楽天証券(株)株式事業部
外国株式担当 安琪
10月に入り秋らしい気候となってきました。日本の秋と言えばマツタケやサンマ、栗など旬の美味しい食べ物を楽しみにされている方も多いのではないでしょうか?今回の特集は「食欲の秋」ということで、経済成長と共に市場規模が拡大している中国の外食事情について紹介していきます。
近年の中国経済は年間約7%のペースで成長しており、経済成長とともに国民の所得も増加しています。また、都市化が進んでおり、農村から都市へ多くの人が流れ込んできています。その結果、外食をする人が年々増加しています。2017年の中国外食市場の規模は約63兆円(39,644億元)で日本(約25兆円)のおよそ2.5倍の規模となっています。その伸び率も日本は前年に対して0.8%なのに対し、中国は10.7%と成長ペースも日本を大きく上回っています。2018年の中国外食売上高は前年より11.2%増の約70兆円(44,000億元)に達する ※1と見込まれており、経済成長とともに外食市場も大きく拡大しています。
外食業界全体が伸びている中で、特に注目すべき外食関連事業は以下の2点です。
この特集では、上記の2点と関連する直近香港上場の注目IPO「メイトゥアン・ディエンピン(美団点評)」(HK:03690)と「ハイディーラオ・インターナショナル(海底撈国際控股)」(HK:06862)、その他の外食関連銘柄を紹介していきます。
中国O2O(オンラインtoオフライン)サービス大手です。2010年に北京で創業した割引クーポンの共同購入サイトを運営する会社です。2015年にネット出前サービスの「美団」が口コミサイトの「大衆点評」を買収し、事業を拡大しました。その後、ホテルや旅行の予約、民泊、配車サービスなど生活に関する様々なサービスを展開し、2018年4月にはシェア自転車の摩拝単車(モバイク)を買収しました。このように、生活を便利にする様々なサービスを手掛けている美団点評は「グルーポン」、「Booking.com」、「食べログ」、「UberEats」、「Airbnb」、「Uber」、「Mobike」に類似した多様なサービスを1社で行っているような企業です。
「美団点評」の強みは、IT技術を駆使し、オンラインとオフラインを結びつけることでユーザーの生活にイノベーションを起こすことに注力している点です。
美団点評の5万人の社員・スタッフのうち1万人はオンライン技術の研究開発を担当するソフトウェアエンジニアです。顧客の購入履歴や口コミ情報などをビッグデータで管理・分析し、ユーザーにユニークな商品ページを提供することなどに活用しています。また、人工知能を活用して道路状況を予想することで、配達時間を30分以内に収めるように努めています。このように、美団点評は最先端技術を積極的に活用するIT企業と位置づけられており、中国国内でのポジションは、IT企業トップグループのBATJ(バイドゥ、アリババ、テンセント、JDドットコム)に次ぐ第2位のグループとして位置づけられています。
美団点評の幅広い事業の中で、特に注目すべき事業はフードデリバリー事業です。美団点評のフードデリバリー事業は急速に成長しており、2017年の同事業の売上高及び取引件数は全事業の中でそれぞれ48%と70%なり、最も大きな割合を占めるまでに成長しました。このフードデリバリーサービスの利用がきっかけとなり他のサービスの利用に繋がるなど、美団点評の顧客の流入元となっており、今では美団点評の柱の事業となりました。以下はこの柱となるフードデリバリー事業についてご紹介します。
美団点評のフードデリバリー事業の売上高は、2015年は約250億円(15.6億元)でしたが、2016年は前年比3.7倍の約940億円(58.7億元)、2017年は同2.9倍の約2,736億円(171.1億元)と、ここ数年で急速に伸びています。その背景には、中国全体でフードデリバリーサービスに対する需要が高まっていることと美団点評の事業戦略があります。
下記図表1は中国、米国、日本のそれぞれ代表的なフードデリバリー会社の比較です。「利用者数/月」の項目をみると、総人口に対する利用者の割合は中国が約21%、米国は約4.6%、日本は約2.1%となっており、中国ではフードデリバリーの利用が他国と比べ浸透していることがわかります。中国でフードデリバリーが浸透している理由としては、米国と比べると、中国は人口密度が高い、人件費が低い、オンライン支払の使用率が高い、ベンチャー企業への積極的な投資などが挙げられます。また、日本と比べると、中国はコンビニエンスストアが少ない、労働力が十分で安価、共働き世帯が多いなどの事情がフードデリバリーサービスを利用する要因となっています。
