前回(第255回)は、ROEの基本的な意味を中心にご説明しました。今回は前回の内容を踏まえ、より実践的な話をしようと思います。
ROEの他に、株価指標として有名なものにPBRやPERがありますね。実は、ROEとPBR、PERとの間には密接な関係があることをご存知でしょうか。
この3つの指標の関係は、次の式で表すことができます。
PBR=PER×ROE
つまり、PERとROEを掛けるとPBRとなるのです。この式から、銘柄選びのヒントを得ることができます。以下でみていきましょう。
一般に、ROEが高い企業の株価は上昇しやすいといわれています。一体なぜROEが高いと株価上昇に結び付くのでしょうか。
その答えは、先ほどのROE、PBR、PERの関係式にあります。
上の式を変形すると、PER=PBR÷ROEとなります。この式から、ROEが高くなるとPERが低くなることがお分かりいただけますでしょうか。PERが低くなれば当然株価の上昇が期待できます。
ROEを高めると株価が上昇しやすい理由は、上の関係式から導き出された「ROE上昇→PER低下→株価上昇」という図式により説明することができるのです。
また、これらの3つの指標の関係を用いて、各銘柄の株価が割高か割安かを判断することもできます。
「PBR=PER×ROE」ですから、もしPBRの低い銘柄があった場合、その銘柄は「PER×ROE」も低いことになります。
一般的に、PBRの低い銘柄は割安と判断されますが、PBRをROEとPERに分解して考えてみると、より精度の高い銘柄選びが可能となるのです。
例えば、同じPBR0.5倍のA株とB株があったとしましょう。PBR0.5倍といえばかなり株価は割安とされる水準です。
A株のPERは5倍、ROEは10%、B株のPERは50倍、ROEは1%です。
A株は「ROEが高いのにPERが低いためPER×ROEが低い」ので、株価は非常に割安といえます。
逆に、B株は「PERが高いのにROEが低いためPER×ROEが低い」ので、株価が割安とはいえないと判断できます。
普段はA株のような「お宝銘柄」にはあまりお目にかかることはできませんが、株価急落時などにはこうした銘柄が出現することもあります。気になる高ROE銘柄は定期的にチェックしておくとよいでしょう。
また、PBRが高い銘柄も同様の方法でより詳細な検討が可能です。
PBR5倍のC株とD株があったとします。PBR5倍といえば、PBRで判断する限りは一般に割高と判断されます。
C株のPERは250倍、ROEは2%、D株のPERは20倍、ROEは25%です。
C株は「ROEが低いのにPERが高いためPER×ROEが高い」ので株価が割高といえます。
一方、D株は「PERはそこそこだがROEが高いためPER×ROEが高い」のであって、決して株価が割高であるとはいえません。
このように、PBR・PER・ROEを用いて判断すれば、PBRやPER単独で判断するよりも精度の高い銘柄選びができるのです。
ROEを用いて投資銘柄を選定する際に気を付けたい点があります。それは、「ROEと株価に直接的な関係はない」ということです。
例えば、ROEが10%の銘柄の株価が1,000円なら割安だが2,000円なら割高、といった使い方はできません。
ですから、高ROE銘柄に投資する際は、他の指標(特にPER)に注目して、株価が割高か割安かを判断することが望ましいといえます。高ROEかつ低PERであれば、一般に株価は割安と判断してよいでしょう。
ただ、高ROE銘柄は成長株が多いため、PERをみると割高な状態にあることも少なくありません。筆者であれば、毎期売上や利益の増加が見込める銘柄の場合、PERが割高であっても、株価チャートをみて上昇トレンドであれば新規買いし、下降トレンドに転じたら売却、というようにすることが多いです。
PERは来期の予想利益をもとにして計算されるものですから、2年後、3年後の利益が予想できるのであれば、それらをもとに自分自身で2年後、3年後のPERを試算し、現在の株価と比べて割安かどうか判断する、という方法もあります。
ROEは、「当期純利益÷自己資本」で求められます。
このROEを上昇させるにはどうすればよいでしょうか。それは、ROEの計算式を見れば分かります。
1つ目の方法は、分子の当期純利益を上昇させることです。利益が増えればROEも上昇する、これは当たり前といえば当たり前です。
2つ目の方法は、分母の自己資本を減少させることです。利益が増えなくとも、自己資本を減らしさえすれば、ROEは上昇するのです。
企業によっては、この2つ目の方法を使って、ROEを高めようという動きもあるようです。例えば自社株買いを実施すれば自己資本が減少しますのでROEは上昇します。過去には、「資本構成の適正化」として新規にわざわざ借り入れを行って自社株買いの原資にあてた企業もありました。
このような、自己資本の減少によりROEを向上させる方法を、投資家として手放しで歓迎してよいかどうかは疑問が残ります。
高ROEの銘柄であればなんでも株価が上昇する、というのは高ROE銘柄投資がブームの間の一過性のものに過ぎないのではないか、というのが筆者の見立てです。高ROEで、かつ売上や利益もしっかりと伸ばしているような成長性のある銘柄、少なくとも高水準の利益を安定的に稼ぎ出すことのできる銘柄でなければ、株価の持続的な上昇は難しいのではないかと思います。
ですから、単にROEの数値だけに注目して銘柄選びをするのではなく、売上高や利益といった業績面、さらには財務面の安全性も考慮して総合的な判断をすることが求められます。
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足立武志
