アメリカの大統領は、4年に1度の大統領選を経て、民主党又は共和党の指名候補者の中から選出される。指名争いは2016年2月1日アイオア州から始まった。民主党が勝ったら買うべき業種は?共和党が勝ったら買うべき業種は?
米国在住の投資顧問会社マネージング・ディレクター広瀬氏にズバリ!聞いてみた。
11月8日に行われた大統領選挙の本投票では共和党のドナルド・トランプが勝ちました。
ドナルド・トランプは過去に政治家の経験がありません。つまり未知数の人です。
そのことは、一体、彼が大統領として、どのような活躍をするのか、誰も予想できないことを意味します。
投資家は不確実性を嫌がります。トランプ当選のニュースとともにマーケットが下がったのは、それが理由です。
しかし半年や1年先を考えた場合、実際にトランプが株式市場にとって悪い大統領になるか? と言えば、それはそうとは限らないと思います。
トランプが選挙戦を通じて語った公約は、実行に移されるかもしれないし、移されないかもしれません。だから「中国からの輸入品に45%の関税を課す」などのことが必ず実行に移されるとは決めてかからない方が良いです。
いずれにせよトランプは、これまでのしきたりにとらわれず、わが道を行く政治をすると思われます。その意味ではフランクリンDルーズベルト大統領やリチャード・ニクソン大統領に近い采配になるのではないでしょうか?
とりわけドナルド・トランプはリチャード・ニクソン大統領をよく研究していることから、トランプ外交は「パワー・バランス」に基づいた、実利優先の外交になると思われます。
そこでは「お互いにウイン=ウイン」の関係が築けるのであれば、過去のしがらみは乗り越えることが出来るという考えになります。また、お互いにとってメリットが無いのであれば、そんな取引や条約は止める……そういう発想です。
これは必ずしも悪い事ばかりではないと思います。
またトランプは実業界の出身であることから実業界や株式市場にとって良くない政策をゴリ押しするとは考えにくいです。
歴史を紐解くと、新しい大統領が決まった翌日の株価の動きと、一年後の株価の動きは正反対になるケースも多かったです。
ここは慌てず、新大統領の采配を見守りたいと思います。
2016年10月19日(水)に第3回大統領候補テレビ討論会が開催されました。
今回の討論会は、これまでの討論会とは違い、とても厳粛なムードで始まりました。
まず最高裁判事の任命問題が取り上げられ、クリントンは女性問題やLGBT(性的少数者)に配慮する最高裁が望ましいと主張しました。これは民主党が普段主張している、リベラルな価値観に基づいていると言えます。
ところで最高裁判事の任命問題はとても重要な問題ですので少し説明しておきます。
まず米国連邦最高裁は9名の判事から構成されています。アメリカの大統領の任期は4年ですが、連邦最高裁判事には任期というものがありません。つまり一度任命されたら、一生務めるわけです。
このように生涯任期を採用している理由は、判事の意見が、そのときの政治の風向きや保身の動機に左右されないようにとの配慮からです。
現在の9名の判事のうち共和党大統領が任命した判事は5名、民主党大統領が任命した判事は4名でした。
しかし共和党のレーガン大統領に任命された、保守的な価値観を持つスカリア判事が2月に死去したことで、現在、1名の空席が出来ています。
最高裁判事は大統領が指名し、上院が承認するという手続きを取ります。もしクリントンが大統領になった場合で、さらに大統領選挙と同時に行われる上院議員選挙で民主党が過半数を獲得した場合、民主党が推す判事が、この空席を埋めることになります。
その場合、民主党大統領が任命した判事5名、共和党大統領が任命した判事4名となり、形勢が逆転するわけです。
最高裁の持っている力の例として、憲法に関する連邦最高裁の判決は絶対的拘束力を持ちます。また議会が可決した法案を無効にする力も持ちます。さらに軍最高司令官としての大統領の権限を制限することも出来ます。
なによりも連邦最高裁が帯びた最も重要な仕事は、アメリカ合衆国憲法の精神を解釈し、判例を通じて、憲法の「読み方」を明確化させることで論争に決着をつけることです。
大統領候補テレビ討論会の最終回が、この最高裁判事任命問題、ならびに両候補が連邦最高裁判所をどのような存在としてとらえているか? という質問から論争の火ぶたを切ったのは、以上のような背景によります。
