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●分配金を再投資するかどうかは、投資における複利効果とは別次元の話

念のため、この話もしとこうかな。投信には分配金という仕組みがあるのは知っているかな。投資信託は最低でも年に1回は決算をするという決まりがあって、その時に分配金を払うことができる。

決算の頻度は色々あるんだけど、毎月、隔月、年4回、年2回、そして年1回のうちのどれかが多いかな。その決算時に分配金を出すか出さないかは、運用会社に裁量があって、まったく出さないこともあるけど、毎月とか隔月とかの決算にしているファンドは、分配金を出せるような設計や運営をしてて、実際に出していることが多い。

一方、年1回という最低回数にしているファンドは、分配金は出ないケースが多いように思う。ファンド運営と国の税務の話なので、あまり適当なことは言えないけど、実態としてはそんな感じ。ただ、どのファンドも「出す」とか「出さない」を事前に宣言することはしない、というかできないってことね。

その分配金について「分配金がもらえる」と言う人がいるんだけど、「もらえる」という表現は正しくない。「もらえる」というと、預金の利息みたいに聞こえるけどそんなことはなくて、自分の投資資産をファンド側に一律に切り崩させているようなものなのよ。難しいね、説明が必要だね。

銀行預金の利息だったらさ、100万円に1%の利息が付いたら1万円が「もらえて」、100万円の元本は100万円のままじゃない。でも投信の分配金の場合は違うわけ。1年前に100万円分買った投信が、その後の基準価額の上昇の結果110万円になった時にちょうど決算があって、1万円分の分配金が支払われたとする。そしたら、分配後の僕の投信の評価は109万円になってるんですよ。

1万円は確かに普通預金に振り込まれたんだけど、運用中の残り部分の時価評価は110万円のままじゃなくて109万円なの。つまり1万円分を自分で解約したのと同じ。自分で解約するのでなく、ファンド側から全投資家に一律パーセンテージで資金を返すのが分配金ってことだ。分配は「自動解約装置」みたいなものだな。

で、ここからが大事なんだけど、ファンド側ではなく販売会社側のシステムで、その1万円を普通預金に振り込んでもらうコースと、そうせずにすぐにファンドに戻してもらうコースとが選べるようになっていてね、それをファンド購入時に選んでいるわけ。買う時に、ファンド毎に、どちらかを自分で選んでいる。金融機関によって呼び名は異なるけど、「分配金受け取りコース」と「分配金再投資コース」って感じの名前が付いてる。

さて、もう気付いたかな。このサービスのどちらを選ぶかは、単利か複利かの話に似ている。言うまでもなく、今1万円なんて不要で、将来使う時までできるだけ元本を削らずに運用していたい君たちは「分配金再投資コース」を選んでおかねばならない。でもこれは、単に投資信託の分配という「機能」の話であって、投資に潜む「複利の魔法」の話ではない。

そもそも、分配のかたちで元本を減らしながら運用することが、そうでない場合に比べて効率が悪いのは、複利効果がどうこう以前に、ただただ当たり前の話だよね。それに分配するとその分基準価額が下がっているんだから、それを「分配金再投資コース」で元に戻していることを複利効果と考えるのはおかしいでしょ。出て下がった分をまた元に戻しているだけなんだから、日々動く基準価額を放置しているのと同じことだ(正確には分配金で基準価額が下がった分を、口数を増やすことで元に戻している。難しいかな!?)それに、そもそも決算で分配金を出さないファンドだったら「受け取りコース」も「再投資コース」も関係ない。出ないんだから一緒。

こうなると、これも一応話しとかないといけないかな。投資信託の中で株式をたくさん持っているわけじゃない。すると、それぞれの株式から配当金が出ることがあるんだよね。業績にあわせてね。投資信託にはしたがって、色々な株から色々なタイミングで配当金の名目で現金が入ってくる。債券の場合も半年毎などで利息(クーポン)が出るから、それが現金で入ってくる。

そうそう。株主優待って知ってる?株主からお米とか優待券が送られてくるやつ。僕ら運用会社はそういう優待品についても現金化した上で、投資信託の中に入れるんだよね。そうした諸々のお金を現金のままにしていてはダメなので、投資信託の中に入ってきたらすぐに投資に向けることになる。これって、まあ複利的っちゃ複利的だけど、投資信託の運用としてはそれしか選択肢のない、当たり前の実務だからね。

それから、これはかなり大仰な話だけど、投資対象である企業の活動とか経済そのものが「複利的」だと言う人も時々いるかな。企業が利益を稼ぐじゃない。それを株主に配当金などで渡さずに、新しい工場を造ったり、新事業に向けたりすることも企業活動における再投資だから、確かに複利的だ。でも、そんな大きな話を我々の資産運用の効果の話に混ぜてしまうのは、まあ……違うよね。

だいたいこんなもんかなあ。「複利効果問題」の議論がわかりにくくなりがちな要素を思いつく限り話してみたけど。
いずれにしても、自分が理解できないことを信じようとする必要はない。人に説明できるくらいに理解できることだけ、シンプルに整理しとこう

以上です。長かったし、難しかったね。次はこの続きを、もっと簡単で実用的な側面から話をするので安心して。

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