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特集レポート:大震災後の日本経済、日本企業と株式市場

この度の東日本大震災で被災された方々に対して心よりお見舞い申し上げるとともに、亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。一日も早い復興をお祈りいたします。

プロフィール紹介

楽天証券経済研究所 アナリスト 今中 能夫

楽天証券経済研究所 アナリスト 今中 能夫

1961年生まれ。1984年に岡三証券においてアナリストとなり、アナリスト歴20年以上。インターネット、ソフトウェア、エンタテインメントを中心にテクノロジー、サービスを幅広くカバー。
企業調査レポートや、毎週発表される前週時点の信用評価損益率を解説。また、決算発表予定銘柄についてもコメントしています。

1.はじめに

3月11日金曜日、東北沖を震源地とするマグニチュード9.0の巨大地震が東北から関東地方を直撃しました。この地震によって現時点で約2万8000人の死者、行方不明者が出ています。間違いなく、戦後最大級の巨大災害となりました。

この大震災の人的、物的被害、企業の被害の全容は未だ明らかではありません。本稿ではこれまでに明らかにされた事実を元に、大震災後の日本経済と日本企業、株式市場の動きを探って行きたいと思います。

まず、日本企業を取り巻く主要テーマ、企業業績、電機、自動車等の輸出産業の動向、インフラ産業の動向、業界再編の動きを概観します。次に、大震災からの復興と、災害に強い国を造るために何が必要かを考えてみたいと思います。

最後に、参考銘柄を挙げます。

2.大震災前後の日本経済と日本企業

1 企業業績の動き

大震災の前までの企業業績の動きを見ると、2011年3月期第3四半期(3Q)決算は、輸出製造業中心に概ね良好でした。3Qの営業利益の水準が、2008年9月のリーマンショック前の水準(2009年3月期1~2Q)を回復するか、それに近くなる企業が増えました。日立製作所のように、過去最高益更新を目前にする企業も出てきました。

震災前に2011年度の企業業績を見る上での主要テーマと考えられたものは、スマートフォンとタブレットPC3D(ゲームと映画、ゲーム機とテレビ)、エコカー(特に電気自動車)、インフラ(海外だけでなく、国内インフラも)、防衛、新日鉄=住金の合併計画のような大型合併ブームです。また、懸念材料は、日本でのエコポイント(2011年3月末で終了)の反動でした。

一方、中国、インドなど新興国経済は、成長率は2011年よりも鈍化するものの、先進国に比べれば高い成長率が維持されると思われていました。

また、2011年の焦点はアメリカ経済の回復でした。雇用関連の指標で良いものが出ており、大規模金融緩和の効果が表れてきたと思われます。一方で、欧米で利上げムードが起りました。そのため、対ユーロでは円安になりました。日本の輸出企業にとってはプラスになりますが、一方で欧州経済に不安が起こるマイナス要因にもなります。

大震災後の企業業績の動きはまだ定かではありません。4月下旬から始まる主要企業の2011年3月期決算に向けて、被災状況の確認、経済的損害額の確定作業が行われていると思います。2012年3月期業績見通しも含めて2011年3月期決算は極めて重要なものになります。

輸出企業の重要性は変わりません。というより、重要性はより一層高まっていると思われます。これは、景気ドライバーとしての輸出産業の重みが増していることと、雇用対策の面からです。後述しますが、私は政府が復興計画のひとつとして何らかの輸出振興策を掲げると考えています。

また、日本国内で注目しなければならないのは、震災からの復興に関わる企業です。具体的には大手から地方の建設会社、電気工事、電話工事会社、建設機械メーカー、住宅関連メーカー、鉄鋼メーカー、建材メーカーなどです。

一方で、原子力関連事業には冬の時代が到来しそうです。ただし、日本には原子力専業会社はなく、日立、東芝、三菱重工の原子力3社は代替の火力発電所の建設や休止火力発電所の復旧で忙しくなると思われます。

