先週の(その1)では、主に需給の面から今後の日本株の伸びしろについて検証してみました。今回は、裁定取引、信用取引に関する指標から「過熱感の有無」という観点で検証してみたいと思います。
「裁定買い残」とは、日経平均先物を売って現物を買う行為(これを「裁定買い」とよび、いわゆる「サヤ取り取引」の1つです)により溜まっている、未決済の現物買い残高のことを言います。
通常、株価が大きく上昇するときは、この「裁定買い残」も増加していきます。実際、初期アベノミクス相場でも、2012年11月の2兆円から2013年5月の4.3兆円まで、半年間で大きく上昇しました。
この裁定買い残のポイントは、株価のピークを見極めることにあります。裁定買い残が増えてくると、その後の裁定解消売りにより株価が急落する懸念が生じてきます。過去の経験則上、裁定買い残が東証1部銘柄の時価総額の1%に近づくと、株価は当面のピークをつけ急落することが多々あります。
実際、初期アベノミクス相場でも、2013年5月下旬に株価が急落する直前の裁定買い残は4.3兆円、そのときの時価総額は約450兆円で、裁定買い残は時価総額の0.97%にまで達していました。日経平均株価はそこから1カ月で20%も下落したのです。
では、現時点での裁定買い残はどうなっているでしょうか。1月6日(金)時点では約1.9兆円です。9月にはわずか0.3兆円しかありませんでしたから、トランプ相場により裁定買い残は急速に増加していることは間違いありません。
ただ、現時点での時価総額は約580兆円です。裁定買い残の約0.33%までしか達していません。
もちろん、裁定買い残が時価総額の1%近くに達するまで株価が上昇し続けると決めつけるわけにはいきませんが、裁定買い残がパンパンに膨れ上がり、株価が急落するという恐れはまだ少ない、という判断はできます。
信用評価損益率とは、信用買いをしている投資家が、現に保有している買いポジションにつきどれくらいの含み損益を有しているかを示したものです。通常、この数値はマイナスで推移しますが、バブル相場や大相場のときは、まれにプラスになることがあります。
足元の信用評価損益率をみると、マイナス7.36%(1月6日(金)時点)です。マイナス7%は、通常の相場でも頻繁に出現するレベルです。
初期アベノミクス相場では、2013年1月と、同年4月~5月にかけ、プラス4%まで上昇しました。
これと比較するならば、もし初期アベノミクス相場に匹敵するほどの大相場が来るのであれば、株価上昇はこんなものではとどまらず、まだまだ株価には伸びしろがあるということになりますし、過度の高値警戒もまだ必要ないといえるでしょう。
最後に信用買い残・信用売り残・貸借倍率をみていきましょう。信用買い残とは、信用買いをしてまだ未決済の残高です。同様に信用売り残とは、信用売り(空売り)をしてまだ未決済の残高です。そして貸借倍率とは、信用売り残を信用買い残で割った数値です。
通常、大相場では信用買い残が大きく増加します。また、その結果貸借倍率も大きく上昇します。なぜなら、強気の個人投資家が増え、信用取引による買いを活発に行うようになるからです。
初期アベノミクス相場では、2012年11月~2013年5月の間、信用売り残は5~6,000億円の間でほとんど変化なかったのに対し、信用買い残は1.2兆円から3.2兆円へと、大きく増えました。その結果、貸借倍率(金額ベース。以下同じ)も、2012年12月の2.05倍から2013年6月には7.09倍にまで上昇しました。
しかし、足元の日本株は、今のところ初期アベノミクス相場とは全く様相が異なります。1月6日(金)時点での信用買い残は約2.1兆円と、トランプ相場がスタートしてからほとんど増加していません。一方、信用売り残は約0.9兆円と、トランプ相場スタート後大きく増加、アベノミクス相場スタート以来最高水準となっています。貸借倍率も2.27倍と、今のところ上昇する気配がありません。
通常、大相場というのは個人投資家が信用取引を使ってレバレッジを高めた投資で一獲千金を狙い、それが過熱しすぎることで一旦のピークをつける、という流れになります。しかし足元の相場は信用買いが全く増えていない、つまり個人投資家が全くと言ってよいほど乗れていない状態、もしくは積極的に動いていない状態といえます。
こういう言い方は大変不謹慎ですが、大相場の末路は個人投資家が押し寄せて相場が過熱状態となり、最後に大量の高値掴みをさせられて終了する、というのが既定路線です。
現時点ではこうした兆候が一切見えないこと、そして前回のコラムで申し上げたように、今は外国人投資家の大量買いに加えて日銀のETF買いという強力な援護射撃があること、これらを踏まえると、大相場の素地はすでに十分整っています。初期アベノミクス相場に匹敵するような大相場の到来を期待せずにはいられない、というのが筆者の思いです。
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足立武志
