日経平均株価が2007年7月の高値18,261円98銭を更新し、リーマンショック前の高値を超えてきました。これはおよそ15年ぶりの高値水準であり、21世紀に入ってからの最高値となります。ニュースでも、この事実がさかんに報道されました。
一般に、テレビや新聞等のメディアで「日本株」といえば、それは日経平均株価のことを指します。ですから、株式投資をしていない人々が「日本株が今世紀の最高値を更新」というニュースを見ると、素直に「日本株はものすごく上昇しているのか、知らなかった」と感じるでしょう。人によっては「景気が悪い悪いと言いながらも実は少しずつ回復しているのかも」とか、「何だかんだ言ってもアベノミクスの効果はすごい」と思ったりもするかも知れません。
しかし、多くの個人投資家の感覚としては、日本株が今世紀の最高値を更新したと言われても、あまり実感が持てないのではないでしょうか。どちらかといえば、「そんなに儲かってはないんだけどなあ」と疑問に思う方が多いのではないかと感じます。
そこで今回は、今世紀の最高値を更新した日経平均株価の現状を他の指数と比較することで明らかにするとともに、今後個人投資家がとるべき投資戦略について考えてみたいと思います。
まず、日経平均株価と並んで日本株の動きを表す代表的な指数であるTOPIXをみてみましょう。(JPX日経インデックス400は、指数として採用されてからの期間が短く、比較検討をすることができないため今回の検証からは外しております。)
TOPIXの月足チャートをみると、驚きの事実が分かります。TOPIXは2007年2月に1,816.97ポイントの高値をつけていて、これがリーマンショック前の高値です。一方、3月6日時点では1,540.84ポイントと、2007年2月高値から約280ポイント、率にして15%も低い水準にとどまっています。TOPIXは日経平均株価より15%以上も出遅れているのです。
新興市場の値動きを表すマザーズ指数からは、さらに驚愕の事実が分かります。リーマンショック前の高値どころか、2013年5月につけたアベノミクス相場での高値1,083.24ポイントすら上回ることができていないのです。現在のマザーズ指数は871.9ポイントであり、2013年5月高値から率にして約20%も低い水準にとどまっています。リーマンショック前の高値である2006年1月の2,800.68ポイントには遠く及ばないのは言うまでもありません。
日経平均株価 月足チャート
TOPIX 月足チャート
東証マザーズ指数 月足チャート
日経平均株価とTOPIXとの相対的な強さを測る指標であるNT倍率をみてみると、リーマンショック時(2008年10月)の9.49倍から上昇を続け、3月6日時点では12.31倍となっています。
以前のコラムでも書きましたが、NT倍率の上昇は、TOPIXに比べて日経平均株価の方が強い動きをみせていることを表しています。
そして、日経平均株価を構成する銘柄の多くはいわゆる優良株であり、どちらかといえば機関投資家好みの銘柄です。個人投資家に人気の高い銘柄は、日経平均株価構成銘柄にはあまり含まれていません。
ですから、NT倍率が上昇傾向にあるときは、例えTOPIXが上昇しても、日経平均株価採用銘柄の上昇により日経平均株価に「連れ高」しているだけの状態となり、個人投資家にとっては利益を得にくい相場環境になっているのです。
また、信用評価損益率をみても、2月27日時点でマイナス7.25%にとどまっています。アベノミクス相場初期の2013年1月や2013年5月には約4%のプラスに達していたことを考えると、個人投資家が大きく利益を得られる相場には決してなっていないことが分かります。
なぜ日経平均株価に比べてTOPIXやマザーズ指数の動きが弱いのでしょうか。一言でいえば、「日経平均株価に最も資金が多く流れたから」です。
最近は外国人投資家の活発な先物買いが続いていて、「先物主導」により株価が上昇している面があります。この先物買いの多くは、TOPIX先物ではなく日経平均先物であるため、必然的に日経平均株価採用銘柄により多くの資金が流入しました。
また、日本銀行によるETF買いも見逃せません。日本銀行は日経平均株価やTOPIXなどの株価指数に連動するETFを市場から買い入れています。日経平均株価採用銘柄であれば、日経平均株価連動型のETFとTOPIX連動型のETFが買われれば、その双方からの買い需要が生じます。でも、日経平均株価に採用されていない東証1部銘柄の場合、TOPIX連動型のETFが買われなければ買い需要が生じません。日経平均株価連動型のETFにいくら資金が流入しても株価上昇にはつながらないのです。この違いが、TOPIXより日経平均株価の方が強い要因です。
そして、日本銀行のETF買いでは、マザーズなど新興市場には資金が流入しないという点もポイントです。マザーズ指数が2013年5月の高値を超えられずに低迷を続けている理由の1つはここにあります。
2013年5月までは、新興市場にも外国人の資金が多く入り、マザーズ指数も大きく上昇しました。しかし、それ以降は外国人買いも細り、日本銀行のETF買いの需要もなく、個人投資家が上値を買い上げることもないため、じり貧の動きが続いているのです。
以上の点を踏まえて、ここから先どうしていけばよいのかを考えてみましょう。簡単に言えば、現在まで続く「優良株相場」に乗っかってよいのかという点です。
筆者も、機関投資家が好むような優良株には以前はほとんど手を出していませんでした。しかし、中低位株や新興市場銘柄があまりにも上昇しないため、最近では保有株(金額ベース)の3割~5割程度は、安値からかなり株価が上昇しているものの好業績が続く優良株にシフトしています。
ただ、やはり筆者が望むのは2013年前半のように個人投資家が大きな利益を得られやすい「中低位株・新興市場銘柄相場」です。そして、その相場への転換はある日突然訪れます。中低位株や新興市場銘柄の場合、数日程度であっという間に株価は大きく上昇してしまいますから、変化の兆候を逃さないことが重要です。
もちろん、今までの優良株相場の流れが今後もしばらく続き、中低株や新興市場銘柄は蚊帳の外に置かれ続けることも十分考えられます。
