前回(第357回)は、株価下落時の保有株の対応として「保有を続ける」「売る」「買い増す」の方法があること、そして筆者であれば迷わず「売る」を選択することをお話ししました。今回はそれを踏まえ、筆者が「もしも」に備え具体的にどのような行動をとっているのかをお話します。
前回(第357回)のコラムにてお話しました通り、筆者は株価が下落したときは、それがどんなに業績が好調で将来有望な銘柄だとしても、原則として25日移動平均線割れで売却します。
何はともあれ一旦「売却」すること、これがなぜ優れているのでしょうか。それは売却した後の「リカバリー」が容易だからです。
一旦売却した株は、それでおしまいというわけではありません。特に、好業績で増収増益が続くと見込まれる銘柄であれば、調整が短期間で済み、再度上昇トレンドに戻る可能性も大いにあります。
そこで、売却した株もその後の株価の動きを定期的にウォッチし(筆者は毎日ウォッチしています)、再度25日移動平均線を超えて上昇トレンドに戻ったら買い直せばよいのです。
逆に、25日移動平均線を下回って売却した後も株価の下落が止まらないようであれば、買い直しはしません。すると結果的に下降トレンド入り口のかなり株価が高いところで売却できることになります。
これが、もし「保有を続ける」とか「買い増す」という選択肢を取ると、それは基本的に損切りしないことを意味しますから、失敗した場合のリカバリーが極めて困難になります。
例えば、1,000円で買った銘柄が25日移動平均線割れの900円に下がったとします。そして、そのまま保有を続けた結果株価がさらに下がって300円になってしまったとします。こうなると、そこから1,000円まで戻らなければプラスマイナスゼロに戻りません。
1,000円で買った銘柄が900円に下がったとき、保有株と同じ株数を買い増した場合も考えてみましょう。確かにプラスマイナスゼロに損益が戻るための水準は1,000円から950円に下がります。でも、株価が300円になってしまったら、1,000円の当初購入分に加え、900円で追加購入した分の投資金額までもが、塩漬け状態で固定化されてしまいます。つまり、買い増ししない場合より損失の額が膨らんでしまうのです。
さらにいえば、300円まで下がった株が1,000円とか950円まで再び戻るという保証はどこにもありません。10年、20年たっても買値まではるか及ばない水準にとどまり続ける可能性も大いにあります。
もちろん、300円まで下がる前に例えば700円、600円で売却していれば、含み損はそこまで大きくならずに済みます。でも筆者としては700円で売るなら900円の時になぜ売っておかないのかと思ってしまいます。
また、仮に300円まで下がった後1,000円に戻ったとしても、そのまま保有を続けた場合と、900円で一旦売却した後に例えば400円で25日移動平均線を超えたため買い直した場合とでは、次のように大きく損益が異なってきます。
これだけで50%もの利回りの差が生じます。ですから、1,000円で買った銘柄が300円まで値下がりするのを我慢して、再度1,000円に戻ったところで売却するのは、筆者に言わせれば「プラスマイナスゼロ」ではなく「大きな機会損失が発生している」のです。
ここまでお読みいただくと、客観的なルール(筆者であれば株価の25日移動平均線割れ)を用いて保有株を適切なタイミングで売却することの重要性がご理解いただけるのではないかと思います。
ただ、実はこれだけでは片手落ちとなってしまいます。時には何の前触れもなく突発的な理由による株価急落が起こり、保有株を適切なタイミングで売却することができないケースもあるからです。最近でいえば、ニューヨークの同時多発テロや、東日本大震災とそれに伴う原発事故などが該当します。
こうなると、ひどい場合には25日移動平均線をはるかに下回る水準でストップ安売り気配になります。通常どおり株価が25日移動平均線を少し割り込んだタイミングで売却することができなくなってしまいます。
なお、リーマン・ショックは確かに下落幅や下落スピードという面では歴史に残るような激しいものでしたが、適切なタイミングで保有株を売却することは十分可能でした。
では、突発的な急落に備えるためにはどのようにすればよいでしょうか。まずは投資する資金の上限を決めておくことが考えられます。
もし、投資可能資金の100%を株式に投資していて突発的な急落が起き、保有株が30%急落したとします。この場合、残る資金は70%です。
でも、投資可能資金の60%に抑えて投資していた場合、100-(60×30%)=82%の資金が残ります。
もちろん、投資額をさらに抑えれば抑えるだけ、急落が起きた際の損失も小さくなります。でも、急落が起きず大きく上昇するようなことになれば、逆に小さい利益しか得ることができない点には注意が必要です。
