社会のセーフティネットである以上、日本が国としてそれを投げ出すことはあり得ないし、国民や企業が怒って保険料の支払いをボイコットするような状態にすることは考えられない。それなのに「公的年金は持たない。いずれ破綻する」という意見はいつも出てくるんだよね。
現役の人が今のお年寄りの年金を負担する、いわば「仕送り」のような仕組みなので、少子高齢化が進む日本では支え手が少なくなっていつか破綻するに違いないと、悲観論者は言う。昔は1人のお年寄りに対して3人の現役がいたからラクだったが、だんだん1人に対してほぼ1人になっていくのが見えているから破綻は必至だと。
確かに60歳以上の人口と59歳までの単純な人口比を見ればそういう話になるんだけど、今や働く高齢者や女性は格段に増えていて、大昔の55歳定年制で女性もほとんど働いていなかった時代と比較することは正しくない。60歳以降はもちろん、今や65歳以降も働く人は多くて、その人たちは年金を受け取るどころか、厚生年金保険料を「支払う側」だ。
そして、実は悲観論者が指摘する「仕送り」のような仕組みである点こそが破綻しない理由なんだよね。逆に一人ひとりの口座にその人のためのお金を積み立てていく方式だったら、国がインフレに負けないよう40年以上にわたって資産運用で成功し続けなきゃいけなくなるので、余程危険だ。
でも、今の現役世代の保険料をお年寄りにパスするだけの仕組みなら、問題は格段に小さくなる。仕送りだけでは足りない分を消費税などを中心とした国庫から出し、それでも足りない部分が出てきたら過去の蓄積のプールである「積立金」から出せばよい――。これが今動いている仕組みであり、足もとから超長期的な推計で見ると内訳は大体こんな感じのようだ。
出所:厚生労働省HP
つまり「仕送り」としてそのままパスされる保険料で大体7割くらいが賄えていて、2割くらいは国庫から補充されていて、今後の少子高齢化や経済環境次第では「積立金」からの補填に頼る比率が高くなると。
株式市場が悪い年に週刊誌が「年金が目減りした!」と大騒ぎするのは、この「積立金」の運用利回りのことなんだ。でも今見たように、そのことは今々の年金の財政状況や健全性にはほとんど関係がない。株式市場なんて良かったり悪かったりするのが当たり前だから、1年あたりの利回りを騒ぐこと自体もまったくナンセンスなんだけど、そのことで年金が終わるようなことを書くマスメディアは本当に問題だと思う。
ちなみにこの過去からの保険料と年金支払いの余りが溜まりに溜まった「積立金」は、足もとで何と約190兆円もあるんだよね(2022年度第2四半期末時点)。GPIF(ジーピフ)というのを聞いたことがあるだろうか。「年金積立金管理運用独立行政法人」というのが正式名称なんだけど、そこがこのお金の運用を担っていて、日興アセットのような運用会社も複数使いながら長期運用をしている。今すぐは必要ないけど、日本の公的年金制度を100年以上にわたって運営していくためには、上手に運用し、保険料だけでは足りなくなる分を上手に埋めていかなきゃいけない大切なお金だからね。
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