図表1
会社名 | 美団点評 | Grubhub | 夢の街創造委員会 |
---|---|---|---|
サービス名 | 美団&大衆点評 | Grubhub, Seamless, Eat24, AllMenus, MenuPages | 出前館 |
国別 | 中国 | 米国 | 日本 |
利用者数/月 | 2.9億人 (総人口の約21%) |
1,510万人 (総人口の約4.6%) |
260万人 (総人口の約2.1%) |
オーダー件数/月 | 4.2億 | 1,308万 | 201万 |
売上高/月 | 約3,025億円(187億元) | 約445億円(4億ドル) | 4.2億円 |
連携店舗 | 550万 | 8.5万 | 1.7万 |
この巨大な中国フードデリバリー業界(2017年年間約3.2兆円規模)の大手2社は、「美団点評」と出前専門の「餓了麼(Eleme)」(2017年、業界3位の「百度外売」を買収)です。2017年の両社の中国国内市場シェアはそれぞれ46.1%と45.9%で、合計で9割超となり、ほぼ市場を寡占しています。
ここでは美団点評に注目したい理由は、美団点評の強みは大都市だけでなく、中小都市でもブランドの認知度が高い点にあります。それに、事業が多岐に渡っているため、事業間でシナジー効果を生むことも同社の強みとなっています。このシナジー効果が利便性を高めており、美団点評全体の利用者は、2015年~2017年で年平均約20%で増加しています。美団点評は自社配達ネットワークも整備しており、2017年の配達件数41億件のうち7割は自社配達ネットワークを活用したそうです。
最近では海外での事業拡大も目論んでいます。2018年2月にはインド最大のフードデリバリープラットフォームを持つSwiggyとインドネシアトップの生活サービスプラットフォームを運営するGo-Jekへ出資し、同社が中国国内で培ってきたノウハウを海外でも適用させることを目指しています。その他にも、自社開発のドローンをリリースし、2019年に指定地域でフードデリバリー事業へ投入するを計画しています。このようにアグレッシブな戦略を打ち出す美団点評の今後の動向に注目してみてもおもしろいのではないでしょうか。
中国には「民以食為天(民は食をもって天となす)」ということわざがあります。「庶民にとって食事は生活の基本である」といった意味のことわざで、中国では昔から食が大切にされてきました。このような食を大切にする中国文化の中で各地域において様々な種類の料理が食べられています。様々な種類の中華料理の中で継続的な人気が得られているのは四川料理の火鍋(中国式しゃぶしゃぶ)です。火鍋は、消費者だけでなく、レストラン経営者からも人気です。
消費者から人気の理由は、価格がリーズナブルで家族や友人たちとにぎやかに食事ができることや、痺れるような刺激的な辛さがやみつきになる人が多いこと、また、漢医学の観点から唐辛子や山椒を大量に摂取することが健康に良いとされているなどの理由が挙げられます。
また、経営者からは、調理が簡単で専門的な人材がそれほど必要ではないため店舗の拡張がしやすく、また人手が少なくてすむという理由で人件費が低く抑えられ、他の料理と比べ利益が出しやすいという理由で人気となっています。
近年、火鍋業界の売上高は年間約10%のペースで成長しています(図表2)。火鍋業界の売上高は外食市場全体の約22%を占めており(図表3)、外食市場の中では最も大きな割合を占めています。
図表2
火鍋業界の売上高
図表3
2017年中国外食売上高の割合
以下では中国の火鍋業界大手2社をご紹介します。
中国で人気の火鍋料理チェーン店「海底撈」を展開する企業です。1994年に四川省簡陽市に1号店を開店し、2018年9月時点で店舗数は海外を含めて362店舗に上ります。売上高ベース(2017年)では世界最大の中華料理レストランで、顧客は年間で1億人を超えています。料理が美味しいだけでなく、カンフー麺ショーやキッズルーム、無料のネイルサロンがあるなど様々な「おもてなし」サービスを行っていることが「海底撈」の人気の理由となっています。また、中国で初めて火鍋のフードデリバリーサービスを開始し、鍋や具材などの必要品の配達から食後の掃除まで無料で行っています。
このようなサービスが人気を集め、ここ数年、業績を大きく伸ばしています。2015年~2017年の売上高は約921億円(57.57億元)、約1,250億円(78.08億元)、約1,760億円(106.67億元)で2016年と2017年は前年より約36%増の勢いで伸びています。また、2015年~2017年の純利益も約66億円(4.1億元)、約155億円(9.7億元、前年比2.3倍)、約191億円(11.94億元、前年比+23%)と大きく伸びています。
