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現金化は諸刃の剣?全資産が下落する局面ではどう行動すべき?

2022年11月30日配信

積立投資家の皆様、本日もお疲れ様です。楽天証券の山口です。

毎週水曜日の「元気が出るニュースレター【#積クラ通信】」をお届けいたします。
本ニュースレターでは、積立投資家のお客様に役立つ「資産形成がうまくいくヒント」をお伝えしてまいります。

バランスファンドの下落要因の振り返り

さて、先々週より「資産の分散」をテーマにお送りしております。
先週は、「保有している某バランスファンドの基準価額が下がり続けている」というご質問を事例に挙げながら、その下落要因についてお話ししました。
バランスファンドは、基準価額の動きを緩やかにするために、様々な資産に分散投資を行うことが特徴ですが、その分下落の要因が分かりにくいのがやや難点ですよね。

お持ちのファンドを分析したところ、バランスファンドの中でも低リスク型のタイプのため、先進国債券(為替ヘッジあり)が多く組み入れられていました。
今年に入り、株式だけでなく債券価格も世界的に大きく下落しているため、それがこのファンドの最大の下落要因となっていたのです。
下落要因が分からないままですと、「こんなに下がり続けるなら、より安全な債券にしていた方が良かった…?」と考えてしまいますが、実は、債券にしていたらもっと下がってしまっていた、ということになります。

このように、「他のファンドに変えた方が良いか?」「売却した方が良いのか?」などを判断するうえでは、下落要因について冷静に分析することが重要です。

全資産が下がっている時はどうすればいい!?

分析した結果、ほぼすべての組入資産が下落していることが分かったところで、「それなら下がっても仕方ない」と割り切れる方もいるかと思いますが、「それなら結局分散しても意味が無いのでは?」と思ってしまう方もいるでしょう。

過去にも、一時的に全資産が急落するといった局面は何度もあったのですが、そのような局面でも唯一下落しない資産があります。
それが「現金」です。
現金は価格変動のない「無リスク資産」であるため、上昇することも無ければ下落することもありません。
リスクを伴う全資産が下落している局面で、下落を回避する唯一の方法は「現金を持つこと」になります。

このような局面に備えて、投資信託の中には、ファンド内で短期金融資産(ほぼ現金のようなもの)を保有できる仕組みにしている商品もあります。
状況に応じて機動的に一部資産を売却・現金化し、ファンドの中に現金をプールさせておくことで、基準価額の下落を回避するというものです。

バランスファンドの中には、資産配分をある程度固定しているものと、資産配分を機動的に変更するもの、2つのタイプがあります。
固定タイプは、下落局面でも基本的には配分変更を行いませんので、下落を回避するという機能は持っていません。
その分、長期的なリスク・リターンを見込みやすくなるのがメリットです。

一方、変動タイプは、下落局面で安定性資産(債券)などの比率を増やしたり、現金を持てるファンドの場合は現金比率を増やしたりします。
全資産が下落している局面では、債券比率を増やしても下落を免れられないため、緊急対応として現金を持つのです。

現金化は諸刃の剣?

これだけ聞くと、下落局面で何もしない固定タイプよりも、的確に資産配分を変更してくれる変動タイプの方が良さそうに見えますよね。
しかし、重要なのは「機動的な変更がうまくいっているか?」という点です。

多くのファンドでは、運用の再現性が持てるよう、定性判断(個人の勘や経験則など)ではなく定量判断に基づき、資産配分の変更を行うことが通常です。
様々な指標をウォッチし、ある危険水域のようなシグナルが出た場合に変更を行う、といった形です。

実際のところ、私が見てきた中では、この戦略が常時うまくいっている、というケースはあまり見たことはありません。
もちろん、ある局面では非常にうまく戦略が機能していたこともあるのですが、過去には無かったようなことが世の中では起きますので、その時に同じ戦略が機能しないこともあるのです。

売却のタイミングを的確に予知し、確実に下落を避けられる完璧な指標があるのであれば、それ以上願うことはありませんが、なかなかそんな万能な未来予知は出来ないものです。
(もしそんな運用戦略があれば、世の中の人全員がこぞってその商品を買っているでしょうし、そうすればマーケットはうまく機能しなくなるでしょう…。)

さらに一番怖いのは、現金化することにより「その後の上昇を取り逃してしまう」ということです。
先ほど申し上げましたように、現金はリターンを生み出さない資産ですので、現金を持ち続ければ、下落した分を取り返すことは難しくなります。
「いつ運用を再開するか?」は、売却の判断よりも難しいことが多いのです。

皆様よりも圧倒的な量の情報を仕入れ分析している運用会社のプロでも、売買のタイミングを完璧に計ることは難しいので、個人の皆様がそれを行うのはさらに至難の業といえるでしょう。

長期投資なら「フルインベストメント」が○

そうなると、やはり個人の皆様にとって最大の武器は、「時間があること」です。
長期的に見れば、下落した株価は回復することが多いですし、また株式と債券の逆相関が成り立つことが多いです。
「この期間中にこれ以上の下落は絶対に出せない」などの特別な事情があれば別ですが、ある程度下落からの回復を待てる時間があり、また一時的な下落を避ける必要が無いのであれば、やはり基本的には売却等を行わず長期投資を行うのが良いでしょう。

投資信託や年金などの世界で「フルインベストメント」という言葉があります。
これは、ファンドの中で現金などの安全資産は極力持たず、ほぼすべての投資資金を投資対象資産に投じる、という意味です。
現金はリターンを生み出さない資産ですので、ファンドの中で現金を持ち上昇を取り逃してしまうことは、大きな機会損失になります。
このため、多くのファンドでは、基本的にはフルインベストメントとしていることが多いです。

余談ですが、過去に、下落を一定範囲内に抑えることを目的としたファンドがあったのですが、下落を抑えるために現金化を行ったものの、結局そこから投資を再開することができず、ファンド自体が償還となってしまったようなケースもありました。
下落を気にするあまり、「下落はしないが全く上昇もしない」結果となってしまっては、元も子も無いですよね。

特に個人の方の場合は、ご自身ですでに現金比率と投資比率を考えたうえで投資を行っていらっしゃるかと思います。
先ほどのように、「この期間中にこれ以上の下落は絶対に出せない」の特別な事情が無い限りは、投資部分では「フルインベストメント」を行い、下落があっても長期投資を継続する、というのが、遠回りなようで一番成功への近道といえるかもしれません。

基準価額が下がり続けている局面では、誰しも不安な気持ちになってしまうものですが、是非冷静に中身を分析いただき、「ファンドの運用目的に沿った運用結果となっているか?」「ご自身の目的に沿ったファンドかどうか?」という視点で判断してみてくださいね!

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