「シェールガスと日本企業」(4月13日(土)開催の「シェールガス革命で復活するアメリカと日本」セミナー資料)
日本のLNG輸入は70年代から一貫して増加してきました。天然ガスの大きな特徴は、熱が高いにも関わらず、CO2排出量が石油や石炭に比べて少ないことです。発電コストも他の燃料に比べ安いため、欧米と日本で積極的に使われてきました。欧米では天然ガスを産地からパイプラインで運ぶのが一般的ですが、日本では産地で液化してLNG(液化天然ガス)として輸入しています。ちなみに、日本は世界のLNGの約50%を輸入しており、これを扱う三菱商事、三井物産などの日本の総合商社はLNG取引の世界的プレイヤーです。
天然ガスは埋蔵量も豊富で、可採年数が石油54年に対して、在来型天然ガスが60年以上、シェールガスなどの非在来型が100年以上、合わせて160年から最大250年とあると言われています。技術的に回収可能な天然ガス資源量は、石油天然ガス・金属鉱物資源機構によれば、世界全体で在来型が404.4兆m3、非在来型(シェールガスなど)が230.3兆m3になります。このうち北米に在来型32.2兆m3、非在来型58.3兆m3、アジア太平洋に在来型30.8兆m3、非在来型32.5兆m3、中国・中央アジアに非在来型が36.0兆m3あると言われています。このほか、中東に在来型132.5兆m3、ロシアなど旧ソ連に非在来型38.7兆m3など、在来型、非在来型とも世界中に分布しています。
原子力発電が安全規制でコストアップになり、災害リスクやテロのリスクが大きいことを考えると、LNG火力は大規模電源としては最も安く、最も将来性がある電源と言えるでしょう。後述のように海外に比べて高い日本のLNG輸入価格を是正しようする動きや、日本に沢山ある老朽火力発電所を更新し、競争入札も実施することで、発電コストを更に引き下げようという動きも出てきました。
表1 電源別発電コスト
単位:円/KWH(送電端) (出所:エネルギー・環境会議2011年7月より楽天証券作成)
グラフ1 日本のLNG輸入
(出所:貿易統計より楽天証券作成、数量は左目盛、金額は右目盛)
グラフ2 国別LNG輸入金額
(単位:億円、歴年、出所:貿易統計より楽天証券作成、上位10位に入らない国はその他に含む)
日本のLNGの輸入価格は他国に比べて高く、特に2011年3月の福島第一原発の事故以降、火力発電へのシフトが進むに連れて上昇してきました。これは、日本のLNG輸入価格が原油価格(ドバイ原油)に連動した契約になっており、この期間に原油価格が大きく上昇したためです。ちなみにアメリカの天然ガス価格は需給で決まります。
アメリカの天然ガス価格と日本の輸入LNG価格を同じベースで比較すると、日本は約15ドル/100万BTU、アメリカは約3ドル/100万BTUになり、日米で5倍の差が生じています(グラフ4のように、天然ガス換算しても同じ差になります)。
このように、アメリカの国内価格に対して、日本の輸入価格が割高になっているため、LNGの需要家である電力会社、ガス会社などで、この価格を是正しようという動きが出ています。例えば、東京ガス、大阪ガス、中部電力、関西電力と、三菱商事、三井物産など大手のLNG需要家と大手商社などは、相次いでアメリカの天然ガス先物価格と連動する輸入契約を結びました。アメリカの天然ガス価格と連動することで輸入価格を最大30%引き下げることが出来ると言われています。
グラフ3 天然ガス、LNG価格
(出所:IMF統計より楽天証券作成)
グラフ4 日米の天然ガス価格比較
(出所:IMF統計より楽天証券作成、LNGを天然ガス体積に修正したもの)
また、アメリカのシェールガスを輸入しようという動きも活発になってきました。アメリカは自由貿易協定を結んでいる国以外に対する天然ガス輸出を禁じているため、日本は現時点では輸入できません。しかし、2012年12月にアメリカエネルギー省は、シェールガスの輸出は国益にかなうという報告書を発表しており、近い将来の輸出を見越して、シェールガス権益を獲得する動きが活発になっています。三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、双日、豊田通商の大手、中堅商社が相次いでシェールガス権益を獲得しています。電力会社、ガス会社も獲得に動いています。
天然ガスの液化コストと輸送コストは合わせて6~7ドル/BTUと言われており、現在3ドル台のアメリカの天然ガスを液化して輸入すると、輸入価格は9~10ドル/BTUになる計算です。日本の輸入価格約15ドル/BTUに対して安くなりますので、シェールガスの輸入が実現すると、LNG需要は更に増えると思われます。
また、化学会社でシェールガスを原料にした化学品製造のために、アメリカに現地工場を建設する動きも出てきました。
シェールガスは、これまでの天然ガスに匹敵するほど埋蔵量が多く、技術革新で安く採掘できるようになったため、従来型の天然ガス事業にとってはマイナスになる可能性もあります。実際に、欧米の大手資源会社では天然ガス権益の評価損を計上する会社が出ています。
一方で、安いだけでなく、政情が安定している北米を中心とした国々で生産されることは、日本にとって輸入できるようになれば大きなメリットになります。アルジェリアで痛ましいテロ事件がありましたが、この事件が政情不安地域における日本の資源開発にブレーキをかける可能性は否定できないと思われます。
