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(楽天証券経済研究所所属のアナリスト今中能夫による臨時レポート)
第一生命保険相互会社(以下第一生命)は、これまでは「相互会社」でしたが、2010年4月1日に「株式会社」に組織変更し、同時に東京証券取引所に上場する計画です。ここでは、契約者=新株主の視点から、第一生命の株式会社化に伴って何がどう変わるのかを述べてみたいと思います。
大半の日本の生命保険会社は「相互会社」です。相互会社では、有配当保険の契約者が「社員」となり、それら社員が互選で「総代」を選びます(無配当保険の契約者は社員ではありません)。そして、総代の会議である「総代会」が最高意思決定機関となります。相互会社は株式会社のように会社外部の株主が会社を所有するわけではないため、上場はできません。第一生命が誕生した明治35年には、保険が契約者相互の互助によるものと考えられていたために、この相互会社という仕組みは有効でした。しかし、今日のように日本国内では少子高齢化が進み、一方海外では新興国経済が成長し人口も増えている時代では、企業としての成長を目指す場合には、相互会社という仕組みは必ずしもそぐわなくなりました。
そこで、第一生命では2010年4月1日付けで、会社組織を「相互会社」から「株式会社」に変更することにしました。また、同時に上場する計画です(審査等によっては時期がずれる場合もあります)。株式会社化して上場することによって、資金調達や海外企業との資本提携やM&Aなど今後の成長に結びつく政策を、これまで以上に機動的に採れるようになります。
一方で、株式会社になると、これまでの有配当保険の契約者が社員として総代を通じて生保経営に関わるという形ではなく、「株主」が会社のオーナーとなることになります。会社経営に当たる経営陣は株主総会で承認を受けることになります。契約者の立場も変わります。株式会社化における一定のルール(後述します)に応じた株式の配分は受けますが(寄与が少ないため、株式を受け取れない契約者もいます)、上場した場合は外部の株主も増えます。上場した場合は日々の取引で株価が変動します。
まとめると、企業としての第一生命は株式会社になることで、新しい株主を迎え入れ、新しい経営に向かうことになります。有配当保険の契約者にとっては、株式を配分された人たちの立場が、会社のオーナーである「株主」という立場と、第一生命という企業の顧客である「契約者」としての立場に分離されることになります。
株式会社化の日程は以下の通りです。2008年12月25日に補償基準日が2009年3月31日と決められました。この補償基準日の有配当保険の契約者に対して株式が割り当てられます。次いで2009年6月5日に組織変更にかかる取締役会決議がなされました。2009年7月1日には組織変更にかかる公告があり、ここから12月までに割当株式数の通知と手続き案内が対象となる契約者に送付されました。そして、スケジュール通りならば、2010年4月1日に組織変更、株式発行と株式上場が同時に行われる予定です。
組織変更の目的
出所:第一生命保険相互会社「第108回定時総代会ご説明資料」
※ 以下の図表は全て同じ出所である。
組織変更の日程
株式会社化後の当社の概要
相互会社から株式会社になった場合、第一生命の契約者の立場は、従来と変わらない部分と変わる部分が発生します。
組織変更後における保険契約者の権利に関する事項
株式の割当対象の社員は、2009年3月31日(この日が補償基準日になります)現在の第一生命の社員名簿に記載されている社員(有配当保険の契約者)です。
これらの契約者の人たちが加入している個々の保険契約について、「寄与分」を計算します。「寄与分」の計算は次のように行います。まず、保険契約ごとの収支を計算します。収支とは保険料、資産運用収益といった収入から、保険料等給付、配当金、事業費などの支出を差し引いたものです。この収支から更に保険契約上の債務を履行するために確保すべき資産の額を差し引きます。そこで出た数値が「寄与分」です。個々の保険の収支は保険を始めた時から上述の補償基準日までの累積収支です。ここから保険契約上の債務を履行するために確保すべき資産の額を差し引いた場合、寄与分がプラスである場合に有効とします。計算上寄与分がマイナスになる場合もありますが、その場合の寄与分はゼロとします。
契約者ごとの寄与分が計算できたら、その寄与分を合算して、個々の契約者の寄与分の全体に対する割合を計算します。今回株式会社化で契約者に発行される株式は、普通株1000万株ですので、各契約者について寄与分に応じた株数が割り当てられます。
社員に対する株式の割当て 全体像
社員に対する株式の割当て 保険契約ごとの寄与分
社員に対する株式の割当て ご契約者ごとの割当株式数の計算
第一生命の発表によれば、2009年3月31日現在の社員数は821万3584人、そのうち1株以上の割当がある契約者は全体の37%の306万230人で、割当株式数は817万4747株になります。1株未満の割当(端株の割当)になる契約者は全体の53%、432万2245人で、割当株式数は182万5252株。一方、割当なしの人は83万1109人です。
第一生命が上場する場合は、各契約者名義の証券口座に第一生命が記録する方法により、整数株式を交付します。株式会社化する2010年4月1日(効力発生日)から1年以内に上場しなかった場合は、株主名簿に記載する方法により整数株式を交付します。
また、上場する場合は、割当を受けた整数株式全部について株式市場での売却を第一生命に委託することにより、割当株式相当分の現金を受け取ることができます。この場合は、契約者の銀行口座への送金費用が500円を上限に実費でかかります。効力発生日から1年以内に上場ができない見込みとなった場合には、この取扱いはありません。
このように、第一生命が会社式会社化して上場する場合は、整数株式の割当を受けた契約者で株式を受け取ることを希望する人(第一生命に割当株式の売却を委託して金銭を受け取ることを選択しない人)は、いずれかの証券会社に証券口座を開設する必要があります。これは、株券電子化によって今の上場企業は株券を発行しないため、上場企業の株主は証券口座に株式を記録する必要があるためです。
端株の割当を受けた場合は、上場する場合は、上場に伴う売出しの方法により端株を投資家に売却します。売出価格は通常の株式上場の時と同じくブックビルディング方式で決定されます。端株の割当を受けた契約者は、端株の売却金額から引受証券会社への手数料を差し引いた金額のうち、端株の割合に応じて金銭を受け取ります。効力発生日から1年以内に上場できない見込みとなった場合は、一般に公正妥当とされる方法(類似会社比較法、ディスカウントキャッシュフロー法など)で決定される売却価格で投資家に対して端株を売却し、受け取った金銭を端株を割り当てられた契約者に分配します。
なお、整数株式を割り当てられた場合で第一生命が上場する場合は、各契約者名義の証券口座に株式が記録されますが、上場後この株式は自由に売買できます。上場後のこの株式の価格は証券取引所における取引で決まる株価となるため、日々変動します。従って、上場時の株価が維持されるとは限りません。また、整数株式の交付を受けた契約者が第一生命に売却を委託して金銭で受け取ることを選択した場合、第一生命がその株式を株式市場で売却した後に、株価が上昇あるいは下落する場合があります。
整数株式の交付
端数部分相当の金銭の支払
契約者に対する株式会社化に関わる各種通知は、第一生命が知り得た最後の住所宛に行います。契約者の住所が不明であるなどの理由によって、整数株式の割当を受ける契約者より、第一生命が定める期限までに証券口座の通知等の手続きが受けられなかった場合には、整数株式は第一生命がみずほ信託銀行に開設する特別口座に記録することによりその契約者に交付されます。
また、整数株式相当の金銭の受取、端株売却金の受取については、その契約者が第一生命に対して書面で申し入れれば、支払われます。ただし、当該株式ないし端株の売却日から10年経つと支払われない場合もありますので、注意が必要です。
住所が不明である場合等への対応
参考
(2010年1月28日配信)
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