前回のコラムにて示したとおり、オリエンタルランド株をファンダメンタル分析すると、株価は割高だと判断する投資家が圧倒的に多いはずです。でもオリエンタルランド株はそんな声をあざ笑うかのように上昇を続けたのです。
このような状況のとき、保有株の売り時や、空売りのタイミングをどのように計ればよいのか、筆者なりの考え方をご紹介したいと思います。
オリエンタルランド株はなぜここまで大きく上昇したのでしょうか。筆者も長らく謎に思っていたのですが、3月22日付の日経ヴェリタスにその答えが載っていました。
それによれば、オリエンタルランド株は「MSCIジャパン最小分散指数」の組み入れ比率が1.9%と、同指数へ組み入れられている約150銘柄のうち2番目に高い比率となっているようです。
実はここ最近、GPIFをはじめ年金資金を運用する機関投資家を中心に、株価指数に連動した投資成果を目指すパッシブ運用が加速しています。
これまでパッシブ運用といえば、日経平均株価やTOPIXといった代表的な株価指数に連動するような運用を指しましたが、今ではだいぶ様相が異なっています。
例えばTOPIXを構成する東証1部銘柄の中には収益力が低かったり、業績が低迷しているものも相当数含まれています。年金資金を運用する機関投資家としては、そうした銘柄にはできるだけ投資したくない、しかし優良な個別銘柄を探し出して投資するアクティブ運用のようなリスクの高い運用はできないという事情があります。そこで考案されたのが前述のMSCIジャパン最小分散指数など、企業の収益性などを加味した新しい株価指数です。銘柄をいくつかの「ふるい」にかけて厳選することで、日経平均株価やTOPIXよりも良いパフォーマンスを目指そうとするものです。こうした新しいタイプの株価指数を総称して「スマートベータ指数」と呼んでいます。
これらスマートベータ指数に連動する運用が急増しているため、その指数の構成銘柄にも大量の買いが入り、もはやファンダメンタルのみで説明がつかないほどの上昇を演じている、これがオリエンタルランド株上昇の理由です。
もし、株価が大きく上昇する前からオリエンタルランド株を保有していた場合、売却のタイミングはどのように考えればよいでしょうか。
ファンダメンタル分析の理解はある程度深いものの、テクニカル分析をおろそかにする個人投資家は、株価が割高であると判断すると、保有株を売却してしまいます。でも、それではせっかくの大相場であっても少しの利益しか得ることができません。
もしかしたら、「ファンダメンタルからみて株価は割高だ」と思っているのは自分だけで、実は株価に大きなプラスとなる材料が隠れているかもしれません。
また、そうしたプラス材料がなく、本当にファンダメンタルからみて株価が割高な状態、つまりバブル相場だからこそ、大きな利益を得ることができるチャンスなのです。
したがって、筆者であればオリエンタルランド株を安く買えていた場合、例えファンダメンタルからみて割高と判断したとしても、日足チャートで株価が25日移動平均線を上回っている限りは保有を継続します。そして、25日移動平均線を下回ったら保有株はそのままにして同株数を空売りします。その後再度25日移動平均線を上回ったら空売りを買戻しします。
空売りを使わず、25日移動平均線割れで一旦売り、再度25日移動平均線超えで買い直しという方法でも結構です。
この作業を、週足チャートが下降トレンドに転換する(株価が13週移動平均線を割りこむ)まで繰り返し行います。週足チャートが下降トレンドに転換した後は、25日移動平均線を株価が超えても一時的な上昇で終わってしまう可能性が高くなるためです。
これにより、仮に株価が25日移動平均線を割れた後大きく下落してもしっかりと利益を確保できますし、株価の上昇が続けば買値の3倍、5倍の利益も十分に可能となるのです。
添付の株価チャートでいえば、①で25日移動平均線を割り込んだので空売り、その後25日移動平均線を超えた②で空売りを返済します。このとき、少し損失が生じますが、これは必要経費として割り切ります。その後、再度25日移動平均線を明確に割り込んだ③で空売りを実行します。
オリエンタルランド(4661)日足チャート
上昇トレンドが続いているにもかかわらず、ファンダメンタルを必要以上に過信して保有株を売却してしまうのは勿体ないというのは上で説明したとおりです。
それ以上に最悪なのは、ファンダメンタル分析で株価が明らかに割高だと判断した結果、株価が上昇トレンドであるにも関わらず空売りを仕掛けてしまうことです。これは、ある程度株式投資に慣れてきた中級者が陥りがちなケースです。
オリエンタルランド株がここまで上昇した理由の1つは上に書いたようにスマートベータ指数による運用が急増したための買い需要が続いたためですが、もう1つの理由として、空売りの踏み上げがあったと考えられます。
信用取引残高の推移をみると、2014年3月以降、12月まで信用売り残高が信用買い残高を上回り、信用倍率が1倍を大きく下回る「売り長」の状態が続きました。そしてその間株価は一貫して上昇をしていたのです。しかも急騰ではなく、巡航速度でじわじわとした上げですから、信用売りを仕掛けた投資家は逃げるに逃げられず、ゆで蛙のようになってしまったことでしょう。
株価が明らかに割高と思われる株を空売りした結果踏みあげられてしまったという方は、株価が動く最大の要因は「業績」ではなく「需給」であることを肝に銘じておいてください。「業績に比べて割高なら株価は下がる」、そんな単純な理屈は通らないのが株式市場です。
では、明らかに株価が割高と思われる株に空売りを仕掛けるタイミングはどのようにすればよいのでしょうか。それは、株価が天井をつけた可能性が高まった後、言い換えれば株価が下降トレンドに転換してからというのが基本です。
具体的な空売りのポイントはいくつかありますが、筆者が最も多く用いるのは、日足チャートで株価が25日移動平均線を割り込んだ時点(つまり下降トレンド転換が濃厚となった時点)です。
ただ、日足チャートのみで下降トレンドに転換しても、週足チャートや月足チャートではまだ下降トレンドになっていない場合、株価は一時的な調整にとどまりさらに上値を追う展開となるケースも珍しくありません。
そこで、成功の可能性を高めたいのであれば、「二番天井後の直近安値割れ」も組み合わせて空売りを実行します。これは株価が天井をつけたあと下落し、その後の戻りで先の天井を超えられずに反落(この時の戻り高値を「二番天井」と呼びます)し、直近の安値を割り込んだタイミングです。
添付のチャートをご覧ください。3月30日の9,890円が天井、その後4月1日に8,620円まで下がった後反発し、4月7日に9,540円をつけました。これが二番天井です。ですから空売りのタイミングとしては、25日移動平均線を明確に割り込んだ③や直近安値8,620円を割り込んだ④が考えられます。