この質問は、実は今回のテレビ討論会の司会を務めたクリス・ウォーレス氏が厳選したもののひとつです。クリス・ウォーレス氏は保守系のFOXニュースに所属しています。今回の司会は、過去3回の討論会の司会者の中で、もっとも抑制の効いた、思慮深い司会であり、「中味のある」討論の実現に大きく貢献したと思います。
そのような「お堅い」討論会のムードは、このところお下劣な発言で品位を落としていたトランプ候補が、これ以上、「大統領にふさわしくないキャラだ」という攻撃を受けずに済んだという点で、トランプ候補に有利に働いた気がします。
トランプ候補は、個人攻撃の手が緩んだチャンスを生かし、「共和党候補らしさ」を前面に押し出すことで、これまでトランプを嫌ってきた保守的な共和党支持者からの得票機会を増やしたと言えるかもしれません。
このように今回の討論会ではトランプがそれなりのパフォーマンスを示したので、支持率という面では劣勢であるものの、「まだどちらに転ぶかわからない」という不確実性は残っていると思います。
2016年10月9日(日)に第2回大統領候補テレビ討論会が開催されました。
今回の討論会の直前にトランプの性的発言の動画がネットに流出しました。これは2005年に『アクセス・ハリウッド』というテレビの娯楽番組を収録している際、ロケのバスの中でのトランプの下品な会話が、隠し撮りされていたものです。
会話自体はトランプが弁解したように「あれはいわばロッカールーム・トークにすぎない」ということで、よくありがちな男子更衣室での男同士の会話に過ぎません。ただトランプの口調は、精神疾患を想起させるほどしつこく、病的でした。
そんなわけで今回の討論会は、最初からこの性的発言に質問が集中し、最初の10分間はトランプも顔色を失い、消え入るような声で自己弁護する立場に追い込められました。
有権者は難解な政策論議は理解できないので、候補者の自信に満ちた態度や、テレビ映りの良さなど、表面的な事で判断しがちです。その意味では今回のトランプのパフォーマンスは悪かったように思います。
ただ有権者は格差社会に不満を持っており、貿易や移民政策をスケープゴートにしたい気持ちに駆られており、さらにエスタブリッシュメント(支配階級)に対して敵意を抱いています。
その点、トランプは「白人、低所得者層、低学歴層」の救世主という旗色を今回の討論会でも明確に打ち出し、コアの支持層からの離反を食い止める事には成功しているという印象を受けました。
つまり今回のディベートでは、明らかにトランプが守勢に立たされたわけですが、「これで勝負は決まった」というようなKOパンチを喰うことだけは回避できたというわけです。
2016年9月26日(月)に第1回大統領候補テレビ討論会が開催されました。テレビ討論会は大統領候補同士のディベートが3回、副大統領候補同士のディベートが1回の、合計4回予定されています。
今回のディベートを見終わった視聴者の反応を聞くと「クリントンの方が優勢だった」という声が多かったです。しかし何が飛び出すかわからないトランプに、今回、大きな失言が無かったことで、大統領レースは引き続き接戦が続くと予想されます。
まずクリントンですが、さすがに場数を踏んでいるだけあって、終始、余裕を感じさせました。討論会の前は、彼女の健康に関し、色々な憶測が飛んでいましたが、そうした懸念は今回のテレビ討論会で払拭されたと思います。
一方トランプの方は視聴者全員に好感を与えることは最初から諦め、実際の本投票でカギを握るオハイオ、ミシガン、イリノイ州などの有権者を意識したピンポイントのメッセージを強調しました。
具体的には北米自由貿易協定(NAFTA)が中西部の製造業の空洞化を招いたとし、保護貿易主義を提唱しました。
アメリカ全体で言えば貿易は経済にとってプラスであることは間違いありません。しかし選挙に勝つという視点からは、激戦州の有権者にアピールすることが大事であり、その点、トランプは周到に準備されたメッセージを出したと評価できるでしょう。
トランプは「民主党を有利にするため、FRBは、わざと金利を低く抑えている」とジャネット・イエレン議長を名指しで批判しました。もしトランプが大統領になった場合、イエレン議長の任期は2018年2月で切れるので、別の議長に取り換えられると思います。