そこで、筆者は上述のように優良株と中低位・新興市場銘柄の「二刀流」で対応するとともに、中低位株や新興市場銘柄の株価を毎日ウォッチし、変化の兆候が出たらすぐにシフトできるようにしています。
すでに株価が大きく上昇してしまっている優良株に今から投資しても大きな利益を得ることは難しいと思いますし、株価が大きく上昇した分大幅下落のリスクも高まっています。やはり個人投資家が大きく儲けられるのは中低位株・新興市場銘柄が活躍する相場なのです。
いくら優良株相場が続いているからといって、安値から大きく上昇して割高になっている銘柄を無理に買う必要もないと思います。それよりも、いずれやってくるであろう中低位株・新興市場銘柄相場がいつ訪れてもよいように、銘柄のピックアップと日々の株価のウォッチは継続しておくことをお勧めします。
前回(第275回)にて予告しておりました「テンバガー」への道・筆者の実践手法(その2)は、今回のコラム内容を優先したため、次回(第277回)にて掲載する予定です。ご了承ください。
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足立武志
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株式等は株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。上場投資信託(ETF)は連動対象となっている指数や指標等の変動等、上場投資証券(ETN)は連動対象となっている指数や指標等の変動等や発行体となる金融機関の信用力悪化等、上場不動産投資信託証券(REIT)は運用不動産の価格や収益力の変動等、ライツは転換後の価格や評価額の変動等により、損失が生じるおそれがあります。※ライツは上場および行使期間に定めがあり、当該期間内に行使しない場合には、投資金額を全額失うことがあります。
上場有価証券等のうち、レバレッジ型、インバース型のETF及びETN(※)のお取引にあたっては、以下の点にご留意ください。
※「上場有価証券等」には、特定の指標(以下、「原指数」といいます。)の日々の上昇率・下落率に連動し1日に一度価額が算出される上場投資信託(以下「ETF」といいます。)及び指数連動証券(以下、「ETN」といいます。)が含まれ、ETF及びETNの中には、原指数の日々の上昇率・下落率に一定の倍率を乗じて算出された数値を対象指数とするものがあります。このうち、倍率が+(プラス)1を超えるものを「レバレッジ型」といい、-(マイナス)のもの(マイナス1倍以内のものを含みます)を「インバース型」といいます。
信用取引は取引の対象となっている株式等の株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。信用取引は差し入れた委託保証金を上回る金額の取引をおこなうことができるため、大きな損失が発生する可能性があります。その損失額は差し入れた委託保証金の額を上回るおそれがあります。
国内株式の委託手数料は「ゼロコース」「超割コース」「いちにち定額コース」の3コースから選択することができます。
〔ゼロコース(現物取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
但し、原則として当社が指定するSOR(スマート・オーダー・ルーティング(※1))注文 のご利用が必須となります。(当社が指定する取引ツールや注文形態で発注する場合を除きます。)
ゼロコースをご利用される場合には、当社のSORやRクロス(※2)の内容を十分ご理解のうえでその利用に同意いただく必要があります。
※1 SORとは、複数市場から指定条件に従って最良の市場を選択し、注文を執行する形態の注文です。
※2 「Rクロス」は、楽天証券が提供する社内取引システム(ダークプール(※3))です。
※3 ダークプールとは、証券会社が投資家同士の売買注文を付け合わせ、対当する注文があれば金融商品取引所の立会外市場(ToSTNeT)に発注を行い約定させるシステムをいいます。
〔ゼロコース(信用取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
但し、原則として当社が指定するSORのご利用が必須となります。(当社が指定する取引ツールや注文形態で発注する場合を除きます。)
〔超割コース(現物取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
5万円まで 55円(税込)
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 115円(税込)
50万円まで 275円(税込)
100万円まで535円(税込)
150万円まで640円(税込)
3,000万円まで1,013円(税込)
3,000万円超 1,070円(税込)
〔超割コース(信用取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 148円(税込)
50万円まで 198円(税込)
50万円超 385円(税込)
超割コース大口優遇の判定条件を達成すると、以下の優遇手数料が適用されます。大口優遇は一度条件を達成すると、3ヶ月間適用になります。詳しくは当社ウェブページをご参照ください。
〔超割コース 大口優遇(現物取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
〔超割コース 大口優遇(信用取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
〔いちにち定額コース〕
1日の取引金額合計(現物取引と信用取引合計)で手数料が決まります。
1日の取引金額合計 取引手数料
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200万円まで 2,200円(税込)
300万円まで 3,300円(税込)
以降、100万円増えるごとに1,100円(税込)追加。
※1日の取引金額合計は、前営業日の夜間取引と当日の日中取引を合算して計算いたします。
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