このため、北米のシェールガス権益を獲得しようとする動きは、これまで以上に活発になると思われます。輸出が解禁されると、需要が多いためガス価格も上昇する可能性もあります。そのため、現在の日本のLNG輸入価格が大幅に下がったり、日本の商社などが現在保有している天然ガス権益の価値が下がるとは限りません。
表2 日本企業が取得した北米のシェールガス・シェールオイル権益
(出所:石油天然ガス・金属鉱物資源機構より楽天証券作成、2012年8月時点のもの)
日本で資源関連といえば、三菱商事、三井物産などの総合商社が筆頭になります。シェールガスの権益は5大商社全てが既に獲得しています。また、輸出解禁を見越して、東京ガス、大阪ガス、東京電力、関西電力などのLNGの大手需要家も権益獲得に動いています。
シェールガスの掘削に使われる部材にクレハのポリグリコール酸が使われています。採掘時に必要な窒素を太陽日酸がアメリカで現地生産しています。シェールガスの運搬容器の補強材には、東レや三菱レイヨンの炭素繊維が使われています。
また、シェールガス開発現場を整備したり、運搬用の道路を作ったりするために、アメリカではキャタピラー、小松製作所、日立製作所などの建設機械需要が増えています。
アメリカの化学産業は安いシェールガスを原料とすることで好業績となっています。三菱ケミカルホールディングスは、アメリカのダウ・ケミカルと提携し、シェールガスを利用した石油化学コンビナートを建設し、2017年に稼動する予定です。
また、IHIはシェールガスから尿素を作るプラントの基本設計業務をアメリカで受注しました。
荏原製作所は、アメリカで建設が活発化している化学プラントの関連機器をアメリカで生産しています。
シェールガスを日本に輸送するには、天然ガスを600分の1に圧縮して液化しLNG(液化天然ガス)を作るプラントが必要になります。日本に持ってきた後は、受入設備、貯蔵設備も必要になります。これらLNGプラントを日揮、千代田化工建設、IHI、三菱重工業などが手掛けています。
LNGの輸送にはLNGタンカーが必要です。川崎重工業、三菱重工業、IHIの子会社が手掛けています。
LNGを使ったガス火力発電所には、規模に合わせてガスタービンエンジン、発電機などが必要になります。ガスタービンエンジンで大型から中小型まで品揃えを持っているのが三菱重工業です。ガスタービンエンジンの世界市場で、米GE、独シーメンスの次に三菱重工業が位置しています。また、中小型発電所や非常用電源に使う中小型ガスタービンエンジンに限ると、川崎重工業、IHIなども手掛けています。
ガス火力発電所の発電機は、日立製作所、東芝、三菱電機などが手掛けています。
東京電力管内にある火力発電所は全部で15カ所、発電機は91基、最大出力の合計は5214.5万kwです。このうち28基、1,174万kwが建設して40年以上経過した老朽火力発電所です。老朽火力発電所は全国にあり、特に東京電力管内に多いです。老朽火力発電所はすぐに壊れるため、頻繁にメンテナンスをしており、稼働率が低く、原発が動かない中で電力不足の要因の一つになっています。
火力発電所の建設費は、新設の場合100万kwにつき約1,000億円ですが、更新だけならこれより安くなると思われます。LNG受入れ基地の建設費は1基約1,000億円です。東電管内の老朽火力発電所を全て更新し、最低1基のLNG受入れ基地を建設するには推定で1兆円前後の資金が必要になりますが、100万kw級の原発1基が約3,000億円ですので、LNG火力発電所は原発よりも割安なのです。
LNGは、権益取得から液化、貯蔵設備、運搬船まで含めると、一つのサプライチェーンを作るのに1兆数千億円かかります。それに火力発電所を加えると大きな投資が動くことになります。しかも、安全な電源で電力不足も解消します。特に東電管内の老朽火力発電所が更新されるのかどうか、更新されるならいつなのかは、三菱商事、丸紅などの総合商社とプラント会社の間で大きな注目点になっています。
外国株式等は、株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。また、為替相場の変動等により損失(為替差損)が生じるおそれがあります。上場投資信託(ETF)は連動対象となっている指数や指標等の変動等、上場投資証券(ETN)は連動対象となっている指数や指標等の変動等や発行体となる金融機関の信用力悪化等、上場不動産投資信託証券(REIT)は運用不動産の価格や収益力の変動等により、損失が生じるおそれがあります。
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※「上場有価証券等」には、特定の指標(以下、「原指数」といいます。)の日々の上昇率・下落率に連動し1日に一度価額が算出される上場投資信託(以下「ETF」といいます。)及び指数連動証券(以下、「ETN」といいます。)が含まれ、ETF及びETNの中には、原指数の日々の上昇率・下落率に一定の倍率を乗じて算出された数値を対象指数とするものがあります。このうち、倍率が+(プラス)1を超えるものを「レバレッジ型」といい、-(マイナス)のもの(マイナス1倍以内のものを含みます)を「インバース型」といいます。
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