大型合併ブームは続くと思われますが、金融については東京電力の経営問題が大きくなりつつあり、注意が必要でしょう。

注:(大震災前の企業業績動向と主要テーマについては、楽天証券のネット勉強会「2011年3月期第3四半期決算から見たテーマ別有望株」をご覧ください。)

表1 2011年3月期3Q決算-営業利益:1

表2 2011年3月期3Q決算-営業利益:2

表3 主要輸出企業の為替感応度


出所:各社資料、日経速報ニュース2011年3月4日より楽天証券作成。
注1:キヤノンは実績は2010年12月期、予想は2011年12月期。
注2:任天堂は、表記の営業利益に対する為替感応度以外に、外貨建て預金等の外貨建て債権に対する為替差損益がある。

2 輸出産業の動き:電機セクター

1) スマートフォンとタブレットPC

表4 スマートフォン、タブレットPC、PCの世界出荷台数予測


単位:万台
出所:携帯電話、スマートフォンは実績はガートナー、予想は楽天証券。タブレットPCはディスプレイサーチ、パソコンはIDC。
注:携帯電話にはスマートフォンを含む。パソコンにタブレットPCは含まない。

表5 主要電子部品の電子機器搭載個数の推移


単位:万台
出所:会社資料とヒアリングより楽天証券作成

大震災前は、国内、海外ともに、スマートフォンとタブレットPCがブームでした。しかし、大震災後は、国内ではスマートフォンブームが短期的にある程度腰折れすることを覚悟しなければならないと思われます。ただし、タブレットPCはアップルの「iPad2」が震災を理由として日本での発売が延期されましたが、現行のiPadが人気化し、既に国内供給分は全て売り切れました。一説には、夏場の計画停電に備えて、電池での長時間駆動が可能なタブレットPCを準備する動きがあるそうです。

また、海外ではスマートフォンとタブレットPCは引き続き大きな伸びが見込めそうです。業界のコンセンサスでは、スマートフォンの2011年暦年の伸び率は50%増です。iPhone対Androidの様相が濃くなっています。タブレットPCも伸びると思われます。2台目パソコン、ネットブック、モバイルPCがタブレットPCに取って替わられる最初の年になりそうです。

一方で、パソコンの側は、高速でかつ省エネ、高機能液晶(有機ELや3D)、大画面でかつ軽量化、バッテリーの長時間化などに取り組む必要があります。

この結果、スマートフォンとタブレットPCには、高機能電子部品、超小型電子部品が、1台当たり装着個数の増加を伴って装着されることになります。日本の総合電子部品メーカーが重要です。半導体(フラッシュメモリー、DRAM)や小型液晶パネル、小型の裸眼3D液晶パネルの需要も増えそうです。

2) 3D

一方で、3D関連は映画を除いて2011年度も最初は苦戦が予想されます。2010年は3D元年でしたが、急速な立ち上がりはありませんでした。アメリカでは2010年秋、冬にサムスン電子によって3Dテレビが大きく値引きされ販売されました。

足元のテレビ市場を見ると、2011年1-3月期は日米欧で需要が失速している模様です。販売数量を確保するための値引きもあると思われます。3Dテレビも同様で、3D機能搭載機種が増えているため、ハードウェアとしての3Dテレビはどこにでもある家電商品になりつつあるようです。ソニー、パナソニックなど日本のテレビメーカーのほとんどは赤字ですが、2011/3期の赤字が想定よりも拡大する懸念があります。また、デジタルカメラなどのデジタル家電製品も大手メーカーの在庫処分の影響で不調です。

3Dテレビ不振の大きな理由はコンテンツ不足です。映画館で上映される3D映画は増えましたが、ブルーレイディスク(BD)で家庭で鑑賞できるコンテンツは今も数タイトルしかありません。3Dゲームも、11月にソニーから「グランツーリスモ5」が発売されて、やっと本格的な3Dゲームが出るという状況です。

