前回はマイナス金利導入後、マーケットがどのように変化したかをお話ししました。
今回は「実践編」として、マイナス金利時代に私たち個人投資家が具体的にどのような点に気をつけて資産運用を行うべきか、筆者なりの考え方をお話ししたいと思います。
個別株への株式投資の手法は「成長株(グロース株)投資」と「割安株(バリュー株)投資」とに分類することができます。
成長株投資は、毎年売上・利益が増加していて、今後も増加が期待できるような銘柄への投資です。割安株投資は、PERやPBRなどの株価指標をもとに、企業実態より割安な株価で放置されている銘柄に投資し、適正水準まで株価が上昇するのを待つ手法です。
今のところ、マイナス金利導入後、これら成長株投資・割安株投資に何らかの変化が生じたとは感じられません。したがって、成長株・割安株の観点からの個別銘柄の選択および投資は、従来どおり行って問題ないと思います。筆者自身も、マイナス金利導入前後で特に投資手法を変化せずにいますが、これといった弊害はありません。
マイナス金利になって国債の利回りが軒並み低下すると、資産を運用する側としては、必要な利回りが確保できず、運用先に困ってしまいます。そこで、多少のリスクは承知で、高い利回りを求めて債券以外の金融資産へ資金をシフトせざるを得ないと想定されます。
そのとき真っ先に思いつくのは、配当利回りの高い個別銘柄や不動産投資信託(REIT)です。配当金・分配金を債券の利息と同じようにとらえれば、インカムゲインを重視した資産運用先としては十分代替となります。
REITであれば、現状3%の利回りが仮に2%になるまで買われた場合、REIT価格は50%上昇する計算です。足元でもそれなりの利回りが確保でき、今後の展開によっては投資元本の値上がりも期待できるという点では、REITや高配当利回り株は面白い選択ではないかと思います。もちろん、やみくもに買って持ち続ければよいというわけではなく、下降トレンドの間は保有しないようにすべきです。
配当利回りに着目した株式投資の注意点等については、第327回、第328回、第329回のコラムもご参考にしてください。
債券のリスクを考えるとき、リスクフリーレート(通常は長期国債利回り)とのスプレッド(=利回りの差)がその債券固有のリスクとしてとらえられます。
例えば、A社が発行する社債の利回りが5%、長期国債の利回りが1%であれば、両者の差の4%がA社社債のリスクとなります。
ところが、長年の超低金利政策でただでさえスプレッドが小さくなっていたところに、マイナス金利導入により、さらにスプレッドが縮小しているようです。
上記の例でいえば、長期国債の利回りマイナス0.1%、A社社債の利回り1.5%となっていて、両者の差は1.6%に縮小しているのです。
4%だったスプレッドが1.6%に縮小したのは、A社の信用リスクが低下したからではありません。単に運用難によりA社社債が買われ過ぎているだけです。
つまり、超低金利政策により社債マーケットがバブル気味になっていたところ、マイナス金利導入でさらにバブルが加速しているというのが実態です。低格付けの社債(=ジャンク債)の利回りでさえ軒並み低下していますが、そのうちジャンク債発行企業の破たんが相次ぎ、債券市場がパニックになるのではないかと危惧しています。
マイナス金利時代で運用難に陥り、少しでも高い利回りを求める個人投資家に対し、金融機関も様々な金融商品を開発し、そのニーズにこたえようとしています。
しかし、10年国債利回りですらマイナスであるのに、4%の利息が受け取れる債券があったなら、それを手放しで喜ぶのではなく、「何か大きなリスクが隠れているのではないか」と感じなければいけません。
マイナス金利の今でも、高利回りをうたった仕組債が数多く販売されています。例えば、発行から4年間に日経平均株価が一度も40%以上下落しなかったら4%の利息が受け取れ、元本も100%が償還されるが、一度でも40%以上下落した場合、利率は0.1%となり、償還時の日経平均株価いかんで元本割れも生じてしまう、という仕組債があったとしましょう。
通常、この仕組債を買おうとする投資家は、こう考えるはずです。「4年間に日経平均株価が40%下落するとなると、今17,000円の日経平均株価が10,000円まで下がるということだ。さすがに10,000円まで下がることはないだろう」、と。しかし、「4年間で日経平均株価が40%下落する」のは、過去の経験則上、結構な確率で起こり得るのが事実です。正確なデータを持ち合わせてはいないのですが、少なくとも5%とか10%といった低い確率ではないことは確かです。実際、これまでに個人投資家が似たような仕組債を購入した結果、大幅に元本割れしてしまったケースは数多く生じているのです。
それでいて、これらの仕組債には日経平均株価が上昇したら早期償還されてしまうという条項がついているケースが大半です。株価の上昇という恩恵は受けられず、株価が下落したときのリスクは大きいという仕組債に投資するならば、日経平均株価のETFを買っておいた方が良いのではないか、と思ってしまうのが正直なところです。
今でもファイナンシャルプランナーを中心に根強い支持を集めるのが、「積立により国内外の株式・債券に分散投資し、長期的に保有する」というスタイルです。
この手法は、「どうせ売買のタイミングを適切にとらえることなど無理な話。それなら色々な金融資産に分散して投資しておき、長期保有すれば世界的な経済成長につれて価格も上昇し、自分の投資資金もそれなりに増える」という考え方が根底にあります。一言でいえば、この手法は「世界的な経済成長に乗る」ことを意味しているのです。
しかし、筆者が本コラムでも主張しているように、今の世の中は、経済のグローバル化、成熟化により潜在成長率が軒並み低下しています。つまり、インフレではなくデフレ気味に推移しているということです。
デフレ下では株式の値上がりは期待できないということは、バブル崩壊後の日本株の値動きを見れば明らかです。もし今後世界的な低成長が当たり前となれば、日本のみならず世界中で株価が下がり続ける、という恐れもあります。
それならば、個別銘柄の中から業績が伸び続けている優良株を見つけ、それに投資し、かつ株価のトレンドに従って売買を実行する方がはるかに高いパフォーマンスを上げることができると思います。
以上をまとめると、次のような結論となります。
これからは、少しでも高い利回りを求めて高リスクの債券に投資するよりも、好業績の個別株に投資した方が賢い選択となるのではないでしょうか。
