10月末の日銀による「サプライズ追加金融緩和」により急上昇をした日本株は、その後も上昇を続け、ついに12月8日(月)に18,000円を突破しました。
同時に為替レートの円安も急激に進み、ドル-円レートは12月5日に120円を突破しました。
10月17日の14,529円03銭を底に、日経平均株価は2カ月足らずで約3,500円、25%も上昇したのです。為替レートも10月16日の105円台から12月8日の121円台まで、15円以上、率にして15%近くも円安となっています。
短期間にこれだけ株高、円安となるケースは少なく、かなり急ピッチな株価の上昇と円安が起きているというのが現状です。
261回、262回と日本株の今後の戦略について述べてまいりましたが、そろそろ株価の調整局面が何時きてもおかしくはありません。その点も踏まえて、今回は日本株の現状分析と今後の注意点を考えてみたいと思います。
日経平均株価の過去の高値を見ると、2007年の7月に18,261円98銭という高値をつけています。過去の高値は強い節目(抵抗帯)となることが多いため、そこからの株価下落には注意が必要です。
もし18,261円98銭をすんなり超えてくることになると、次の節目は2000年4月の20,833円21銭ですが、さすがにワントレンドでそこまでいくのは難しいのではないかと思います。
そして、一旦当面の高値をつけると、そこから短期間(1~2カ月)で15%~20%程度の株価調整となるケースが目立ちます。2007年7月に高値をつけた後も、2006年4月につけた高値の後もそうでした。昨年(2013年)5月に16,000円近くまで駆け上がった後も、5月23日の急落を契機に短期間で大きく値下がりしたことは記憶に新しいものです。
ここで、日本株の過熱感の状況を確認しておきましょう。まず25日騰落レシオは、11月25日に145.9%というかなり高い数値を記録した後も、130%以上の数値で高止まりしていて、過熱感の存在が伺えます。
日経平均株価の25日移動平均線からの乖離率は12月5日時点で4.17%です。一時乖離率が10%に達したものの、そこから株価の大きな調整はなく、乖離率は縮小傾向です。
信用評価損益率は11月28日時点でマイナス7.48%と、相場が過熱しているという状況にはありません。裁定買い残高は、11月28日時点で3兆4,500億円と、昨年5月の急落直前の4兆3,100億円よりは低いものの、10月24日時点の2兆4,700億円からは1兆円増加しています。
急ピッチで株価が上昇しているわけですから、いつ調整局面に入ってもおかしくないものの、相場自体はものすごく過熱しているとはいえません。ただし、ここからさらに株価が急騰して日経平均株価の25日移動平均線からの乖離率が再び10%に接近したり、裁定買い残高が急増した場合にはその後の株価急落に十分注意しなければならないといえます。
10月末から続く上昇相場は、決して全面高にはなっていないのも特徴です。右肩上がりに上昇を続けている銘柄ももちろん多いのですが、特に新興市場銘柄を中心として、横ばいだったり、逆に株価が下がっている銘柄も結構目立ちます。
筆者は、そうした出遅れ銘柄が上昇トレンドに転じた直後に新規買いを入れてみるのですが、そこから順調に株価が伸びていく銘柄は多くはありませんでした。逆にちょっと株価が上昇したところで伸び悩んでしまう銘柄の方が多かったのです。
11月までは、やがては出遅れ銘柄にも資金が回ってくると考え、かなりの金額を投資していたのですが、さすがに日経平均株価の安値からの上昇幅・上昇率や、騰落レシオの数値、裁定買い残高などを考えると、あまり無理はできないと判断しました。株価の動きの悪い銘柄を外して強い銘柄を中心に残すこととし、ここからの新規買いは極力避けるようにしました。今後の株価調整局面に備える準備をはじめたのです。
ただ、東証1部銘柄と新興市場銘柄は株価の値動きのリズムがずれることが多いのも事実です。したがって、現時点でさえない動きが続いている新興市場銘柄であっても、株価をウォッチし、買うべき時に買えるようにしておくべきでしょう。もしかしたら、今株価が好調な東証1部銘柄が調整局面に入って下降トレンドに転換する中、新興市場銘柄は逆に上昇トレンドに転換する銘柄が続出・・・ということだって考えられるからです。
以前のコラムにて、10月中旬から続く今回の上昇相場で個人投資家はあまり利益を得ることができていないと申し上げましたが、それは今でも続いています。
筆者も同じで、本当に日経平均株価が3,500円も上昇したのか、と思いたくなるほど利益の伸びは小さいものになっています。
現に、11月28日時点での信用評価損益率はマイナス7.48%で、日本株が底値を付けた時期である10月17日のマイナス14.93%から大して改善していません。信用評価損益率がプラス域まで浮上し、個人投資家の大部分が利益を順調に伸ばしていた昨年前半とは雲泥の差です。
もちろん、投資している銘柄によっては、日経平均株価と同様、好調な投資成果をあげている個人投資家の方も少なくはないでしょう。でも、個人投資家が好む中低位株や新興市場銘柄を中心に投資している場合は、本当にストレスがたまる相場です。
こうした状況になると、短期間に挽回しようとつい投資金額を増やしたり、株価が強い銘柄の高値を買ったりしてしまいがちですが、あまり無理をするのはそろそろやめた方がよいと筆者は思います。
もちろん、日本株全般が上昇トレンドにあるわけですから、保有株の大部分を売却して守りを固めるまでの必要は現段階ではありません。
しかし、日本株全般が調整局面に入ると、上昇局面で好調だった銘柄だけでなく、上昇局面で大して値上がりしなかった銘柄までもが大きく値を下げてしまう危険性があります。
筆者は、最大限の強気を10とすれば、11月までは8だったものを12月第1週に6~6.5まで落としました。これは、上昇トレンドが継続していて株価が強い個別銘柄以外は保有株を減らし、調整局面がいつ来てもよいように準備をしたためです。
現在の日本株は、アノマリーからいえばかなり強気を押し通してもよい場面です。アノマリーとは理論的に説明がつかない株価の動きのことです。実は過去10回の衆議院選挙期間中、9回は株価が上昇したというアノマリーがあります。また、年末は株価が上昇することが多いというのもアノマリーとして有名です。
こうしたアノマリーに照らしあわせてみれば、少なくとも年内いっぱいは強気継続でよいではないかと考えるのも自然です。
しかし、アノマリーといえども、「そうなる可能性が高い」のであって、「いつもそうなる」という保証はありません。株価は上昇し続けることはなく、どこかで調整を挟みます。そして、株価の上昇スピードが急激であるほど、その後の調整も大きくなりがちです。
安値からかなり急ピッチで上昇している訳ですから、無理はせず、いつ株価が調整局面に入ってもよいような準備をしておくべきではないかと筆者は思います。
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足立武志
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〔超割コース(信用取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 148円(税込)
50万円まで 198円(税込)
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