このコンテンツ不足は2011年から大きく改善される見込みです。4月以降、「アバター」「アリス・イン・ワンダーランド」など優良作品の3D対応BDが発売されると思われます。これ以外にも3D対応のBD作品が増えると思われます。3Dゲームも、2月発売の「キルゾーン3」(SCE)など3D対応ゲームが増えています。

もっとも3D関連については、遊びが主体だけに、日本の今の状況では立ち上がりは厳しいものがあるかもしれません。実際に、3Dブームの起爆剤になると期待された任天堂の「ニンテンドー3DS」は、2月26日の発売当初は品切れだったものの、発売から約2週間で店頭で入手できるようになり、今ではネット販売でも普通に購入できるようになりました。もともと、ニンテンドー3DSは発売当初のソフトラインナップのほとんどがサードパーティ製であり、本命の任天堂製が「nintendogs」のみという状況なので、立ち上がりが鈍いのは仕方がありません。また、任天堂製ソフト第2弾の「スティールダイバー」も3月17日の発売が延期されました。3DSはアメリカでは3月27日日曜日に発売されましたが、品切れになっていません。盛り上がるにはソフトの充実を図る必要があるため、少し時間がかかると思われます。また、PS3も昨年までの勢いはなくなっています。これも今後のソフト次第と思われますが、今は大震災のネガティブな影響が国内外で強くなっており、ゲームの世界は盛り上がりにかけるものになっています。

3Dの分野で唯一期待できるのは映画です。今年は昨年以上に優良な3D映画が増え、それが上映後にBDディスクになり、中長期的に3Dテレビ需要を押し上げる好循環が生まれると思われます。

このように、テレビと3D関連、あるいは民生用エレクトロニクスとゲーム関連の新年度は難しいスタートとなった模様です。関連企業については、純粋な国内企業よりもグローバル企業、完成品メーカーよりも部品メーカーのほうを選好したいと思います。

表6 ハリウッドメジャー6社が予定する主な3D映画


出所:日経エンタテインメント2010年6月号より楽天証券が修正、追加。公開時期は一部推定。
注:上映スケジュールは日本でのもの。

グラフ1 携帯型ゲーム機の世代交代図
(年度ベース販売台数、単位:万台、出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券)

3 輸出産業の動き:自動車セクター

1) 自動車市場の動き

大震災前は、国内がエコカー減税の反動で販売台数が減少する中、中国をはじめとした新興国市場の好調が続き、アメリカ市場が回復に向かうという状況でした。アメリカの回復は、日本メーカーにとって国内の減少を補うものでした。

ただし、大震災でこの成長パターンは崩れてしまったようです。今回の大震災では、日立製作所の子会社である日立オートモティブシステムズの佐和事業所(茨城県ひたちなか市)、ルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)が被災しました。前者はエンジン制御システムを生産しており、25日に一部を除き生産を再開しました。後者は自動車用マイコンを生産しており、6月に生産再開の予定です。ルネサスエレクトロニクスの自動車用マイコンは世界シェア約30%の重要部品であり、これが入手できないために多くの自動車メーカーが4月上旬には国内生産と海外生産の一部を停止しました。4-6月期の日本の自動車生産台数は例年の半分程度になると思われます。この結果、例えば本田技研は新車を発売できない状況になっています。

また、日本製自動車部品の欠品は、アメリカの自動車生産にも影響しているため、アメリカの回復に水をさすことになりそうです。中国では新車販売台数が鈍化してきました。

2) エコカーは商用車に有利?

