5200万HKドルの発生が部門利益を大幅に目減りさせる要因となった。同期決算に貢献したのは主に、「Kerry Everbright City第2A期」のオフィスと住宅物件の販売。一方、同社は本土に380万平方フィートの賃貸不動産を保有する。国内の景気不透明感を受け、同社は今後、北京や上海、深センなどの主要都市に照準を合わせる半面、揚州、秦皇島、曲阜など観光地での建設プロジェクトをスローダウンさせる計画。同社はこの3都市に440万平方フィート(延べ床面積換算)の開発用地を保有し、この数字は本土の保有用地全体の12.4%に当たる。なお、本土で発生している土地プレミアム(地価補足費)残高は20億HKドルで、同社はうち10億HKドルを今年支払う予定。
- 一方、同社の倉庫・物流センター・港湾施設の延べ床面積は1700万平方フィートで、うち1300万平方フィートが自社保有、残りが賃貸。08年通期の同部門の利益貢献は前年比12%増の5億7800万HKドルに上ったが、特別損益を除くと同3%増。ビジネス環境が悪化するなか、経営陣は引き続き本土の物流事業に力を入れる方針。
- 物流部門に対する慎重見通しに加え、アプレイチャウ・プロジェクトや中国での開発事業の延期を考慮し、BOCIは同社の2009−10年の利益見通しを11−14%下方修正した。
信和置業(シノ・ランド)
香港00083 3月19日 6.63 HKドル
08年12月中間決算は12%増、投資損失の拡大などが不透明要因に
- 信和置業の2009年12月中間決算は、純利益が前年同期比12%増の26億HKドルと、BOCIの予想を22%下回った。投資損失が膨らんだことや新築マンション「The Palazzo(御龍山)」の収益計上が少なかったことなどが、BOCI予想を割り込む要因となった。同期の有価証券投資収益は4億4900万HKドルの損失に転じ、この金額はBOCI予想の3億200万HKドルを超える水準。長期証券投資に絡み、1億9000万HKドルの減損処理を実施したことが響いた。BOCIは香港の住宅相場がさらに20−25%値下がりするとの見方。同社の目標株価を2009年予想NAV(純資産価値)比で48%のディスカウント水準に据え置き、株価の先行きに慎重な見方を継続している。
- 同社が保有する開発用地は昨年末時点で500万平方フィート相当に達し、分譲用不動産の完工面積は同期に120万平方フィート。12月中間期の不動産販売利益は前年同期の2.2倍に当たる28億HKドルに達した。「The Palazzo」のほか、「The Vista」、「One Madison」などの新築物件が寄与した。この金額には「The Palazzo」関連の貸倒引当金1億3900万HKドルが含まれており、この点を考慮すれば、不動産販売部門の粗利益率は51%に達した計算となる。一方、同社はすでに、「The Palazzo」の80%分の予約販売を完了したものの、同社経営陣は延滞など、契約不履行となった物件の収益計上を見送った。ただ、予約販売においては15%相当の手付金を受け取っており、経営陣によれば、契約不履行事例は限られる見通し。また、銀行による抵当評価は現在、予約分譲価格の平均84%に達しているという。
- BOCIによると、「The Palazzo」以外では、ほかに「The Lake Silver」の分譲のタイミングがこの先の業績を左右する見通し。さらに2007年に取得した香港大埔の3区画および中国四川省成都の土地に対する引当金の計上が同社決算の下振れ要因となる。BOCIは「The Palazzo」の契約不履行の増加や証券投資損失の拡大、西九龍開発プロジェクトの延期などを織り込む形で、同社の2009−11年の予想純利益を13−24%下方修正した。
- 一方、不動産賃貸収入は中間期も安定成長を維持した。系列会社を含めた正味賃料収入は前年同期比26%増の9億5000万HKドル。新たに加わった賃貸物件(Olympian City 1および2、Exchange Tower、The Hennessy)を除外しても、同15%の伸びを確保したことになる。
- 同社の純負債は昨年末に自己資本の25%に当たる147億HKドルで、系列会社の負債77億HKドルを足し合わせると224億HKドル(自己資本の38%相当)。一方、手元現金は58億HKドル、未使用分の与信枠は64億HKドルに上り、営業資金(現金)は総額122億HKドルとなっている。
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