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2015年1月28日

第八章 ETFとリスク

ETFのリスク

いろいろなリスクの話に入る前に、ETFに固有の、重要なリスクについて説明したいと思います。

ETFはこれまで見てきたようにたったひとつのETFを買うだけで世界の株式市場をまるごと買うような分散投資が実現できてしまう利便性を持っています。その分散効果の有効性は、疑う余地もありません。

しかし……

ETFが株式と同じように株式市場で取引されているということは、もし株式市場に何か起きたときには突然、換金出来なくなるリスクがあるということを意味します。それは市場閉鎖リスクと投資の世界で呼ばれているリスクです。

そもそも株式市場が閉まってしまえば、取引所で取引されるETFは万事休すだ

実際、2001年9月11日にニューヨークのマンハッタン島の南端にある世界貿易センターのツインタワーにテロリストたちが操縦するハイジャックされた旅客機が相次いで突っ込んだときはニューヨーク証券取引所の辺りまでガラスの破片などが飛び散り、取引を一週間停止しなければならなくなりました。

フラッシュ・クラッシュはETFにも起きる?

近年、高速取引が一般化するとともにコンピュータ・プログラムのトラブルが原因で引き起こされる、フラッシュ・クラッシュとよばれる市場の急落がときどき発生しています。

高速取引が引き起こすフラッシュ・クラッシュがETFを巻き込むことも想定しておかねばならない

いまのところフラッシュ・クラッシュは個別企業の株式でしか発生していませんが、将来、ETFもフラッシュ・クラッシュの犠牲にならないという保証はありません。

ETFが取引所というメカニズムに依存している以上、そのメカニズムに機能不全が起きたらその影響から免れることはできないのです。

リスクの定義

リスクという言葉は明快なようで実は曖昧さが含まれています。例えばプロ投資家の間でリスクが論じられる場合、リスクとは価格変動のことを指している場合が多いです。

この価格変動という言葉はボラティリティーという英語に置き換えられます。ここでのボラティリティーとは「結果のばらつき」のことを指します。

これに対して我々一般投資家がリスクを論じる場合、「リスク=損をすること」というイメージを持っていると思います。

この両方が正解であり、我々はリスクに関して議論する場合、上記の2つの概念のうちどちらを問題にしているのか自覚する必要があります。

「リスク=価格変動」という議論をする場合

「リスク=価格変動」の議論をする場合、価格の変動はリターン、つまり投資利益の源泉であると考えられます。

価格変動を指してリスクという言葉を用いる際は、それは投資利益の源泉であると考えられる

つまり価値観として「リスクは悪いものだ」という発想はこの文脈では存在しないのです。

むしろ価格変動は征服すべきチャレンジの対象であり利益機会に他ならないのです。その場合、先ず価格変動のばらつきの中心を求め、そのばらつきの中心がゼロ(0)よりも高ければ、リターンはプラスであるという風に考えるわけです。

この場合、「結果のばらつき」具合が比較的集中しているか、逆に拡散してしまっているかがリスクの度合いを測る主な尺度となります。投資の世界ではこれを標準偏差によって表現することが一般的です。なお個々の証券の価格変動のプロフィール(肖像)はその時々によって刻々と変わってゆくものです。

「リスク=損をすること」という議論をする場合

「リスク=損をすること」の議論をする場合、それらのリスクを総称して「金融リスク」という風に呼びます。「金融リスク」は更に細かく「流動性リスク」、「信用リスク」、「市場リスク」の3つに大別できると思います。そしてその更に細かい分類として下の図にあるような様々なリスクが存在するのです。

ETFを使うことで避けられるリスク

上の図の中で個別株の代わりにETFを購入することで避けられるリスクを挙げると:

  • 不正会計リスク
  • 情報リスク
  • 倒産リスク
  • 過度の集中リスク

などは殆ど心配しなくて良いでしょう。

しかしそれ以外のリスクはETFを買っても回避できません。多くの個人投資家は(マーケット全体を買っているのだから、日頃の注意を怠っても大丈夫)と考えがちです。それどころか個別株投資のように毎日リスクに晒されていない分だけ全体のリスクに対してきわめて鈍感になってしまう人が多いようです。これはETFに代表されるインデックス投資家の悪いクセなので、そういう怠け心がつかないように気を付けてください。

やっかいなリスクの「複合化」

上の図に示したいろいろなリスクは、お互いに独立している場合もありますが、それはむしろ例外です。多くの場合、ひとつのリスクは玉突き的に次のリスクを誘発し、それがまた次のリスクを招来するということがおきます。そうやって複合的で複雑なリスクに化けてしまうわけです。