一方、エコカーの世界では、興味深い動きがあります。

2009年7月に三菱自動車の「アイミーブ」が法人向けに発売されました(2010年4月からは個人向け納車開始)。また、2010年12月に日産自動車の「リーフ」が納車開始となりました。日本は電気自動車の時代を迎えました。

これまでは、エコカーの主流はハイブリットカーで、電気自動車は電池の能力とコストに問題があるため、普及は5~10年先という意見が支配的でした。ただし、ハイブリットカーがエコカーの主流であることは違わないものの、電気自動車も普及ピッチが速くなる可能性があります。

電気自動車の難点は航続距離が実質100km前後と短いこと、電池のコストが高く(現在も推定200万円以上)、補助金が無ければ一般の消費者が購入できないことです。ただし、100ドル以上の原油価格が長期化すれば、月間の電気代が数千円で済む電気自動車の優位性が高くなります。政府が適切な補助金を出せば、向こう2~3年で電気自動車が日本で本格的な普及期に入る可能性があります。

また、最近重要な動きが出てきました。三菱自動車がアイミーブをベースにした商用車「ミニキャブミーブ」を2011年中(12月?)に発売します(電池は東芝製リチウムイオン電池SCiB)。4月1日から予約を開始しました。2車種あり、航続距離は公称100kmと150km(実測で推定50~60km、80~90km)、価格は補助金を考慮した実質負担金が170万円または205万円になる見込みです。アイミーブの公称160km(実測80~100km)よりも航続距離は短いですが、ミニキャブミーブはヤマト運輸の配送車を想定して設計されており、1日当たりに想定される平均走行距離が20~40kmですから、航続距離が短くでもよいのです。

また、毎日40km程度走っても電気代が1台当たり毎月数千円です。初期コストには補助金が付き、ランニングコストはガソリン車の数分の1です。電気自動車は商用車に向いていることがわかってきました。

また、震災後はエコカーに対する見方が2分されているようです。大震災のガソリン不足を見ると、燃費の良いハイブリットカーや軽自動車、小型車の低燃費車が災害には有利と見る見方がある一方で、航続距離が短くても、電気があれば家庭用のコンセントからでも使える電気自動車にも普及の余地があるようです。このような考え方から、三菱自動車と日産自動車は各々89台、65台のアイミーブとリーフを被災地の自治体に貸与しました。電気自動車がどこまで使えるか注目されます。

グラフ2 各国の新車販売台数
(単位:台、出所:米国はオートデータ、中国は中国汽車工業協会、日本は日本自動車販売協会連合会、日本は軽含む乗用車のみ)

グラフ3 各国の自動車販売台数:前年比(単位:%)

グラフ4 ハイブリットカーの国内販売動向
(単位:台、月次、出所:日本自動車販売協会連合会より楽天証券作成、注:フィットハイブリットは2010年10月発売、グラフのフィットはハイブリットとガソリン車を含む)

4 インフラ

1) 原子力発電

3月11日の東日本大震災による東京電力福島第一原発の事故の影響で、日本の原子力の信用は、国内的にも国際的にも、失墜したと考えてよいでしょう。現場で事態を解決するために奮闘なさっておられる東京電力とその関連会社、他の電力会社と関連会社から応援に来ておられる方々、救急隊、警察、自衛隊の方々には本当に頭の下がる思いです。日本で稼働中の原発については、災害に対する防護策を徹底することで稼動を続けることになると思われます。そうしなければ、電力供給に大きな支障がでてしまいます。しかしおそらく、日本で建設中ないし計画中の14基の原子炉については、当面建設凍結となると思われます。世界市場でも、中止が相次いでおり、この動きは止めようがないと思われます。

原子力に対する大きな疑問が起こってくるとしたら、悪い影響を受けるのはまず東芝です。大事故の発端になった福島第一の1号機の主契約者はGEですが、2号機はGEと東芝、3号機は東芝、4号機は日立です。日本の機器メーカーとしては、東芝が最もかかわりが深いと言えます。また、2006年に4000億円以上をつぎ込んで世界最大の原子炉メーカー、ウェスチングハウス(WH)を買収しました。WHはこれまでに112基の原発を建設しており、この保守だけで年間売上高5000億円、営業利益率7~8%の企業ですが、新規の原発建設は当面は困難になってきたと思われます。