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株式等は株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。上場投資信託(ETF)は連動対象となっている指数や指標等の変動等、上場投資証券(ETN)は連動対象となっている指数や指標等の変動等や発行体となる金融機関の信用力悪化等、上場不動産投資信託証券(REIT)は運用不動産の価格や収益力の変動等、ライツは転換後の価格や評価額の変動等により、損失が生じるおそれがあります。※ライツは上場および行使期間に定めがあり、当該期間内に行使しない場合には、投資金額を全額失うことがあります。
上場有価証券等のうち、レバレッジ型、インバース型のETF及びETN(※)のお取引にあたっては、以下の点にご留意ください。
※「上場有価証券等」には、特定の指標(以下、「原指数」といいます。)の日々の上昇率・下落率に連動し1日に一度価額が算出される上場投資信託(以下「ETF」といいます。)及び指数連動証券(以下、「ETN」といいます。)が含まれ、ETF及びETNの中には、原指数の日々の上昇率・下落率に一定の倍率を乗じて算出された数値を対象指数とするものがあります。このうち、倍率が+(プラス)1を超えるものを「レバレッジ型」といい、-(マイナス)のもの(マイナス1倍以内のものを含みます)を「インバース型」といいます。
信用取引は取引の対象となっている株式等の株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。信用取引は差し入れた委託保証金を上回る金額の取引をおこなうことができるため、大きな損失が発生する可能性があります。その損失額は差し入れた委託保証金の額を上回るおそれがあります。
国内株式の委託手数料は「ゼロコース」「超割コース」「いちにち定額コース」の3コースから選択することができます。
〔ゼロコース(現物取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
但し、原則として当社が指定するSOR(スマート・オーダー・ルーティング(※1))注文 のご利用が必須となります。(当社が指定する取引ツールや注文形態で発注する場合を除きます。)
ゼロコースをご利用される場合には、当社のSORやRクロス(※2)の内容を十分ご理解のうえでその利用に同意いただく必要があります。
※1 SORとは、複数市場から指定条件に従って最良の市場を選択し、注文を執行する形態の注文です。
※2 「Rクロス」は、楽天証券が提供する社内取引システム(ダークプール(※3))です。
※3 ダークプールとは、証券会社が投資家同士の売買注文を付け合わせ、対当する注文があれば金融商品取引所の立会外市場(ToSTNeT)に発注を行い約定させるシステムをいいます。
〔ゼロコース(信用取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
但し、原則として当社が指定するSORのご利用が必須となります。(当社が指定する取引ツールや注文形態で発注する場合を除きます。)
〔超割コース(現物取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
5万円まで 55円(税込)
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 115円(税込)
50万円まで 275円(税込)
100万円まで535円(税込)
150万円まで640円(税込)
3,000万円まで1,013円(税込)
3,000万円超 1,070円(税込)
〔超割コース(信用取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 148円(税込)
50万円まで 198円(税込)
50万円超 385円(税込)
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〔超割コース 大口優遇(現物取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
〔超割コース 大口優遇(信用取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
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1日の取引金額合計(現物取引と信用取引合計)で手数料が決まります。
1日の取引金額合計 取引手数料
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200万円まで 2,200円(税込)
300万円まで 3,300円(税込)
以降、100万円増えるごとに1,100円(税込)追加。
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