納得しづらいかもしれないけど、「下がる時もキッチリ一緒に下がる」のが優秀なインデックスファンドなの。上がる時は同じだけ上がって、下がる時には下がらないで欲しいっていうのが普通の感覚だよね。でもそれじゃダメなのがインデックスファンド。
専門用語で「トラッキングエラー」っていうんだけど、指数をいかにズレなくトラック、追随していくかがインデックスファンドの命題でね、そのズレ、乖離である「エラー」をいかに小さくするか、「トラッキングエラー」をいかにゼロに近づけるかが、インデックスファンドのファンドマネージャーの腕の見せどころなんだよね。
インデックスファンドは指数に連動させるだけだから簡単、だからコストが安い、「だからオトク!」みたいな言い方をされることが多いんだけど、インデックスファンドの運用って実は簡単じゃないし、実はコストが安いことがすべての選択肢の中での「絶対的なオトク」を意味するわけでもない。指数以上に儲かっちゃいけないんだから、指数という縛りから解き離れたオトクにはなれないってことだよ。
そう、インデックスファンドの運用って実は結構難しいんだよね。だってさ、日経平均にしてもS&P500にしても、指数にはまずコストからして存在しないじゃない。あ、わかりにくいね。
指数ってね、そもそも僕ら運用会社は関係なくて、「指数算出会社」という専門のところが計算して発表しているのね。その計算において彼らは実際に株式を買い入れる必要はなくて、コンピューター上で計算するんだけど、それをインデックスファンドとしてトラックする我々運用会社はペーパーシミュレーションってわけにはいかない。お客様から集まったお金で、その指数に入っている株式をその計算方法通りの割合で実際に買わないといけないわけよ。
そうなると色んなコストがかかる。株式売買の取次をしてくれた証券会社に払う売買手数料に始まり、海外の株式だと現地での株券保管費用みたいのも結構高い。指数算出会社に払う「ブランド使用料」みたいのも馬鹿にならない。あとは僕も含めた社員の人件費に始まり、法定書類を作る費用などの諸経費がどうしてもかかる。そのコストが信託報酬などのコストなわけ。
そのコスト分はどうしても指数をトラックする際の足かせになるよね。だってコストなどかからない指数に対して、毎日コストがかかってしまうインデックスファンドなんだから。さらに毎日買ってくれた人からはお金が入ってくるし、売った人にはお金を返すために現金を工面しなければならないんだよね、ファンドの中でね。
これも結構な足かせなのよ。日経平均のインデックスファンドなら、日経平均の中身の株式をまったく同じだけ買って、そのままロックしてしまえば完璧にトラック、連動できそうじゃない。でも実際は、お客様のお金すべてで株式を買っているわけにはいかない。売却する人に備えて現金を少しは持っておかないといけないし、今日入ってきたお金はまだ投資にまわってないからタイムロスが出る。
そうしたハンデを所与のものとして、それでも指数をキッチリとトラックしているのがインデックスファンドなの。かなりの技術と経験が求められる運用なんだよね。さっき絵で見せたインデックスファンドは、そういう意味で皆優秀なインデックスファンドだ。それぞれに信託報酬の率は違うけど、出している結果は皆、ちゃんとグレーの日経平均の値動きをしっかりトラック、トレースできてたからね。
随分前に話したから忘れちゃってるかもだけど、基準価額ってそもそも「信託報酬控除後」じゃん。コストが高かろうが低かろうが、それが引かれた後が基準価額なわけだよね。そしてその基準価額がいかに連動対象の指数と一緒に動くかってのが、大きな意味でのインデックスファンドの目標なんだから、一番見ないといけないのは、基準価額の値動きと指数の値動きがちゃんと連動しているかどうか、であってコストの多寡じゃないわけよ。
ここってどうもまだちゃんと理解されてない気がして。「コストは安い方がいい」って、当然正しいし、強い言葉なのですごく浸透しやすいんだけど、今話したインデックスファンドってそもそも何なのかとか、基準価額ってそもそも信託報酬引いた後だよね、ってことまでは十分に理解されていないんじゃないだろうか。
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