本資料は情報提供を目的としており、投資等の勧誘目的で作成したものではありません。お客様ご自身で投資の最終決定をおこなってください。本資料の内容は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手・編集したものですが、その情報源の確実性まで保証するものではありません。なお、本資料の内容は、予告なしに変更することがあります。
足立武志
知って納得!株式投資で負けないための実践的基礎知識
株式投資がうまくいかない、という個人投資家の皆様へ。実践をベースにした「すぐに役立つ真の基礎知識」は、お客様の株式投資戦略に新たなヒントを提供。負けない、失敗しないためにはどのように行動すべきか、これから「株式投資」を始めようと考えている方、必見です。
株式等は株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。上場投資信託(ETF)は連動対象となっている指数や指標等の変動等、上場投資証券(ETN)は連動対象となっている指数や指標等の変動等や発行体となる金融機関の信用力悪化等、上場不動産投資信託証券(REIT)は運用不動産の価格や収益力の変動等、ライツは転換後の価格や評価額の変動等により、損失が生じるおそれがあります。※ライツは上場および行使期間に定めがあり、当該期間内に行使しない場合には、投資金額を全額失うことがあります。
上場有価証券等のうち、レバレッジ型、インバース型のETF及びETN(※)のお取引にあたっては、以下の点にご留意ください。
※「上場有価証券等」には、特定の指標(以下、「原指数」といいます。)の日々の上昇率・下落率に連動し1日に一度価額が算出される上場投資信託(以下「ETF」といいます。)及び指数連動証券(以下、「ETN」といいます。)が含まれ、ETF及びETNの中には、原指数の日々の上昇率・下落率に一定の倍率を乗じて算出された数値を対象指数とするものがあります。このうち、倍率が+(プラス)1を超えるものを「レバレッジ型」といい、-(マイナス)のもの(マイナス1倍以内のものを含みます)を「インバース型」といいます。
信用取引は取引の対象となっている株式等の株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。信用取引は差し入れた委託保証金を上回る金額の取引をおこなうことができるため、大きな損失が発生する可能性があります。その損失額は差し入れた委託保証金の額を上回るおそれがあります。
国内株式の委託手数料は「ゼロコース」「超割コース」「いちにち定額コース」の3コースから選択することができます。
〔ゼロコース(現物取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
但し、原則として当社が指定するSOR(スマート・オーダー・ルーティング(※1))注文 のご利用が必須となります。(当社が指定する取引ツールや注文形態で発注する場合を除きます。)
ゼロコースをご利用される場合には、当社のSORやRクロス(※2)の内容を十分ご理解のうえでその利用に同意いただく必要があります。
※1 SORとは、複数市場から指定条件に従って最良の市場を選択し、注文を執行する形態の注文です。
※2 「Rクロス」は、楽天証券が提供する社内取引システム(ダークプール(※3))です。
※3 ダークプールとは、証券会社が投資家同士の売買注文を付け合わせ、対当する注文があれば金融商品取引所の立会外市場(ToSTNeT)に発注を行い約定させるシステムをいいます。
〔ゼロコース(信用取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
但し、原則として当社が指定するSORのご利用が必須となります。(当社が指定する取引ツールや注文形態で発注する場合を除きます。)
〔超割コース(現物取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
5万円まで 55円(税込)
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 115円(税込)
50万円まで 275円(税込)
100万円まで535円(税込)
150万円まで640円(税込)
3,000万円まで1,013円(税込)
3,000万円超 1,070円(税込)
〔超割コース(信用取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 148円(税込)
50万円まで 198円(税込)
50万円超 385円(税込)
超割コース大口優遇の判定条件を達成すると、以下の優遇手数料が適用されます。大口優遇は一度条件を達成すると、3ヶ月間適用になります。詳しくは当社ウェブページをご参照ください。
〔超割コース 大口優遇(現物取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
〔超割コース 大口優遇(信用取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
〔いちにち定額コース〕
1日の取引金額合計(現物取引と信用取引合計)で手数料が決まります。
1日の取引金額合計 取引手数料
100万円まで0円
200万円まで 2,200円(税込)
300万円まで 3,300円(税込)
以降、100万円増えるごとに1,100円(税込)追加。
※1日の取引金額合計は、前営業日の夜間取引と当日の日中取引を合算して計算いたします。
※一般信用取引における返済期日が当日の「いちにち信用取引」、および当社が別途指定する銘柄の手数料は0円です。これらのお取引は、いちにち定額コースの取引金額合計に含まれません。
かぶミニ®(単元未満株の店頭取引)は、当社が自己で直接の相手方となり市場外で売買を成立させます。そのため、取引価格は買付時には基準価格に一定のスプレッド(差額)を上乗せした価格、売却時には基準価格に一定のスプレッド(差額)を差し引いた価格となります(1円未満の端数がある場合、買付時は整数値に切り上げ、売却時は切り捨て)。なお、適用されるスプレッドは当社ウェブサイトにて開示していますが、相場環境の急変等により変動する場合があります。
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