一方で、日立への影響は東芝よりは軽い可能性があります。福島第一4号機は定期検査で停止中でした。また、国内では東芝よりもシェアが低く、国際的にはGEと提携していますが、大きくはありません。原子力事業が仮に無くなっても日立全体への影響はかなり小さいと思われます。逆に、原子力発電所の新増設中止を補うための火力発電所等の電源開発が新たな重要事業になると思われます。

2) 代替エネルギー

また、代替エネルギーの開発には、相当資金をつぎ込んでいかなければならないでしょう。災害が多く風向きが一定でない日本には風力は向かないため、太陽電池、高効率火力発電が中心になると思われます。戸建て住宅、マンション、商業ビル、工場の屋根という屋根、空き地という空き地に太陽電池パネルと蓄電池のセットを設置することを、本気で考えなければなりません。この分野と、省エネ技術の開発に対して補助金を強化する必要があると思われます。

3) 復興需要

今回の大地震と大津波で大きく損なわれた関東から東北の復興のためには、建設機械も重要になります。また、被災地だけでなく、全国で災害に備えるために電力設備、鉄道、通信設備等の強化も必要になると思われます。これについては後述しますが、今回の大震災では被災地だけでなく、東京でも鉄道が止まりました。日本の公共投資の推移を見ると、日本全国でインフラが弱体化しているのではないかと考えざるを得ません。

5 防衛

自衛隊と日米同盟の重要性については、改めてコメントする必要はないと思われます。自衛隊は陸海空3自衛隊ともより一層増強する必要があるでしょう。また、今回の大震災で心強かったのが、アメリカが原子力空母「ロナルド・レーガン」を中核とする一個艦隊をただちに派遣してくれたことです。これが被災地救援のために多大の貢献をしてくれたことには疑いのないところですし、日本の防衛の穴を埋める助けにもなったと思われます(防衛の問題についてはいずれ項を改めて論じたいと思います)。

6 東京電力の経営問題が電力自由化と金融業界再編に結びつく可能性

1) 大震災前の業界再編ブーム

2月3日、新日本製鐵と住友金属工業は2012年10月に経営統合すると発表しました。公正取引委員会の審査が通れば、世界第二位の鉄鋼メーカーが誕生します。この合併は、実現すれば日本経済に非常に大きな前向きなインパクトを与えると思われます。大震災で動きが緩やかになる可能性はありますが、化学、自動車、電機、そして金融への飛び火も有りうると思われます。

表7 世界の鉄鋼メーカーの粗鋼生産量ランキング(2009年)


単位:万トン
出所:日経新聞2011年2月4日より楽天証券作成。

表8 両社の情報システム会社


出所:日経新聞2011年2月10日より楽天証券作成。
注:アイエス情報システムは日本IBMと住金の合弁会社。

表9 財務アドバイザー
(2/28付け日経新聞による内定会社)

表10 主要証券会社の営業収益と預かり資産


単位:億円
出所:日経新聞2011年2月27日

2) 震災後の東京電力の経営問題

天災か人災か:震災後大きな問題になってきたのが、福島第一原発の事故に伴う東京電力の経営問題です。

福島第一原子力発電所の事故は、深刻な状況が続いています。事故の原因と責任の所在がどこになるのかは、東京電力の補償問題と経営問題とも絡めてこれから議論されると思われます。ただし、福島第一の北に位置する東北電力女川(おながわ)原発は、主要建屋を海抜約15mに設置しており、津波の被害を免れました。女川原発では津波の想定高さを9.1mとし、地盤の強さも考慮したため緊急停止で済みましたが、福島第一の津波の想定高さは5.6mとより低いものでした。東京電力は今回の被害を「想定外」の天災としているようですが、すぐ近くにより厳しい想定をして、安全を保った原発があることを考えると、東京電力の責任は免れないと思われます。ただし、福島第一を襲った津波の高さが14~15mであること、原子力安全保安院が原発の安全対策に不備があったことを認めていることから、賠償責任の一部が免責されて政府が請け負う可能性もあります。

