新春講演会2025

●積立にとって「いい軌跡」

積立の場合は、そのファンドがどういう風に動いていくかという「軌跡」が大事だ。それがすべてと言っても言い過ぎではないくらいに大事。

積立の場合、実はこのグラフのような軌跡の方がいい結果になるんだよね。

5年間の前半の約3年はずっと横這いで全然上がらず、後半からようやく上がっていく。最初の2つのグラフと同じ16,000円のところまで上がってくれて最後にホッとした感じかな。さっきのに比べるとまったく「優秀」じゃない。

でも、グラフの中に書いてあるように、このファンドへの積立の結果は85.9万円だ。さっきの75.5万円よりも「優秀」な積立結果となっている。理由はもうわかるよね。毎月買っていく積立の場合、この前半戦において、低い基準価額で仕込めていること功を奏したわけだよね。

もっと面白いケースを見せようか。これです。

さっきのケースの前半戦はそうはいっても横這いだったけど、これはひどい。積立を始めたすぐから下がっている。しかも10,000円が4,000円だから「暴落」と言ってもいいだろうな。その後上がっていったけど、さっきのファンドたちのように16,000円のところまでは上がれなかった。ようやく最後にスタート時の10,000円に戻っただけ。

しかし、しかし、しかし。もうグラフの中の数字に気付いてくれている通り、このファンドへの積立結果は91.6万円。これまで見たどれよりも「優秀」な積立結果となっていることに驚くよね。

もうわかってると思うけど、4,000円までの下落局面において口数をたくさん仕込んで来たおかげだ。その後の回復が10,000円というスタート時点に戻るだけのものであっても、十分に大きく作用しているわけだね。ドルコスト効果全開だわ。もしここから基準価額が上昇していったら、前のグラフのファンドとの差はさらに拡がっていくことになる。

まさに僕の20年以上の積立はこういうことだった。2回の激しい下落時に「下がっても嬉しいのが積立だ。上がるのは最後でいいのが積立だ」とばかり止めなかった。そして僕の積立の「軌跡」は、結果的にはドルコスト平均法の理想形だったということだ。

シャープレシオとは無関係の「積立向きの軌跡」という観点は、あまり言われないがとても大事なことだ。最初に言ったような1銘柄とかの個別株投資はまったく勧めないけど、「値動きのリスクは大きいが、長期の成長期待も大きい」といったタイプの投資信託は「積立向きの軌跡」を期待するファンドとして一考に値すると思う。

前回「コンセプトファンド」でチューニングする話をしたけど、それはこの観点からも当てはまる。ロボティクスとかフィンテックといった投資テーマは、長期のメガトレンドだと僕は思っているけど、そのテーマから選ばれるような企業の株式はまだ十分な利益が出ていなかったり、やっているビジネスが皆にちゃんと理解されていなかったりする。既に出来上がっている、時価総額の大きな企業に投資するコンセプトではないんだから、そうなるよね。

するとどうしても短期目線の投資家がワッと買い上げてしまったり、サーっと引いてしまったりで、株価の動きが激しくなりがちなんだよね。そして「残念ながらマーケットはひとつ」なもんだから、その値動きはそれらファンドの基準価額にも反映されて、激しい値動きのファンドということになる場合が多い。シャープレシオの低いファンドだね。

積立をしている最中に大きく下がる局面は何度も出てくると思う。下がる時に普通のインデックスファンドよりも大きく下がるのは、ほぼ間違いない。逆に時々急に大きく上がることもあると思う。でもホッとしたのもつかの間、また下がったりするのよ。

ついつい力が入っちゃうのは、僕の積立は今、こういうファンドになってるからなんだよね。あ、これ初めて言ったね。20年以上前に始めた僕の日本株ファンドでの積立は、実は8年前に今のマンションの頭金を作る時に一部売ったんだけどね、その時に残りも一緒に見直そうと思って初めての切り替えをしたのよ。

もう僕の「手の内」の話はいいかな。だって僕はさすがにここから20年の積立はしないと思うし、そろそろ「出口戦略」ってやつを考える歳だからさ。これから「20年の計」を行なう君たちの話をしよう。

もし君たちがそうしたファンドも積立ファンドのリストの中に加えていたら、つまり普通のインデックスファンドをベースに「チューニング」素材として加えていたなら、それらは20年後のトータルの結果に対して「大活躍」を果たしている可能性があると、僕は思ってる。

積立向きの軌跡」を描いた結果として「チューニング」部分が大きな仕事をしているとね。つまり、最初からしばらくは値動きが激しく、低迷期間も長く、したがって安い基準価額で淡々と口数を溜め込んでいて、というかそうならざるを得ない状態で、そして後半戦になってようやく、そうしたファンドのコンセプトに時代が追いついてきた結果として基準価額が上がっていくと。

まぁでも、話半分でお願いね。そういう積立を「チューニング」どころか「メイン」にしちゃってる僕の個人的な意見だからさ。これまでの他の話もすべてそうだけど、自分たちで納得ずくのかたちを作れるよう、考え方のロジック、頭の整理として受け止めてくれればと思う。焦る必要はないんだから、じっくり考えて2人で相談して決めてもらえれば嬉しいかな。

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