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株式等は株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。上場投資信託(ETF)は連動対象となっている指数や指標等の変動等、上場投資証券(ETN)は連動対象となっている指数や指標等の変動等や発行体となる金融機関の信用力悪化等、上場不動産投資信託証券(REIT)は運用不動産の価格や収益力の変動等、ライツは転換後の価格や評価額の変動等により、損失が生じるおそれがあります。※ライツは上場および行使期間に定めがあり、当該期間内に行使しない場合には、投資金額を全額失うことがあります。
上場有価証券等のうち、レバレッジ型、インバース型のETF及びETN(※)のお取引にあたっては、以下の点にご留意ください。
※「上場有価証券等」には、特定の指標(以下、「原指数」といいます。)の日々の上昇率・下落率に連動し1日に一度価額が算出される上場投資信託(以下「ETF」といいます。)及び指数連動証券(以下、「ETN」といいます。)が含まれ、ETF及びETNの中には、原指数の日々の上昇率・下落率に一定の倍率を乗じて算出された数値を対象指数とするものがあります。このうち、倍率が+(プラス)1を超えるものを「レバレッジ型」といい、-(マイナス)のもの(マイナス1倍以内のものを含みます)を「インバース型」といいます。
信用取引は取引の対象となっている株式等の株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。信用取引は差し入れた委託保証金を上回る金額の取引をおこなうことができるため、大きな損失が発生する可能性があります。その損失額は差し入れた委託保証金の額を上回るおそれがあります。
国内株式の委託手数料は「ゼロコース」「超割コース」「いちにち定額コース」の3コースから選択することができます。
〔ゼロコース(現物取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
但し、原則として当社が指定するSOR(スマート・オーダー・ルーティング(※1))注文 のご利用が必須となります。(当社が指定する取引ツールや注文形態で発注する場合を除きます。)
ゼロコースをご利用される場合には、当社のSORやRクロス(※2)の内容を十分ご理解のうえでその利用に同意いただく必要があります。
※1 SORとは、複数市場から指定条件に従って最良の市場を選択し、注文を執行する形態の注文です。
※2 「Rクロス」は、楽天証券が提供する社内取引システム(ダークプール(※3))です。
※3 ダークプールとは、証券会社が投資家同士の売買注文を付け合わせ、対当する注文があれば金融商品取引所の立会外市場(ToSTNeT)に発注を行い約定させるシステムをいいます。
〔ゼロコース(信用取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
但し、原則として当社が指定するSORのご利用が必須となります。(当社が指定する取引ツールや注文形態で発注する場合を除きます。)
〔超割コース(現物取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
5万円まで 55円(税込)
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 115円(税込)
50万円まで 275円(税込)
100万円まで535円(税込)
150万円まで640円(税込)
3,000万円まで1,013円(税込)
3,000万円超 1,070円(税込)
〔超割コース(信用取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 148円(税込)
50万円まで 198円(税込)
50万円超 385円(税込)
超割コース大口優遇の判定条件を達成すると、以下の優遇手数料が適用されます。大口優遇は一度条件を達成すると、3ヶ月間適用になります。詳しくは当社ウェブページをご参照ください。
〔超割コース 大口優遇(現物取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
〔超割コース 大口優遇(信用取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
〔いちにち定額コース〕
1日の取引金額合計(現物取引と信用取引合計)で手数料が決まります。
1日の取引金額合計 取引手数料
100万円まで0円
200万円まで 2,200円(税込)
300万円まで 3,300円(税込)
以降、100万円増えるごとに1,100円(税込)追加。
※1日の取引金額合計は、前営業日の夜間取引と当日の日中取引を合算して計算いたします。
※一般信用取引における返済期日が当日の「いちにち信用取引」、および当社が別途指定する銘柄の手数料は0円です。これらのお取引は、いちにち定額コースの取引金額合計に含まれません。
かぶミニ®(単元未満株の店頭取引)は、当社が自己で直接の相手方となり市場外で売買を成立させます。そのため、取引価格は買付時には基準価格に一定のスプレッド(差額)を上乗せした価格、売却時には基準価格に一定のスプレッド(差額)を差し引いた価格となります(1円未満の端数がある場合、買付時は整数値に切り上げ、売却時は切り捨て)。なお、適用されるスプレッドは当社ウェブサイトにて開示していますが、相場環境の急変等により変動する場合があります。
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