もっとも、この高さの津波ならば女川原発は少なくとも津波の被害は受けなかったことになりますから、東京電力の責任は免れがたいのではないかと思われます。この点は、今後の問題です。

東京電力が賠償すべき金額はいくらか:当面は東京電力が補償すべき損害額がどの程度になるかが焦点になります。

福島第一原発の事故では、周辺半径20kmまで住んでいる住民に対して避難勧告が出されています。4月11日には、従来20~30km圏内で自主避難となっていた地域の大部分を緊急時避難準備区域とし、そこから離れているにも関わらず放射線線量が高い一部地域を計画的避難区域としました。風評被害も出ています。原子力損害賠償法によれば、原子力事故に対する事業者の無制限の賠償責任を認めながらも、1200億円を超える損害額が生じて、それを事業者は支払うことができない場合は国が必要な支援を行うとしています。

東京電力が賠償すべき損害額がいくらになるかまだ定かではありませんが、福島第一から半径20km圏内に住んでいる人が約8万人、半径30km以内がとそのすぐ外側で風評被害を受けている自治体の人口が合わせて約54万人です。一世帯当たりの休業補償、長期間立ち入り禁止になった場合住めなくなった家の買い取り、福島、茨城両県への農業漁業への補償(風評被害を含む)を含めて最低で1兆5000億円から2兆円、農業、漁業への補償に栃木、群馬、千葉を入れると3兆円弱、更にこれに土壌改良費用や福島、茨城両県への製造業、流通業への補償を考慮すると、4兆円から最大7兆円になると大雑把に試算されます。

ちなみに、福島、茨城両県の農業、漁業生産額は2009年で計約6900億円、これに栃木、群馬、千葉を加えると約1兆6000億円、県内総生産は福島県が約7兆8000億円(2007年、製造品出荷額が約6兆1000億円)、茨城県が11兆5000億円(同、2009年製造品出荷額9兆7000億円)です。これら経済の数十%に被害が出ていると思われますので、想定される損害額の大きさが理解できるでしょう。

東京電力の財務内容は?:一方で、国は東電を免責するつもりはない模様で、東電が払える限界まで払わせる意向だろうと思われます。というよりも、復興予算を控えている国に余分な金はありません。もし、一部の雑誌等で言われているように、巨額の公費(税金)負担が東電問題で発生するようであれば、東日本大震災の復興計画に財源面で支障をきたす可能性もあります。この点は、今後注意を怠れません。

ここで東京電力のキャッシュフローを見ると、年間減価償却費は約7000億円、手持ち現金と有価証券は約3兆1000億円(うち2兆円は新たな借入金)ですが、経常的に必要になる設備投資が年間約6000億円、原発を代替するための火力発電所用燃料費が年間で新たに5000~8000億円、火力発電所の増強に約1000億円かかりますから、今年度に必要な社債償還と長期借入金の返済計7500億円と社債、借入金の利払い(2010/3期で約1300億円)を支払うと、最小ケースの賠償金1兆5000億円~2兆円を支払うことが難しくなる可能性があります。

また会計的にみると、東京電力の株主資本は約3兆円ありますが、2012年3月期に予想される最終赤字額が電力値上げが認められない場合5000億円~1兆円以上になると思われます(石油火力増設の燃料代など)。また、繰り延べ税金資産が2010年12月末に約4500億円ありますが、これの取り崩しの可能性があります。賠償金の額によっては、今期中に株主資本も厳しくなる可能性があります。

株主と社債保有者はどうなるのか:このように見ると、政府との責任分担の議論は出てくるでしょうが、東京電力の経営は相当厳しいと言わざるを得ません。会社は株主のもの(会社の所有権は株主にある)ですから、一般論で言えば、東京電力の杜撰な経営を長年放置してきた株主の責任は免れないことになります。なお、東京電力という会社が存続することと、株主の権利が保持されるかどうかは全く別問題ですので、注意が必要です。