2008年のリーマンショックを例にとれば、住宅ローン証券化商品の価格が下落(=市場リスク)したとたんにその証券に対する買い手が居なくなってしまい、流動性が失われました(=流動性リスク)。

すると流動性の無くなったそれらの証券化商品を抱えた金融機関に対して信用不安が出て(=カウンター・パーティー・リスク)、金融機関同士の取引が停滞する事態が生じたのです。

このように個々のリスクの連鎖的な発生が金融システム全体を巻き込んだ問題に発展するリスクのことをシステミック・リスクといい、それは金融システム全体が機能不全に陥る状態を指します。

投資資金に余裕が出来たら……

みなさんが少額の投資資金で初めて海外ETFを購入する場合、例えばiシェアーズMSCI ACWI ETF(ティッカーシンボル:ACWI)とかバンガード・トータル・ワールド・ストックETF(ティッカーシンボル:VT)のように、世界の株式市場をまるごと買えて、しかも優れた分散効果を低コストで得られるETFを、ひとつだけ購入するという方法は、決して間違っていないと思います。いや、むしろそこから始める方が無難だとすら言えます。

しかし追加投資資金が出来て、2銘柄、3銘柄という風に増やしてゆけるのであれば仮にETFだけで投資するにしても前回、アセット・アロケーションのところで説明したようにETFを分散することが好ましいです。

取引所閉鎖リスクというものを考えた場合、ニューヨークだけでなく香港やシンガポールに上場されているETFにも少し分散しておくというやり方も良いと思います。

余り分散し過ぎると、ポートフォリオ管理の手間が増えますし、コストも割高になるので、そのへんも考えあわせながらETF投資を楽しんでください。

本資料は情報提供を目的としており、投資等の勧誘目的で作成したものではありません。お客様ご自身で投資の最終決定をおこなってください。本資料の内容は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手・編集したものですが、その情報源の確実性まで保証するものではありません。なお、本資料の内容は、予告なしに変更することがあります。

広瀬隆雄

「海外ETFデビュー講座」

このシリーズは(経済の勉強を兼ねて、株式投資に挑戦してみようかな?)と考えている初心者のために書き下ろしました。執筆するにあたり、わかりやすく、すぐに役に立ち、身近に感じられることに特に留意したいと思います。その分、全てを網羅(もうら)できない面があるかも知れませんが、それはご容赦ください。

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外国株式のリスクと費用について

外国株式等の取引にかかるリスク

外国株式等は、株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。また、為替相場の変動等により損失(為替差損)が生じるおそれがあります。上場投資信託(ETF)は連動対象となっている指数や指標等の変動等、上場投資証券(ETN)は連動対象となっている指数や指標等の変動等や発行体となる金融機関の信用力悪化等、上場不動産投資信託証券(REIT)は運用不動産の価格や収益力の変動等により、損失が生じるおそれがあります。

レバレッジ型、インバース型ETF及びETNのお取引にあたっての留意点

上場有価証券等のうち、レバレッジ型、インバース型のETF及びETN(※)のお取引にあたっては、以下の点にご留意ください。

  • レバレッジ型、インバース型のETF及びETNの価額の上昇率・下落率は、2営業日以上の期間の場合、同期間の原指数の上昇率・下落率に一定の倍率を乗じたものとは通常一致せず、それが長期にわたり継続することにより、期待した投資成果が得られないおそれがあります。
  • 上記の理由から、レバレッジ型、インバース型のETF及びETNは、中長期間的な投資の目的に適合しない場合があります。
  • レバレッジ型、インバース型のETF及びETNは、投資対象物や投資手法により銘柄固有のリスクが存在する場合があります。詳しくは別途銘柄ごとに作成された資料等でご確認いただく、またはコールセンターにてお尋ねください。

※「上場有価証券等」には、特定の指標(以下、「原指数」といいます。)の日々の上昇率・下落率に連動し1日に一度価額が算出される上場投資信託(以下「ETF」といいます。)及び指数連動証券(以下、「ETN」といいます。)が含まれ、ETF及びETNの中には、原指数の日々の上昇率・下落率に一定の倍率を乗じて算出された数値を対象指数とするものがあります。このうち、倍率が+(プラス)1を超えるものを「レバレッジ型」といい、-(マイナス)のもの(マイナス1倍以内のものを含みます)を「インバース型」といいます。

米国株式の信用取引にかかるリスク

米国株式信用取引の対象となっている株式等の株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。米国株式信用取引は差し入れた委託保証金を上回る金額の取引をおこなうことができるため、大きな損失が発生する可能性があります。その損失額は差し入れた委託保証金の額を上回るおそれがあります。また、米国株式信用取引は外貨建てで行う取引であることから、米国株式信用取引による損益は外貨で発生します。そのため、お客様の指示により外貨を円貨に交換する際の為替相場の状況によって為替差損が生じるおそれがあります。

