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2015年1月28日

第七章 ETFとアセット・アロケーション

アセット・アロケーションとは

アセット・アロケーションとは資産配分の意味で投資資金を複数の投資対象に分散することでリスクを低減しつつ理想的なリターンを得ようとする行為を指します。

1952年にシカゴ大学の修士課程で学んでいた当時25歳のハリー・マーコウィッツは「ポートフォリオの選択(Portfolio Selection)」と題した14ページの論文を発表し、その中で「金融リスクは高いリターンを得るためには必要かつ不可避だ」と主張しました。そして「ポートフォリオ全体のリスクは適切な分散投資によって調整することが出来る」と説明しました。

この論文は投資に対する考え方を根本的に変えた革命的な主張であり、彼はアルフレッド・ノーベル記念経済科学スウェーデン国立銀行賞(=俗に言うノーベル経済学賞)を受賞します。

マーコウィッツは「個々の銘柄のリスクは、それらの銘柄がひとまとまりのポートフォリオとしてどういう動き方をするか? という問題に比べると重要ではない」ことを指摘しました。

そして下のグラフのようにポートフォリオに組み入れられる銘柄の数を増やすと、個別株の内包するリスクが薄められ、その結果、ポートフォリオ全体のリスクが低下すると主張したのです。(縦軸はポートフォリオ全体のリスクを示し、横軸は銘柄数を示しています。概念図なので縦軸には数値が記載されていません)

そして組み入れ銘柄数が市場全体の銘柄数に達したとき、個別銘柄のリスク(=アルファ)はゼロとなり、市場全体のリスク(=ベータ)だけが残ると指摘したのです。

ポートフォリオに組み入れられる銘柄数が増えると個別株の内包するリスクが薄められる

なお上のグラフはリスクそのものがゼロになるという意味ではないのでお間違えなく! あくまでも市場全体のリスクとの対比において、個別の銘柄選択を間違えることから来るパフォーマンスの劣後が無くなるというだけです。

さて、期待投資リターンは、投資リスクをどれだけ取ったか? によって決まってきます。「ハイリスク・ハイリターン」という表現がありますが、リスクを沢山取った方が偶然ラッキーで儲かったときのリターンが大きくなるわけです。ここで「期待」というのはあくまでも確率論の世界であり、必ずそうなるということではありません。もっと言葉を尽くして説明すれば、最大限のリスクを取った投資が、最適(optimal)なリスクではないという点です。

高いリターンを狙おうと思えば、それなりにリスクを取る必要がある。しかし最大のリスクを取る投資手法が、最適ということでは決してない

ETFと分散効果

いま自分の手持ちの投資資金全額をひとつの個別銘柄に突っ込んだとします。するとその銘柄がたまたま急上昇した場合、高い投資リターンが得られます。これが上で述べた「リスクを沢山取った方が偶然ラッキーで儲かったときのリターンが大きくなる例です。

しかし実際には自分の買った個別銘柄が期待通り上がってくれないことも多いです。株価指数がちゃんと上昇しているのに、自分の持ち株だけ上がらないということほどイライラする状況はありません。

このような、間違った銘柄を選んでしまうリスクは、投資する銘柄数を増やすことによって軽減することが出来ます。

典型的なETFは株価指数をなぞるように設計されています。するとETFをひとつ購入しただけで、あたかもその指数に採用されている銘柄全部を買い付けたのと同じような分散投資が出来るわけです。個別銘柄ではなくETFを買うことの大きなメリットは、まさしくこの点にあります。

ETFは株価指数をなぞるように設計されているので、それをひとつ購入しただけで、あたかも指数に採用されている銘柄全部を買い付けたのと同じ分散効果を得られる

どのETFが最も分散されているか?

