現在の為替市場環境において、日本人に馴染みの深い米ドル/円だけでFXを取引するには、収益機会を見出すのが難しい状況が続いています。FXに25倍のレバレッジ規制が適用された2011年8月以降で比較しても、1日あたりの値幅(日中変動幅)は米ドル/円の平均58銭※に対して、ユーロ/米ドルは平均169Pips※と3倍近い開きがあります。
今回は世界最大の取引量を誇るユーロ/ドルを中心に、その値動きの特性や今後の方向性について今春までにスポットを当てた特集を組みました。
現在、為替市場で一番動く通貨はユーロです。昨年12月からユーロの独歩安相場が続いています。ユーロ危機は今年で3年目を迎えますが、今年の前半に危機の正念場を迎えます。ギリシャ危機に始まったユーロ圏の危機は今やユーロ圏全体に波及していますが、2012年前半に「南欧諸国での国債大量償還」というリスクイベントが到来します。この危機に対応する抜本的な対応策が出てくるのか否かによって、ユーロの中・長期的な相場の方向が決まってくるでしょう。
ユーロ危機(売り)は国債償還の前に起こることが多く、ユーロ相場を予測するには以下の国債償還予定日の日程がひとつの参考になると思います。
1月11日 | ギリシャ国債の償還 | 元本1,600万ユーロ |
---|---|---|
12日 | スペイン国債の入札 | |
19日 | スペイン国債の入札 | |
2月1日 | イタリア国債の償還 | 元本258億ユーロ |
28日 | スペイン国債の償還 | 元本13億ユーロ |
29日 | スペイン国債の償還 | 元本106億ユーロ ゼロクーポン債 |
3月1日 | イタリア国債の償還 | 元本149億ユーロ(国債) |
元本123億ユーロ(変動利付債) | ||
5日 | アイルランド国債の償還 | 元本55億ユーロ |
20日 | ギリシャ国債の償還 | 元本145億ユーロ |
4月15日 | イタリア国債の償還 | 元本155億ユーロ |
30日 | イタリア国債の償還 | 元本123億ユーロ |
スペイン国債の償還 | 元本119億ユーロ |
これまでの欧州の危機対応は、市場から催促されては対策を小出しするということの繰り返しになっています。ユーロ共同債などの抜本的な対策が出てこない限り、年前半のユーロ相場は基本的にユーロ売りの相場が続くと思われます。
2000年以降の為替相場は基本的に金利差相場です。現時点ではECBは3月まで2回の利下げを行うという市場予測になっています。また、ドイツ2年国債と米2年国債の金利差は現在マイナス圏に突入していますので、ユーロの上値は抑制されそうです。
昨年12月21日にECBが行ったLTRO(longer-term refinancing operations)3年物の資金供給オペは、市場予測を大きく上回る523行のユーロ圏銀行が4891億9100万ユーロを借り入れる結果となりました。これによってECBのバランスシートは急拡大していますが、事実上の量的緩和政策と市場では受け取っています。このLTROというオペは2月にも行われます。タカ派のECB総裁発言とはうらはらに、ECBは利下げと量的緩和策に動いています。金利差とマネーの量という観点から言えば、年前半はユーロ売り基調が続くと思われます。
それでは、マーケットスピードのチャートで、ユーロ/ドルとユーロ/円の相場を見てみましょう。以下のチャートは日足のローソク足に13日移動平均線(赤)と21日移動平均線(緑)を表示させています。この2つの移動平均線の間隔を青く塗りつぶしたものが13-21日移動平均バンド(青の帯)です。相場が13-21日移動平均バンド(青の帯)の上にあるときがユーロ買い期間、下にあるときがユーロ売り期間というふうにトレンド(方向性)の判定をします。
また、13-21日移動平均バンド(青の帯)は日足相場の「支持・抵抗ポイント」になることが多く、相場の「押目買いや戻り売りポイント」として使われることもあります。直近のユーロ/ドルの相場を見てみましょう。1月12日の欧州の国債入札の好結果やECB理事会の結果を受けて、ユーロ/ドルは買い戻されています。この戻りのポイントはまず13日移動平均線(赤)の1.2858周辺となります。この水準越えてくるようだと、21日移動平均線(緑)の1.2930周辺まで戻る可能性が出てきます。1.2930以上の戻りはユーロ買い期間に転換します。
この局面(ユーロ売り基調相場)では13日と21日の移動平均線が戻り売りのポイントとなりますが、ここで重要なのは13日移動平均線(赤)の動きです。13日移動平均線(赤)が前日の13日移動平均の値を上回った場合には、戻り売りの損失リスクが高くなりますので、戻り売りはやめたほうがよいでしょう。
昨年末から円相場の動きが止まっています。売るにしろ買うにしろ、動かないことには話になりません。2012年も為替相場はユーロを軸に動くでしょう。積極的な投資家は円相場から視点を変えて、動きのあるユーロ相場に取り組んでみるのも面白いのではないでしょうか。
上記にシンプルなトレードアイディアを取り上げましたが、相場に絶対の法則はありません。参考意見のひとつとしてお読みください。相場で一番大事なのは資産管理です。今年のユーロ相場は値動きが荒くなりそうなので、必ずストップロス注文を置いておくことをお勧めします。
1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。
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