なお、買いの場合と同様、空売りの場合も必ず損切りポイントを設定し、株価がそこに達したら損切りの買戻しを実行するようにします。具体的には株価が25日移動平均線を超えたタイミングや、二番天井を上回ったタイミングです。
添付のチャートでは、③、④の場合も25日移動平均線超えを損切りとしますが、損失率が多少大きくなっても構わないなら、2番天井の9,540円超えを損切りとしても結構です。さらに、1番天井の9,890円と2番天井にあまり差がありませんので、1番天井9,890円超えまで粘ってみるという手もあります。
空売りの実行の際は、株価チャートだけでなく、合わせて信用残高の推移もみておくとよいでしょう。実は、オリエンタルランド株は今年に入ってからは信用倍率が1倍を超え、直近では3倍超にまで上昇しています。これは値ごろ感からの信用買いの増加によって信用取引の需給が悪化していることを意味します。
信用倍率が上昇していて、株価が下降トレンドにあるならば、踏み上げの心配も少なくなるため空売りをするには良好な環境となります。さらに、週足チャートが下降トレンドに転換(13週移動平均線割り込み)していれば、株価は下がりやすくなります。
注.本コラムの記載は筆者が考える一般的な売買のタイミングを説明したものであり、オリエンタルランド株の売買の推奨をしているものではありません。
本資料は情報提供を目的としており、投資等の勧誘目的で作成したものではありません。お客様ご自身で投資の最終決定をおこなってください。本資料の内容は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手・編集したものですが、その情報源の確実性まで保証するものではありません。なお、本資料の内容は、予告なしに変更することがあります。
足立武志
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株式等は株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。上場投資信託(ETF)は連動対象となっている指数や指標等の変動等、上場投資証券(ETN)は連動対象となっている指数や指標等の変動等や発行体となる金融機関の信用力悪化等、上場不動産投資信託証券(REIT)は運用不動産の価格や収益力の変動等、ライツは転換後の価格や評価額の変動等により、損失が生じるおそれがあります。※ライツは上場および行使期間に定めがあり、当該期間内に行使しない場合には、投資金額を全額失うことがあります。
上場有価証券等のうち、レバレッジ型、インバース型のETF及びETN(※)のお取引にあたっては、以下の点にご留意ください。
※「上場有価証券等」には、特定の指標(以下、「原指数」といいます。)の日々の上昇率・下落率に連動し1日に一度価額が算出される上場投資信託(以下「ETF」といいます。)及び指数連動証券(以下、「ETN」といいます。)が含まれ、ETF及びETNの中には、原指数の日々の上昇率・下落率に一定の倍率を乗じて算出された数値を対象指数とするものがあります。このうち、倍率が+(プラス)1を超えるものを「レバレッジ型」といい、-(マイナス)のもの(マイナス1倍以内のものを含みます)を「インバース型」といいます。
信用取引は取引の対象となっている株式等の株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。信用取引は差し入れた委託保証金を上回る金額の取引をおこなうことができるため、大きな損失が発生する可能性があります。その損失額は差し入れた委託保証金の額を上回るおそれがあります。
国内株式の委託手数料は「ゼロコース」「超割コース」「いちにち定額コース」の3コースから選択することができます。
〔ゼロコース(現物取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
但し、原則として当社が指定するSOR(スマート・オーダー・ルーティング(※1))注文 のご利用が必須となります。(当社が指定する取引ツールや注文形態で発注する場合を除きます。)
ゼロコースをご利用される場合には、当社のSORやRクロス(※2)の内容を十分ご理解のうえでその利用に同意いただく必要があります。
※1 SORとは、複数市場から指定条件に従って最良の市場を選択し、注文を執行する形態の注文です。
※2 「Rクロス」は、楽天証券が提供する社内取引システム(ダークプール(※3))です。
※3 ダークプールとは、証券会社が投資家同士の売買注文を付け合わせ、対当する注文があれば金融商品取引所の立会外市場(ToSTNeT)に発注を行い約定させるシステムをいいます。
〔ゼロコース(信用取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
但し、原則として当社が指定するSORのご利用が必須となります。(当社が指定する取引ツールや注文形態で発注する場合を除きます。)
〔超割コース(現物取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
5万円まで 55円(税込)
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 115円(税込)
50万円まで 275円(税込)
100万円まで535円(税込)
150万円まで640円(税込)
3,000万円まで1,013円(税込)
3,000万円超 1,070円(税込)
〔超割コース(信用取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 148円(税込)
50万円まで 198円(税込)
50万円超 385円(税込)
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〔超割コース 大口優遇(現物取引)〕
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〔超割コース 大口優遇(信用取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
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1日の取引金額合計 取引手数料
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200万円まで 2,200円(税込)
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