それでは具体的にどのETFが最も分散されているか? というとそれは世界全体の株式市場に投資するようなETFになります。具体的にはiシェアーズMSCI ACWI ETF(ティッカーシンボル:ACWI)が最も国際分散の効いたETFということになります。

同様にバンガード・トータル・ワールド・ストックETF(ティッカーシンボル:VT)も世界全体の株式市場に投資するETFです。こちらはFTSEグローバル・オール・キャップ指数という世界の7400銘柄から成る株価指数をなぞるように設計されています。このETFは費用比率が0.18%と極めて低い点も魅力です。

この二つのETFは、世界の全ての株式市場に投資するわけですから、「国を選び間違えた!」とか「銘柄を選び間違えた!」というリスクはありません。ただ世界同時株安のような場面では、これらのETFを買っていてもやっぱり損します。

それと最大限に分散が効いているわけですから逆の見方をすれば想定外のラッキーで大儲けするという可能性もほぼゼロに近いと言えます。

すると生まれて初めてETFを購入する人や初めて日本株以外の海外への投資を考えている人にとって、とっつきやすい入門編のETFという事が出来ます。

自分で作るポートフォリオ

上で説明した二つのETFは世界の株式市場をまるごと買ってしまうETFなので、こと株式というアセットクラス(=資産の種類のこと)に関する限り、それ以上、ゴチャゴチャ手を加える必要はありません。

しかし世界の株式市場のありのままの時価総額構成比とは違う比率で、自分の考える理想のポートフォリオを構築したいという場合は、いくつかのETFを寄せ集めることで自分だけのポートフォリオを作ることも出来ます。

その場合、あまり偏ったポートフォリオになってしまわないために、いわば「白いご飯」的に、ポートフォリオの基礎となるコアのETFをしっかり組み入れておくことをお勧めします。具体的にはアメリカのマーケット全体に投資するバンガード・トータル・ストック・マーケットETF(ティッカーシンボル:VTI)などが良いでしょう。このETFひとつでアメリカの3784銘柄に投資したのと同じ効果が得られるし、費用比率が0.05%と極めて低い点も魅力です。

アメリカの株式市場は世界の株式市場全体の約50%を占めています。従ってそれをおおまかな目安として自分の投資資金の40%~60%程度をバンガード・トータル・ストック・マーケットETFに投入し、残りは自分の好みに合わせて、例えばiシェアーズMSCI EAFE ETF(ティッカーシンボル:EFA)のようなアメリカ以外の先進国に投資するETF、さらにiシェアーズMSCIエマージング・マーケッツETF(ティッカーシンボル:EEM)という新興国に投資するETFなどでメリハリをつけるというのもひとつのアイデアです。

本資料は情報提供を目的としており、投資等の勧誘目的で作成したものではありません。お客様ご自身で投資の最終決定をおこなってください。本資料の内容は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手・編集したものですが、その情報源の確実性まで保証するものではありません。なお、本資料の内容は、予告なしに変更することがあります。

広瀬隆雄

「海外ETFデビュー講座」

このシリーズは(経済の勉強を兼ねて、株式投資に挑戦してみようかな?)と考えている初心者のために書き下ろしました。執筆するにあたり、わかりやすく、すぐに役に立ち、身近に感じられることに特に留意したいと思います。その分、全てを網羅(もうら)できない面があるかも知れませんが、それはご容赦ください。

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外国株式のリスクと費用について

外国株式等の取引にかかるリスク

外国株式等は、株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。また、為替相場の変動等により損失(為替差損)が生じるおそれがあります。上場投資信託(ETF)は連動対象となっている指数や指標等の変動等、上場投資証券(ETN)は連動対象となっている指数や指標等の変動等や発行体となる金融機関の信用力悪化等、上場不動産投資信託証券(REIT)は運用不動産の価格や収益力の変動等により、損失が生じるおそれがあります。

