新春講演会2025

●コンセプトファンド

さて、アクティブファンドには要注意の「何ちゃって」があること理解してもらった上で、さらに知ってもらいたいのが第三の選択肢である「コンセプトファンド」についてです。端的に言えば、ベンチマークを「宣言」するのではなく、何をもって銘柄をしぼり込むかの考え方・コンセプトを「宣言」しているファンドってことになる。

さっき話した一般的なアクティブファンドと異なり、仮想敵を決めて勝った負けたをしないそうしたタイプを、日興アセットは「コンセプトファンド」と呼んでいる。一般的な指数・ベンチマークには縛られずに、ファンド毎に自ら定めた「コンセプトにだけ縛られる」ファンドってことだね。

具体的には、「当ファンドは、AI(人工知能)などの進展がもたらす金融業界における地殻変動に注目し、長期で大きなリターンとして獲得することを目的としたファンドです」みたいなことを宣言する。この場合はきっと「何とかフィンテック株式ファンド」みたいな名前が冠されたファンドになるかな。

「世界的な労働人口の減少は確実に予想される未来であり、その裏返しとして必然な自動化ニーズを広範にとらえることで銘柄選定を行ない、長期的な資産増加を目指します」みたいな宣言をしているファンドには多分、「何とかロボティクス株式ファンド」みたいな名前が付くと思う。

いずれにしても、ファンド毎に「このファンドはどんな思想や未来予想をもって銘柄選択に臨むか」ということを宣言するタイプだ。これは明らかにさっきの一般的なアクティブファンドと違うよね。世の中の「今」を広くキャプチャするインデックスを意識しながらそれに勝とうとするのではなく、何らかの特色あるコンセプトに基づく「未来予想図」から意思決定するっていうんだから。

あるファンドマネージャーの目利き力に期待して、どんな銘柄やどんな業種を重視するかなどは全面的に一任しよう、というのが一般的なアクティブファンドだと言える一方で、「コンセプトファンド」は、一流ファンドマネージャーの目利き力に全部お任せするというよりは、そのファンドが規定する世界に「共感するかしないか」がポイントとなるファンドってことだ。

英語ではこういうタイプを「ベンチマーク・アグノスティック」と呼ぶみたい。アグノスティックとは「~に依存しない」という英語らしいので、まさにベンチマークに依存せずコンセプトに規定されるという意味だよね。僕らの「コンセプトファンド」という造語は悪くないと、自分でも思うな。

2人にはこの「コンセプトファンド」という世界に是非とも興味を持ってもらいたいと思う。すぐにそうしたファンドを買わなくてもいいので。まずはNISAを中心にオール・カントリーとかのインデックスファンドを優先してていいので。でも興味を持ってもらいたい。

なぜ僕がそんな風に思うかと言うと、これこそが株式投資の原点だと思うから。僕は32年前に証券マンになってずっと株式市場と付き合ってきたわけだけど、株式投資っていうのは将来の世の中を想像して、それと現在のギャップに知恵を絞り合う世界だと思うんだよね。人間に欲がある限り世界は前進し、僕らが思いもしないような商品やサービスが将来生まれ、企業の新陳代謝がその必然として起こる。そうしたドラスティックな潮流の変化をいかに早くから想像できるかが、株式投資の成否を分けるんだと思ってきたんだよね。

僕らが呼ぶ「コンセプトファンド」ってまさにこれなの。今年とか来年とか、インデックスが上がったとか下がったとかでなく、10年後20年後の世の中と業界秩序がどう変わっているかを今想像し、行動する――それこそが株式投資の本来の姿だと思うわけ。

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