今回のテーマですが、信用取引を使った「ロング/ショート戦略」についてです。ロング/ショート戦略とは、値上がりが期待できる割安銘柄を買う(ロング)一方で、同時に値下がりが予想される割高銘柄を売る(ショート)投資手法です。ロング/ショート戦略にはいくつか種類があり、以前(第19回)は「2つの銘柄間の価格差」に注目した手法を紹介しましたが、今回紹介するのは「合併比率」に注目する手法になります。
例えば、A社とB社が「1対1」の比率で合併を発表したとします。発表した日の株価は、A社が1,000円、B社が800円だったすると、対等合併ですから、リクツの上では両社の株価はお互いに理論株価である900円に近づくことになります。この時、A社の売り建てと同時にB社の買い建てを行い、両社の価格差が縮小することで利益をねらうことができます。
こうした例は多くの証券会社のサイトでも掲載されているほどポピュラーなものですが、実際には、合併比率がいつも1対1とは限りませんので、別の具体例も挙げてみます。
2016年もいよいよ9月相場入りしますが、ファミリーマート(8028)とユニー・グループHD(8270)が経営統合したユニー・ファミリーマートHDの取引が9月1日から開始されます。ファミリーマートがユニー・グループHDを吸収合併する形となりますので、銘柄コードはファミリーマートの8028になります。また、合併比率は「1対0.138」です。
合併比率が発表されたのは2016年2月3日でした。この日のファミリーマートの株価は5,820円、ユニー・グループHDの株価は792円でした。ファミリーマートを基準にすると、ユニー・グループHDの理論株価は、5,820円×0.138で803円となり、実際の株価は理論株価よりも1.4%ほど安くなっていると言えます。
セオリー通りに行けば、ファミリーマート株を売り建て、ユニー・グループHD株を買い建てすることになります。また、裁定取引では取引金額をなるべく揃えることがポイントですので、ファミリーマート株の5,820円×100株(1取引単位)=582,000円に対し、ユニー・グループHD株を792円×700株(7取引単位)=554,400円の取引規模になりますが、このケースでは、思惑通りに価格差が縮小しても、投資金額に比べてねらえる利益はあまり大きくありません。
また、参考までに、合併比率に基づくユニー・グループHDの理論株価と実際の株価(終値)の乖離率の推移を掲載します(ユニー・グループHDの取引最終日は2016年8月26日です)。
ユニー・グループHD株価と理論株価の乖離率推移(2016年2月3~8月26日)
合併比率が発表されてからの乖離率は概ね-2.8%~+0.5%の範囲内で推移していました。そのため、敢えてロング/ショートのポジションを組まずに、乖離率の拡大時に買い建てし、縮小時に返済を繰り返す取引もアリかと思います。
このように、合併比率に注目した「ロング/ショート戦略」で上手に利益を得るには、理論株価との乖離の大きさや取引金額など考慮する必要があります。さらに、合併が破談になってしまうリスクや、合併までの期間に配当金がある場合に理論株価を再計算する必要があったり、売り建て時の逆日歩発生なども想定しておく必要もあったりと、「決して悪くはないけど、実際のところ、ちょっと面倒」な取引手法なのかもしれません。
本資料は情報提供を目的としており、投資等の勧誘目的で作成したものではありません。お客様ご自身で投資の最終決定をおこなってください。本資料の内容は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手・編集したものですが、その情報源の確実性まで保証するものではありません。なお、本資料の内容は、予告なしに変更することがあります。
土信田雅之
信用取引入門講座
信用取引という言葉を耳にしたことがある方は多いと思います。ただし、その割には意外と「近くて遠い」存在であるのも事実です。このシリーズでは、「そもそも信用取引とは何なの?」という初歩の初歩から、一歩進んだ活用法までを毎回テーマを決めて解説していきます。
株式等は株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。上場投資信託(ETF)は連動対象となっている指数や指標等の変動等、上場投資証券(ETN)は連動対象となっている指数や指標等の変動等や発行体となる金融機関の信用力悪化等、上場不動産投資信託証券(REIT)は運用不動産の価格や収益力の変動等、ライツは転換後の価格や評価額の変動等により、損失が生じるおそれがあります。※ライツは上場および行使期間に定めがあり、当該期間内に行使しない場合には、投資金額を全額失うことがあります。
上場有価証券等のうち、レバレッジ型、インバース型のETF及びETN(※)のお取引にあたっては、以下の点にご留意ください。