今後の事業戦略としては
などの方針を掲げています。
業界トップの海底撈に次ぐ業界2位です。円卓を囲んで家族などで楽しむ通常の火鍋とは違って、呷哺呷哺は一人一鍋です。カウンター席が中心で、顧客の回転率が高く、特に若い人から人気を得ています。ショッピングモールを中心に店舗を展開し、2018年9月時点の店舗数は80都市800店舗に上ります。店舗の増加につれて、売上高も2014年の上場以来、年間10%以上のペースで増加しています。2016年~2017年の売上高は約441億円(27.58億元)と約586億円(36.64億元)で増加率は前年比+14.5%と同32.8%で伸ばしています。
2018年上半期の売上高は前年同期比+35.1%の(約341億円)に上がりました。また、同社も火鍋のフードデリバリーを行っており、その売上高は2018年上半期に前年同期より120%増と急成長しています。
今後の事業戦略は、単価を比較的安く設定しているため利益率が低い点を改善するために、単価を上げて一人火鍋店から家族や友人同士などの団体向けへのシフトを掲げているそうです。その他にも、2017年には「火鍋+茶屋」という新しいコンセプトを掲げ新たな顧客層を獲得するための戦略も打ち出しました。火鍋店とは雰囲気が異なるおしゃれな内装やメニューなどを取り入れた店舗で、ミルクティーやディムサムなどのカフェメニューを提供することで他社との差別化を図るための戦略です。それにより、従来の火鍋店とは異なる新たな顧客層を獲得し、また単価の高いメニューを提供することで利益率の改善を目論んでいます。
広い国土を持つ中国では地域によって味の好みや料理は大きく異なるため、中華料理は多様性があります。フードデリバリーと火鍋以外の、その他の中国のグルメに関する注目銘柄はこちらになります。中国旺旺控股(HK:00151)、 青島ビール(HK:00168)、 青島ビール(SH:600600)、康師傅控股(HK:00322)、周黒鴨国際(HK:01458)、 貴州茅台酒(SH:600519)。詳しいご紹介は下記の表と銘柄個別リンクをご覧ください。
現地コード (上場市場) |
銘柄名 | 業種 | 情報 |
---|---|---|---|
00151 (香港) |
ワンワン・チャイナ (中国旺旺控股) |
小売業 (その他) |
台湾系の大手製菓・飲料メーカー。 せんべいなどの米菓、フレーバー牛乳やハーブ茶などの乳製品・飲料、ソフトキャンディーやナッツといったスナックを製造販売。売上高の9割以上を中国本土が占める。 11年にハンセン指数の構成銘柄に採用された。 |
00168 (香港) |
チンタオ・ビール (青島ビール) |
小売業 (その他) |
中国でビールの生産・販売を行う大手企業。主力ブランドは「青島ビール」や「ラオ山」などで、プレミアムビールに力を入れてる。 ドイツの租借地だった青島で1903年に創業した「ゲルマンビール青島」が前身。H株上場第1号、香港と上海取引所で重複上場の第1号。 |
600600 (上海) |
チンタオ・ビール (青島ビール) |
||
00322 (香港) |
ティンイ・ホールディングス (康師傅控股) |
小売業 (その他) |
台湾系の食品大手。「康師傅」のブランドを軸に中国で即席麺や飲料、菓子類を製造・販売。
2017年の販売量ベースの国内シェアは即席麺が44%、茶飲料(ミルクティ含む)が51%でいずれもトップ。果汁飲料が18%で2位、ボトルウォーターが14%で3位。 |
01458 (香港) |
ジョウへイヤー・インターナショナル (周黒鴨国際) |
小売業 (外食) |
中国のアヒル肉料理専門店。アヒルの首の肉などさまざまな部位を調理するのが特徴で、野菜や豆腐の煮込み料理も提供する。 2002年に湖北省武漢で創業し、2016年10月時点で湖北省の周辺や沿海部を中心に12省市の40都市で757の直営店を展開。 |
600519 (上海) |
グイジョウ・マオタイ (貴州茅台酒) |
小売業 (その他) |
中国の大手白酒の製造・販売メーカー。貴州省茅台地区を拠点とし、高粱(コーリャン)を主な原料とし、ウイスキー、ブランデーと並び世界3大蒸留酒を醸造する。 「茅台酒」は中国では国賓をもてなす「国酒」扱い、2017年の「茅台酒」の販売量は3万200トンに上る。 |
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