先日、トヨタ自動車の株主総会にて、これまでにないタイプの種類株式の発行が可決されました。これについて、機関投資家の立場、既存株主の立場から否定的な意見も少なくないようです。しかし、私たちは個人投資家です。そこで今回のコラムは、個人投資家目線でこの種類株式について検証してみたいと思います。
まず、今回発行される種類株式の特徴につき簡単に説明しておきます。この種類株式は、「AA型種類株式」という名称がつけられ、何といっても最大の特徴はトヨタ自動車が「元本保証」をしてくれるという点です。具体的には、発行から5年経過後に、株主が請求すれば発行価格でトヨタ自動車が株を買い取ってくれるのです。
それ以外に、次のような特徴があります。
筆者は、これらの特徴をみて頭に思い浮かんだのは、「転換社債と同じような感じだな」ということです。
今から25年ほど前のバブル期、上場企業の資金調達手段の中心的存在となっていたのが「転換社債」です。転換社債は、いわば株式と普通社債のいいとこ取りのようなもので、投資家から非常に人気を集めました。
転換社債は、社債として発行されますが、それを株式に転換することのできる権利がついているというものです。
もし転換社債を保有していて、その会社の株価が上昇して転換価格(転換社債を株式に換えるときの価格)を上回ったなら、転換社債を株式に転換して市場で売却することでキャピタルゲインを得ることができます。
逆に、転換社債を取得後その会社の株価が下落してしまっても、社債の満期まで持ち続ければ利息と元本を受け取ることができます。
このように、転換社債は、発行会社の株価が下がってもよし、上がればなおよし、というものだったのです。
このトヨタ自動車の種類株式も、株価が下がっていてもそのまま保有を続ければ配当金を受け取れますし、5年経過後は元本で買い取ってくれます。株価が上昇すれば普通株式に転換した上で売却すればキャピタルゲインを得ることができます。
転換社債と違うのは、「受け取るのは利息ではなく配当金であること」、「株主総会の議決権があること」、「非上場のため5年間は売却できないこと」「5年経過後にはトヨタ自動車自身が株主から買い取りができる」といったものです。
なお、会社が倒産した場合は、株主より社債権者への弁済の方が優先されるため、倒産リスクという点でみると、転換社債より種類株式の方が高くなります。
では、トヨタ自動車の種類株式が個人投資家にとって魅力的なものであるかを検討してみましょう。
他のサイトでは、この種類株式を買うのであれば、トヨタ自動車の普通株式を買う方が有利だ、という意見が多いようです。それには筆者も同感します。筆者のように、投資元本割れのリスクは承知で、できるだけ高いリターンを目指すタイプの投資家であれば、わざわざ種類株式を買わずとも、普通株式を買えばよいのです。種類株式では、今後業績が伸びても配当金が2.5%で頭打ちになり、株価が1.26倍~1.3倍以上にならないとキャピタルゲインも期待できないのですから当然です。
でも、個人投資家の中には、「元本割れは避けたいが、できるだけ高い利回りの商品に投資したい」という方は非常に多いと思います。そうした方にとって、種類株式を普通株式と比較したところで意味はありません。この種類株式は転換社債のような性格を持っていますから、他の債券と比較して魅力的な投資対象かどうかを判断すべきです。
そこで、今回のトヨタ自動車の種類株式を、個人向け国債、そして個人投資家に大人気のソフトバンク社債と比べてみたいと思います。
まず、債券への投資で重要なのは将来にデフォルト(債務不履行)、つまり元本や利息が支払われなくなるリスクがどの程度あるかを示している「格付け」です。
スタンダード&プアーズの格付けでは、ソフトバンクは「BB+」であり、投資不適格、いわゆる「ジャンク債」の扱いとなっています。トヨタ自動車と日本国債はともに「AA-」です。「AA-」の格付けは日本国内ではトップクラスの財務安全性を意味します。
この点を考慮して利回りを比較すると、6月18日に発行されたソフトバンク株式会社第47回無担保社債は、期間5年で、利率は1.36%です。対してトヨタ自動車の種類株式の配当利回りは、5年間のトータルを平均すると1.5%になります。なんと、国内トップクラスの財務安全性を誇るトヨタ自動車の種類株式は、格付けがトヨタ自動車よりも低い会社の社債よりも利回りが高いのです。
また、6月に発行された個人向け国債(固定5年・第50回)の利率は0.08%でした。日本国債と同じ格付けのトヨタ自動車の種類株式の5年平均利回り1.5%に比べて、スズメの涙ほどの利回りにしかなりません。
このように、トヨタ自動車の種類株式は、格付けが同じ国債の利回りよりはるかに高く、格付けがはるかに低い社債の利回りよりも高いということが分かります。
ですから、筆者の感想としては、トヨタ自動車が今後5年間で経営危機に陥るようなことがないという前提で考えれば、他の会社の社債や日本国債に比べると、明らかに非常に好条件であるといえます。発行価格は総額で5,000億円とのことですが、おそらく人気が殺到するのではないでしょうか。
今回のトヨタ自動車の種類株式は、個人投資家がリスク商品へ投資しやすくする環境を整備するための実験的な要素も強いように思えます。だからこそ、こんなにも好条件になっているのでしょう。今後も各社から様々なタイプの種類株式が登場し、個人投資家に様々な選択肢ができてくれることを期待したいと思います。
本日6月25日、拙著最新刊「株を買うなら最低限知っておきたい 株価チャートの教科書」がダイヤモンド社より発売されました。
これは既刊の「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」の姉妹版です。筆者が株の買い時、売り時のタイミングを具体的どのように判断しているかが分かる内容です。
「ファンダメンタル投資の教科書」と「株価チャートの教科書」を携えていただければ、株式投資は鬼に金棒であると自負しております。是非ご一読下さい。