また、東京電力債(2010年12月末残高約5兆2000億円)は一般担保付社債であり、賠償金を含む他の債権に優先して弁済を受けることができるものです。ただし今回の場合は、極めて大規模な経済的被害と国際的な広がり持つ環境に対する被害が生じています。損害賠償請求が国内からだけ来るとは限りません。その場合、多重債務問題や大規模な環境汚染の原因企業に融資した銀行に対して主張される「貸し手責任論」が台頭するかもしれません。そうなると裁判が必要ですが、銀行や社債保有者が一定の債権カットに応じざるを得ない場合もないとはいえない可能性があります(あくまで可能性です)。

3) 東京電力をどうするかという問題と電力自由化の可能性

東京電力という存在と、その株主、社債保有者の地位がどうなるかは、国が東京電力を国有化するかどうか、国が電力の供給体制をどう考えるか、あるいはどのようなスキームでそれを行うかにもよります。予想される資金繰りの苦しさを見ても、東京電力の社会的信用、ブランドが既に崩壊していることを考えても、東京電力の立場は厳しいものです。例えば、東京電力が保有する原発、緊急停止中の福島第二、運転中の柏崎刈羽を、そのまま東電管理とすることの是非は遠からず問われることになるかもしれません。

まとめると、賠償額が上述の試算のように大きな金額になった場合、これまで見てきたように二つの方策があります。一つは、東京電力を政府が公費(税金)で支援することであり、この場合、政府の支出は数兆円になる可能性がある一方で、東京電力の株主や社債保有者の責任はおそらく問われないでしょう。また、政府の支出が増えると、復興に資金面で支障を来たす恐れがあります。これは日本の経済成長に関わる問題です。

もう一つは、東京電力自身が賠償金を支払うもので、この場合、賠償金額によっては東京電力は発電所や送電設備を含む資産売却をして賠償資金を捻出する必要があるかもしれません(法律の改正、あるいは特別立法が必要ですが)。ちなみに、電気事業固定資産は約7兆8000億円です。資産売却を行って、株主責任や社債保有者の責任を問えば、東電は相当程度の賠償金を支払える計算になります。

もし政府が法律、制度を改正して発電設備を含む資産売却を認めるならば、全国10電力会社を中心とする日本の電力供給体制が大きく変わることになります。つまり、電力自由化です。東電管内の電力供給は、今は法律と制度上東京電力が行っていますが、絶対的に東電でなくてはならないというわけではありません。

このように政府の考え方一つで、東京電力と日本の電力供給体制は大きく変わる可能性があります。

金融市場と日本経済への影響:東京電力は多くの株主(約61万人)と社債保有者を持ち、金融市場への影響も大きい会社です。東京電力の先行きと国の関与のあり方に関しては不透明感が強く、厳重な注意が必要でしょう。また、この東京電力の経営問題がもし電力自由化に結びつくとしたら、金融再編に結びつく可能性もあります。

今の政府の財政事情を考えると、もし一部で主張されているような東京電力に対する政府の全面支援が実現してしまうと、上述のように、東日本の復興にまわす資金は大幅に制限されかねません。甚大な被害が出ていることが明らかになりつつある被災地に投入する資金が不足する事態になりかねないのです。そうなれば復興は先送りとなり、それは国力の低下に結びつくでしょう。東京電力の経営問題は、最終的に復興の成否と日本経済の将来を左右する問題に行きつく可能性があるのです。今後とも目が離せない問題です。