レバレッジ型、インバース型ETF及びETNのお取引にあたっての留意点

上場有価証券等のうち、レバレッジ型、インバース型のETF及びETN(※)のお取引にあたっては、以下の点にご留意ください。

  • レバレッジ型、インバース型のETF及びETNの価額の上昇率・下落率は、2営業日以上の期間の場合、同期間の原指数の上昇率・下落率に一定の倍率を乗じたものとは通常一致せず、それが長期にわたり継続することにより、期待した投資成果が得られないおそれがあります。
  • 上記の理由から、レバレッジ型、インバース型のETF及びETNは、中長期間的な投資の目的に適合しない場合があります。
  • レバレッジ型、インバース型のETF及びETNは、投資対象物や投資手法により銘柄固有のリスクが存在する場合があります。詳しくは別途銘柄ごとに作成された資料等でご確認いただく、またはコールセンターにてお尋ねください。

※「上場有価証券等」には、特定の指標(以下、「原指数」といいます。)の日々の上昇率・下落率に連動し1日に一度価額が算出される上場投資信託(以下「ETF」といいます。)及び指数連動証券(以下、「ETN」といいます。)が含まれ、ETF及びETNの中には、原指数の日々の上昇率・下落率に一定の倍率を乗じて算出された数値を対象指数とするものがあります。このうち、倍率が+(プラス)1を超えるものを「レバレッジ型」といい、-(マイナス)のもの(マイナス1倍以内のものを含みます)を「インバース型」といいます。

米国株式の信用取引にかかるリスク

米国株式信用取引の対象となっている株式等の株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。米国株式信用取引は差し入れた委託保証金を上回る金額の取引をおこなうことができるため、大きな損失が発生する可能性があります。その損失額は差し入れた委託保証金の額を上回るおそれがあります。また、米国株式信用取引は外貨建てで行う取引であることから、米国株式信用取引による損益は外貨で発生します。そのため、お客様の指示により外貨を円貨に交換する際の為替相場の状況によって為替差損が生じるおそれがあります。

外国株式等の取引にかかる費用

〔現物取引〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引手数料
米国株式 約定代金の0.495%(税込)・最低手数料:0米ドル・上限手数料:22米ドル(税込)
中国株式 約定代金の0.275%(税込)・最低手数料:550円(税込)・上限手数料:5,500円(税込)
アセアン株式 約定代金の1.10%(税込)・最低手数料:550円(税込)・手数料上限なし
※当社が別途指定する銘柄の買付手数料は無料です。
※米国株式の売却時は上記の手数料に加え、別途SEC Fee(米国現地取引所手数料)がかかります。詳しくは当社ウェブページ上でご確認ください。
※中国株式・アセアン株式につきましては、カスタマーサービスセンターのオペレーター取次ぎの場合、通常の取引手数料に2,200円(税込)が追加されます。

〔米国株式信用取引〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引手数料
約定代金の0.33%(税込)・最低手数料:0米ドル・上限手数料:16.5米ドル(税込)
※当社が別途指定する銘柄の新規買建または買返済時の取引手数料は無料です。
※売却時(信用取引の場合、新規売建/売返済時)は上記の手数料に加え、別途SEC Fee(米国現地取引所手数料)がかかります。詳しくは当社ウェブページ上でご確認ください。

米国株大口優遇の判定条件を達成すると、以下の優遇手数料が適用されます。米国株大口優遇は一度条件を達成すると、3ヶ月間適用になります。詳しくは当社ウェブページをご参照ください。

〔米国株式信用取引(米国株大口優遇)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0米ドルです。

  • 米国株式信用取引には、上記の取引手数料の他にも各種費用がかかります。詳しくは取引説明書等をご確認ください。
  • 米国株式信用取引をおこなうには、委託保証金の差し入れが必要です。最低委託保証金は当社が指定する30万円相当額、新規建て時に最低必要な委託保証金率は50%、委託保証金最低維持率(追証ライン)が30%です。委託保証金の保証金率が30%未満となった場合、不足額を所定の時限までに当社に差し入れていただき、委託保証金へ振替えていただくか、建玉を決済していただく必要があります。

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