本資料は情報提供を目的としており、投資等の勧誘目的で作成したものではありません。お客様ご自身で投資の最終決定をおこなってください。本資料の内容は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手・編集したものですが、その情報源の確実性まで保証するものではありません。なお、本資料の内容は、予告なしに変更することがあります。
足立武志
知って納得!株式投資で負けないための実践的基礎知識
株式投資がうまくいかない、という個人投資家の皆様へ。実践をベースにした「すぐに役立つ真の基礎知識」は、お客様の株式投資戦略に新たなヒントを提供。負けない、失敗しないためにはどのように行動すべきか、これから「株式投資」を始めようと考えている方、必見です。
株式等は株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。上場投資信託(ETF)は連動対象となっている指数や指標等の変動等、上場投資証券(ETN)は連動対象となっている指数や指標等の変動等や発行体となる金融機関の信用力悪化等、上場不動産投資信託証券(REIT)は運用不動産の価格や収益力の変動等、ライツは転換後の価格や評価額の変動等により、損失が生じるおそれがあります。※ライツは上場および行使期間に定めがあり、当該期間内に行使しない場合には、投資金額を全額失うことがあります。
上場有価証券等のうち、レバレッジ型、インバース型のETF及びETN(※)のお取引にあたっては、以下の点にご留意ください。
※「上場有価証券等」には、特定の指標(以下、「原指数」といいます。)の日々の上昇率・下落率に連動し1日に一度価額が算出される上場投資信託(以下「ETF」といいます。)及び指数連動証券(以下、「ETN」といいます。)が含まれ、ETF及びETNの中には、原指数の日々の上昇率・下落率に一定の倍率を乗じて算出された数値を対象指数とするものがあります。このうち、倍率が+(プラス)1を超えるものを「レバレッジ型」といい、-(マイナス)のもの(マイナス1倍以内のものを含みます)を「インバース型」といいます。
信用取引は取引の対象となっている株式等の株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。信用取引は差し入れた委託保証金を上回る金額の取引をおこなうことができるため、大きな損失が発生する可能性があります。その損失額は差し入れた委託保証金の額を上回るおそれがあります。
国内株式の委託手数料は「ゼロコース」「超割コース」「いちにち定額コース」の3コースから選択することができます。
〔ゼロコース(現物取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
但し、原則として当社が指定するSOR(スマート・オーダー・ルーティング(※1))注文 のご利用が必須となります。(当社が指定する取引ツールや注文形態で発注する場合を除きます。)
ゼロコースをご利用される場合には、当社のSORやRクロス(※2)の内容を十分ご理解のうえでその利用に同意いただく必要があります。
※1 SORとは、複数市場から指定条件に従って最良の市場を選択し、注文を執行する形態の注文です。
※2 「Rクロス」は、楽天証券が提供する社内取引システム(ダークプール(※3))です。
※3 ダークプールとは、証券会社が投資家同士の売買注文を付け合わせ、対当する注文があれば金融商品取引所の立会外市場(ToSTNeT)に発注を行い約定させるシステムをいいます。
〔ゼロコース(信用取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
但し、原則として当社が指定するSORのご利用が必須となります。(当社が指定する取引ツールや注文形態で発注する場合を除きます。)
〔超割コース(現物取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
5万円まで 55円(税込)
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 115円(税込)
50万円まで 275円(税込)
100万円まで535円(税込)
150万円まで640円(税込)
3,000万円まで1,013円(税込)
3,000万円超 1,070円(税込)
〔超割コース(信用取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 148円(税込)
50万円まで 198円(税込)
50万円超 385円(税込)
超割コース大口優遇の判定条件を達成すると、以下の優遇手数料が適用されます。大口優遇は一度条件を達成すると、3ヶ月間適用になります。詳しくは当社ウェブページをご参照ください。
〔超割コース 大口優遇(現物取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
〔超割コース 大口優遇(信用取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
〔いちにち定額コース〕
1日の取引金額合計(現物取引と信用取引合計)で手数料が決まります。
1日の取引金額合計 取引手数料
100万円まで0円
200万円まで 2,200円(税込)
300万円まで 3,300円(税込)
以降、100万円増えるごとに1,100円(税込)追加。
※1日の取引金額合計は、前営業日の夜間取引と当日の日中取引を合算して計算いたします。
※一般信用取引における返済期日が当日の「いちにち信用取引」、および当社が別途指定する銘柄の手数料は0円です。これらのお取引は、いちにち定額コースの取引金額合計に含まれません。
かぶミニ®(単元未満株の店頭取引)は、当社が自己で直接の相手方となり市場外で売買を成立させます。そのため、取引価格は買付時には基準価格に一定のスプレッド(差額)を上乗せした価格、売却時には基準価格に一定のスプレッド(差額)を差し引いた価格となります(1円未満の端数がある場合、買付時は整数値に切り上げ、売却時は切り捨て)。なお、適用されるスプレッドは当社ウェブサイトにて開示していますが、相場環境の急変等により変動する場合があります。
(貸株サービスのみ)
(貸株サービス・信用貸株共通)