7月25日から28日までフィラデルフィアで開催されていた民主党大会が閉会しました。
民主党大会は、直前に民主党全国委員長が辞任するなど、波乱の幕開けでしたが、後半になるほどまとまりを取り戻しました。
ヒラリー・クリントンのアクセプタンス・スピーチは、国民の団結の重要さを強調したものでした。
格差社会、相次ぐテロなど、国民を不安にする出来事が多い昨今、わざと不安を煽り、世論を分断することで選挙戦を有利に進めようとするドナルド・トランプ候補に対し、ヒラリー・クリントン候補はフランクリン・ルーズベルト大統領の言葉を引用し、「われわれが恐れなければいけないのは、不安心理だけだ」と訴えました。
またヒラリー・クリントン候補は、最後まで民主党の指名を争ったバーニー・サンダース候補の主張を採り入れ、学資ローン返済に窮している人たちへの救済措置を約束しました。
景気対策に関しては、予想通りインフラストラクチャへの投資を約束しました。
共和党大会について トランプは「安全」、「繁栄」、「法と秩序」、「アメリカ優先」のメッセージを打ち出した。
四日間に渡ってオハイオ州クリーブランドで開催されていた共和党大会が7月21日に閉幕しました。共和党は正式にドナルド・トランプを公認候補として推すことを決め、トランプはその推挙を受けて立つアクセプタンス・スピーチを行いました。
トランプのスピーチの少なからぬ部分は、1968年の大統領選挙の際のリチャード・ニクソンのメッセージを参考にしています。
当時のアメリカはベトナム戦争を戦っていただけでなく、マーチン・ルーサー・キング牧師とロバート・ケネディ上院議員が相次いで暗殺され、全米のいたるところで暴動が起き、社会は緊張に包まれていました。
そこでニクソンはベトナム戦争を早期に集結させ、アメリカを安全にし、アメリカの威光を取り戻すことを公約しました。
トランプも「安全」、「繁栄」、「法と秩序」を前面に打ち出しています。またトランプはグローバリズムではなく「アメリカ優先」を提唱しています。その立場から、トランプはNAFTAとTPPに反対する姿勢を打ち出しました。
さて、今日のアメリカが置かれている状況は、当時の状況とは少し異なります。
まず当時アメリカはベトナムに50万人にのぼる兵士を派遣しており、そのうち1万7千人が命を落としました。
これにくらべて現在、イラクとアフガニスタンに居るアメリカの兵士は、合計して1万5千人であり、年初からこれまでに命を落とした兵士は、わずか12人に過ぎません。
ニクソンは「アメリカの名誉を保ちながら早くベトナム戦争を終結させる」ことを公約に盛り込むことができました。
しかしトランプの場合、イスラム国という、交渉すら出来ない敵を相手にしなければなりません。
しかもイスラム国に触発されてテロを行う活動家は、米国や欧州の中に居て、有権者はその脅威を身近に感じています。
さらに人種間の争いを引き金に、白人警察官を狙い撃ちにした狙撃事件が相次いで起こりました。これは単なるテロではなく、法と秩序に対する挑戦です。
ニクソンの時代と今日では、アメリカの人口動態も大きく違っています。当時、マイノリティーは米国の人口の17%でした。それが今は38%になっています。
ギャラップの調査によると、トランプを嫌う有権者は59%、クリントンを嫌う有権者は50%にのぼっています。これに対して、当時ニクソンを嫌う有権者は28%に過ぎませんでした。
当時「政府は信用できる」と答えた有権者は62%も居ましたが、現在は19%にすぎません。
このようにニクソンが大統領選挙を戦った当時と今日では、かなり状況が異なるのです。
それを踏まえた上で、トランプが打ち出した「安全」、「繁栄」、「法と秩序」、「アメリカ優先」などのメッセージが有権者に届くかどうか注目したいと思います。
2,780票
1,876票
1,447票
(※スーパー・デリゲーツを含む、6月10日現在)
(※6月10日現在)
民主党候補者の前国務長官ヒラリー氏は6月7日時点で必要代議員数に達し、候補指名を確実にした。候補者のサンダース氏は7月25日の民主党大会まで選挙運動を続ける意向を示した。
共和党候補者の実業家のトランプ氏は5月31日時点ですでに必要代議員数に達し、候補指名を確実にした。