外国株式等の取引にかかる費用

〔現物取引〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引手数料
米国株式 約定代金の0.495%(税込)・最低手数料:0米ドル・上限手数料:22米ドル(税込)
中国株式 約定代金の0.275%(税込)・最低手数料:550円(税込)・上限手数料:5,500円(税込)
アセアン株式 約定代金の1.10%(税込)・最低手数料:550円(税込)・手数料上限なし
※当社が別途指定する銘柄の買付手数料は無料です。
※米国株式の売却時は上記の手数料に加え、別途SEC Fee(米国現地取引所手数料)がかかります。詳しくは当社ウェブページ上でご確認ください。
※中国株式・アセアン株式につきましては、カスタマーサービスセンターのオペレーター取次ぎの場合、通常の取引手数料に2,200円(税込)が追加されます。

〔米国株式信用取引〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引手数料
約定代金の0.33%(税込)・最低手数料:0米ドル・上限手数料:16.5米ドル(税込)
※当社が別途指定する銘柄の新規買建または買返済時の取引手数料は無料です。
※売却時(信用取引の場合、新規売建/売返済時)は上記の手数料に加え、別途SEC Fee(米国現地取引所手数料)がかかります。詳しくは当社ウェブページ上でご確認ください。

米国株大口優遇の判定条件を達成すると、以下の優遇手数料が適用されます。米国株大口優遇は一度条件を達成すると、3ヶ月間適用になります。詳しくは当社ウェブページをご参照ください。

〔米国株式信用取引(米国株大口優遇)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0米ドルです。

  • 米国株式信用取引には、上記の取引手数料の他にも各種費用がかかります。詳しくは取引説明書等をご確認ください。
  • 米国株式信用取引をおこなうには、委託保証金の差し入れが必要です。最低委託保証金は当社が指定する30万円相当額、新規建て時に最低必要な委託保証金率は50%、委託保証金最低維持率(追証ライン)が30%です。委託保証金の保証金率が30%未満となった場合、不足額を所定の時限までに当社に差し入れていただき、委託保証金へ振替えていただくか、建玉を決済していただく必要があります。

米国貸株サービスにかかるリスクおよび費用

  • リスクについて
    米国貸株サービスの利用に当社とお客様が締結する契約は「消費貸借契約」となります。株券等を貸付いただくにあたり、楽天証券よりお客様へ担保の提供はなされません(無担保取引)。
  • 投資者保護基金の対象とはなりません
    貸付いただいた株券等は、証券会社が自社の資産とお客様の資産を区別して管理する分別保管および投資者保護基金による保護の対象とはなりません。
  • 手数料等諸費用について
    お客様は、株券等を貸付いただくにあたり、取引手数料等の費用をお支払いいただく必要はありません。
  • 配当金等、株主の権利・義務について
    貸借期間中、株券等は楽天証券名義又は第三者名義等になっています。そのため、貸借期間中に権利確定日が到来した場合の配当金については、発行会社より配当の支払いがあった後所定の期日に、所得税相当額を差し引いた配当金相当額が楽天証券からお客様へ支払われます。また、株式分割等コーポレートアクションが発生した場合(整数倍の株式分割を除く)、自動的にお客様の口座に対象銘柄を返却することで、お客様は、株主の権利を獲得します。
  • 配当金の情報について
    米国貸株サービスにおける配当金の情報は、S&Pグローバル社より提供されるデータを基にしており、原則として毎営業日の更新となります。配当金は各企業の判断で廃止・変更になる場合がありますので、必ず当該企業のホームページ等で内容をご確認ください。
  • 大量保有報告の提出について
    貸株対象銘柄について、楽天証券およびまたはそのグループ会社等の保有が基準以上となった際にSEC(Securities and Exchange Commission:米国証券取引委員会)に報告書を提出する必要が生じます。その場合において、お客様の氏名、取引株数、契約の種類(株券消費貸借契約である旨)等を報告書に記載させていただく場合がございますので、予めご了承ください。
  • 税制について
    株券貸借取引で支払われる貸借料及び貸借期間中に権利確定日が到来した場合の配当金相当額は、お客様が個人の場合、一般に雑所得又は事業所得として、総合課税の対象となります。なお、配当金相当額は、配当所得そのものではないため、配当控除は受けられません。また、配当金相当額は外国税額控除の対象外です。また、お客様が法人の場合、一般に法人税に係る所得の計算上、益金の額に算入されます。税制は、お客様によりお取り扱いが異なる場合がありますので、詳しくは、税務署又は税理士等の専門家にご確認ください。

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