最後にもうひとつのケースを見せておこうか。さっきの逆で、途中で上にふくらんで16,000円で着地しているね。
これ、今までのどれよりもお金が増えてない。67.9万円だ。一番「優秀」でないファンドってことだね。その理由はもう2人はわかってるよね。高い基準価額で少ない口数しか溜め込めない前半を過ごすってことは、実は「ダメな軌跡」なんだね。
これはなかなか深い、というか考えさせられる話だ。
だってこのグラフってさ、積立を始める時にイケイケで、皆が「これが一番いいじゃん。上がってるし!」と選びそうな値動きじゃない。始めた後も基準価額は上がってて気持ちがいい。「増額しちゃおうかな」「これまで3.3万円だったけど、10万円までこのファンドでNISAは一本化しちゃおうかな」「成長投資枠の積立までこれ一本で月30万円までいくで~」ってなりそうだ。
時価総額加重のインデックスに対する、世界中の機関投資家や日本の個人投資家からの集中に心地悪さを感じているという話を前回したよね。今回の話と合わせて考えてみて言えるのは、そうした投資家の集中がもし指数上位銘柄の株価を過度に割高にしている場合には、その指数は今後このグラフのような「ダメな軌跡」を辿る可能性があり得るってことだ。
ちなみに「割高」っていうのは、その企業の利益に対して株価が高すぎるということで、ずっと前にPERの説明をしたのを覚えているかな。20倍とか30倍っていう倍率で表すんだけど、S&P500の上位にいる銘柄のPERは、時期によるけど結構高くなっている場合がある。
マーケットって不思議で、イケイケな時は気にならなかったそうした割高さに、突然皆が敏感になる時が来るんだよね。するとグラフの後半戦みたいな感じでスローダウンする時期を経験することになる。
もちろん、指数上位銘柄の株価は割高ではなく、今後のさらなる利益成長を先取りした水準で「あり続ける」という可能性も十分にあって、その場合は杞憂になる。それに、前にも言ったように、これらの指数の代わりになるようなリーズナブルな「ベース(基盤)」の候補は他にあまりないのだから、まったく無視する選択肢は取りづらいと思う。
さてさて。何度も同じこと言ってる気がするけど、いくつかの大事な原理原則的な理解をもって、自分が一番スッキリするかたちを「全体設計」するしかないと思うよ。人に説明できるくらいに理解した全体設計の方針をぜひ2人で作ってほしいな。
最初の頃に言ったことだけど、僕らは何も決まっていない未来に向かって投資をしていくんだよね。つまりすべては今後どういう経済情勢の下で積立なり一括投資をしていくことになるのかという「運」に左右されてしまうんだよ。だからこそ、止めないための固い方針が必要だし、「最後に笑う」ためにベストと自分が考える、誰かのお勧めなんかじゃない設計図が必要だ。
ではまた、次回。
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