もう1つ、ヘッジの目的でプットオプションを買うという方法が考えられます。株価が突発的に急落すると、プットオプションの価格が急騰します。価格帯にもよりますが、わずか1~2日で価格が100倍超になるケースもあります。
したがって、例えば3,000万円を投資している場合、5万円分のプットオプション(2,000~3,000円ほど現在の日経平均株価から下の権利行使価格のもの)を買っておき、それが100倍になれば500万円になります。3,000万円の投資額が仮に30%(900万円)毀損したとしても、その半分強をカバーすることができます。
なお、突発的な急落が起きた場合でも、その直前においてすでに株価が25日移動平均線を割り込んで下降トレンドにあるときは、筆者の投資手法であればすでに保有株を売却済みですので、急落によるダメージは回避することが可能です。
また、上記の突発的な急落はマーケット全体についてのものですが、個別銘柄について突発的な悪材料が生じて株価が急落することもあります。これに備えるためには投資資金を複数の銘柄に分散することでリスクを軽減します。
以上を踏まえ、筆者が「もしも」に備えた具体的な投資行動をまとめると以下のようになります。
筆者は投資可能資金がそれなりに大きくなっているので、よほど強気の相場でない限り、投資可能資金の80%を上限とするように心がけています。マイナス材料が市場に存在するなどちょっと危ないな、と思う時は適宜70%とか60%まで引き下げることもあります。
個別銘柄が突発的な要因で急落した場合、25日移動平均線割れで売却ないし損切り、という通常の方法が通用しないこともあります。そのリスクを軽減するため、投資資金はいくつもの個別銘柄へ細かく分散しておきます。
再度25日移動平均線を超えた場合は買い直すことを考慮します。突発的な株価急落でなければこれでほぼ全て対応可能です。
すでに株式市場が調整局面にあり、投資可能資金の10%や20%程度しか実際に投資していない場合は、そこから保有株の株価が30%下がったところでそれほど痛手を受けませんのでプットオプションは買いません。逆に、株式市場が絶好調で、投資可能資金の80%ほどを実際に投資している場合、そこから保有株の株価が30%下がるとかなり痛手を食うので、それを軽減させるためにプットオプションを買っておきます。
一番大事なことなので何度も繰り返しますが、株式投資で良い銘柄を発掘することよりはるかに重要なのは、損失を最小化して大きな負けを回避することなのです。
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株式等は株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。上場投資信託(ETF)は連動対象となっている指数や指標等の変動等、上場投資証券(ETN)は連動対象となっている指数や指標等の変動等や発行体となる金融機関の信用力悪化等、上場不動産投資信託証券(REIT)は運用不動産の価格や収益力の変動等、ライツは転換後の価格や評価額の変動等により、損失が生じるおそれがあります。※ライツは上場および行使期間に定めがあり、当該期間内に行使しない場合には、投資金額を全額失うことがあります。
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国内株式の委託手数料は「ゼロコース」「超割コース」「いちにち定額コース」の3コースから選択することができます。
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※3 ダークプールとは、証券会社が投資家同士の売買注文を付け合わせ、対当する注文があれば金融商品取引所の立会外市場(ToSTNeT)に発注を行い約定させるシステムをいいます。
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取引金額 取引手数料
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3,000万円超 1,070円(税込)
〔超割コース(信用取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
10万円まで 99円(税込)
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50万円まで 198円(税込)
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〔超割コース 大口優遇(現物取引)〕
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