※「上場有価証券等」には、特定の指標(以下、「原指数」といいます。)の日々の上昇率・下落率に連動し1日に一度価額が算出される上場投資信託(以下「ETF」といいます。)及び指数連動証券(以下、「ETN」といいます。)が含まれ、ETF及びETNの中には、原指数の日々の上昇率・下落率に一定の倍率を乗じて算出された数値を対象指数とするものがあります。このうち、倍率が+(プラス)1を超えるものを「レバレッジ型」といい、-(マイナス)のもの(マイナス1倍以内のものを含みます)を「インバース型」といいます。
信用取引は取引の対象となっている株式等の株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。信用取引は差し入れた委託保証金を上回る金額の取引をおこなうことができるため、大きな損失が発生する可能性があります。その損失額は差し入れた委託保証金の額を上回るおそれがあります。
国内株式の委託手数料は「ゼロコース」「超割コース」「いちにち定額コース」の3コースから選択することができます。
〔ゼロコース(現物取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
但し、原則として当社が指定するSOR(スマート・オーダー・ルーティング(※1))注文 のご利用が必須となります。(当社が指定する取引ツールや注文形態で発注する場合を除きます。)
ゼロコースをご利用される場合には、当社のSORやRクロス(※2)の内容を十分ご理解のうえでその利用に同意いただく必要があります。
※1 SORとは、複数市場から指定条件に従って最良の市場を選択し、注文を執行する形態の注文です。
※2 「Rクロス」は、楽天証券が提供する社内取引システム(ダークプール(※3))です。
※3 ダークプールとは、証券会社が投資家同士の売買注文を付け合わせ、対当する注文があれば金融商品取引所の立会外市場(ToSTNeT)に発注を行い約定させるシステムをいいます。
〔ゼロコース(信用取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
但し、原則として当社が指定するSORのご利用が必須となります。(当社が指定する取引ツールや注文形態で発注する場合を除きます。)
〔超割コース(現物取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
5万円まで 55円(税込)
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 115円(税込)
50万円まで 275円(税込)
100万円まで535円(税込)
150万円まで640円(税込)
3,000万円まで1,013円(税込)
3,000万円超 1,070円(税込)
〔超割コース(信用取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 148円(税込)
50万円まで 198円(税込)
50万円超 385円(税込)
超割コース大口優遇の判定条件を達成すると、以下の優遇手数料が適用されます。大口優遇は一度条件を達成すると、3ヶ月間適用になります。詳しくは当社ウェブページをご参照ください。
〔超割コース 大口優遇(現物取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
〔超割コース 大口優遇(信用取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
〔いちにち定額コース〕
1日の取引金額合計(現物取引と信用取引合計)で手数料が決まります。
1日の取引金額合計 取引手数料
100万円まで0円
200万円まで 2,200円(税込)
300万円まで 3,300円(税込)
以降、100万円増えるごとに1,100円(税込)追加。
※1日の取引金額合計は、前営業日の夜間取引と当日の日中取引を合算して計算いたします。
※一般信用取引における返済期日が当日の「いちにち信用取引」、および当社が別途指定する銘柄の手数料は0円です。これらのお取引は、いちにち定額コースの取引金額合計に含まれません。
かぶミニ®(単元未満株の店頭取引)は、当社が自己で直接の相手方となり市場外で売買を成立させます。そのため、取引価格は買付時には基準価格に一定のスプレッド(差額)を上乗せした価格、売却時には基準価格に一定のスプレッド(差額)を差し引いた価格となります(1円未満の端数がある場合、買付時は整数値に切り上げ、売却時は切り捨て)。なお、適用されるスプレッドは当社ウェブサイトにて開示していますが、相場環境の急変等により変動する場合があります。
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