経歴の面から、大統領になる資格が充分にある。最初の女性大統領の登場を願う有権者も多い。 2008年に次ぐ2度目の出馬となる。根気強い働きかけの結果、ヒスパニックや黒人からも支持されている。 |
白人低所得者層から圧倒的支持を受けている。 アメリカ人の3分の2は「経済は裕福層に有利に働くように出来ている」と感じている。またアメリカ人の7割が「政治家は庶民のことを気にかけてくれない」と感じている。そのような疎外感をトランプ候補は利用している。 |
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大衆と「つながる」のが下手。「クリントン王朝」のような世襲のイメージが嫌気されている。 オバマ政権が2期つづいたことで、民主党出身の大統領に国民が飽きている(→経験則的には覆しにくい)。 |
女性、高所得者、高学歴者、ヒスパニック、黒人の有権者から不人気。 最近のアンケート調査ではアメリカ国民の3分の2がトランプ候補にネガティブなイメージを抱いている。このイメージの問題を改善しなければ、大統領に選ばれるのに必要となる約6,500万票を確保するのは難しい。 |
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ヒラリー・クリントン候補が勝ち、 下院で民主党が勝てば?
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ドナルド・トランプ候補が勝ち、 下院で共和党が勝てば…?
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ヒラリー・クリントン氏は防衛に関してはタカ派で知られている。従って防衛産業は恩恵を受けると思われます。
ティッカー | 銘柄名 | 主要取引所 | 業種 | 情報 |
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LMT | ロッキード・マーティン | NYSE | 防衛 | 株価 企業情報 チャート |
USCR | USコンクリート | NASDAQ | 素材 | 株価 企業情報 チャート |
トランプ候補が勝った場合、すぐにFRBに監査(audit)が入る可能性がある。これは金融市場にとって、とても居心地の悪い展開。オバマケアが見直しされる可能性もある。その場合、ユナイテッド・ヘルスケア(UNH)やテネット(THC)に代表される、ヘルスケア・サービス・プロバイダーの株が下がるリスクがある。アップルをはじめ海外に利益の多くを留め置いている企業は、一律10%の財産税が課せられるリスクがある。ファイザー(PFE)、フォード(F)など工場を海外移転した企業についてはペナルティとして35%の関税をかけられる恐れがある。トランプ候補は公共工事が大好きで、自分はアイゼンハワー型の景気刺激策をやると公言している。それはインフラストラクチャ関連株にとってプラス。
ティッカー | 銘柄名 | 主要取引所 | 業種 | 情報 |
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GVA | グラナイト・コンストラクション | NYSE | 建設会社 | 株価 企業情報 チャート |
CAT | キャタピラー | NYSE | 建設機械 | 株価 企業情報 チャート |
JEC | ジェイコブズ・エンジニアリング | NYSE | 建設会社 | 株価 企業情報 チャート |
FLR | フルアー・コープ | NYSE | 建設会社 | 株価 企業情報 チャート |
KBR | ケー・ビー・アール・インク | NYSE | 建設会社 | 株価 企業情報 チャート |
VMC | ヴァルカン・マテリアルズ | NYSE | 建設資材 | 株価 企業情報 チャート |
MLM | マーチン・マリエッタ・マテリアルズ | NYSE | 建設資材 | 株価 企業情報 チャート |
※各候補者の情報および選挙に関するコメントは広瀬隆雄氏のコメントを基に作成しています。2016年5月時点の情報を記載しています。
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