3.大震災後の日本経済

1 大震災、大津波、原発事故で感じたこと、考えたこと-日本企業はやるべきことをやっていたのか-

ここからも全く私の私見です。電力・ガス、鉄道、通信などの公益セクターに属する会社が今回の大地震に際して行った行動には、いささか疑問があります。

東京電力は、15mの津波が襲ってきたとは言え、本来やるべき投資をやってこなかったのではないでしょうか。福島第一は海のすぐ近くにありながら、原発建屋の外に設置している緊急発電用ディーゼルエンジンなどの機材の防水措置を行っていませんでした。また、すぐ近くの福島第二は福島第一と同じ津波高さを想定していながら、主要機材を原子炉建屋の中においていたため、緊急停止で済みました。また、原発は絶対に安全だと言い張って、地域住民の避難計画も立てていませんでした。原発事故の際には、原子炉への注水を何よりも急ぐ必要がありますが、廃炉を恐れて海水注入を躊躇った可能性があります。このように見ると、東電の原発運営能力は非常に低いと言わざるを得ません。このような能力のなさを見抜けなかった日本の規制当局の能力も、それを指導する政治の能力にも疑問を持たざるを得ません。今後の検証を待ちたいものです。

鉄道への疑問もあります。3月11日の東京での震度は震度5強でした。直下型大地震でもないにも関わらず、JR東日本は山手線を含むほぼ全線を終日休止しました。鉄道会社もまた本来やるべき投資を行ってこなかったのではないかという疑問があります。これも今後検証が必要でしょう。

通信会社も、この危機に際して大して役に立ちませんでした。これについても検証する必要がありますが、既存の固定電話や携帯電話はそもそも大災害時に役に立たないのでしょうか。固定電話は地中や電柱に張っている光ファイバー網によっています。携帯電話は端末から基地局までは無線ですが、残りの回線は光ファイバー網です。地震や津波に弱く、補強のしようがないのであれば、災害が多い日本では携帯電話には頼れないということになります。そうでないのであれば、携帯電話会社はインフラ投資を怠ってきたということになります。例えば、ソフトバンクは今回の震災で全く通じなかった地域が数多くあったといわれています。

一方で、携帯電話会社は国民の貴重な財産である電波を使って、音楽配信、ゲーム配信、ファイル交換などをユーザーや業者が行うことを許しています。これらのコンテンツ配信は電波の帯域を大きく使いますが、携帯電話会社はこのために相当額の設備投資をしています。もし、コンテンツ配信のための設備投資のために災害対策ができなかったのならば、そのことをどう考えればよいのか、電波行政上の問題でしょう。つまるところ、災害対策を自前でやるつもりのない通信事業者に電波を割り当てるべきか否か、真剣に考えるべき時がいずれ来ると思われます。

このように考えると、政府の規制をもっと強化して、公益セクターの災害投資を増やすように仕向ける必要があるのではないかと思われます。ちなみに、電力では関西電力が原発の災害投資に1000億円の追加投資を決めました。国の指導を先回りする動きが始まったと思われます。

2 建設投資を継続的に増やす必要性

グラフ5は、日本の建設投資の推移を表したものです。1996年度をピークとしてほぼ一貫して減少しています。特に政府の公共投資は、小泉政権下と2001~2006年に徹底的に削減され、それを受け継いだ2009年からの民主党政権でより一層削減されました。2010年秋の事業仕分けでは、地震関連の予算も徹底的に削られました。例えば、小中学校の耐震化工事などです。

民間の建設投資も政府ほどではありませんが、傾向的に減少しています。1996年度と2010年度見通しを比較すると、政府の建設投資は35兆円から14兆円に60%減少しました。民間非住宅建設(非住宅建築及び土木)は20兆円から13兆円へ35%減少、民間住宅は28兆円から14兆円へ半分になりました。政府の公共投資削減は、無駄なハコモノを減らす効果があったと思われますが、それと同時に必要なものも削られたと思われます。ここまで徹底的に減らすと、地方でも大都市圏でも、日本のインフラはぼろぼろになっている可能性があります。ちなみにグラフ6は名目GDPに対する建設投資の比率を見たものですが、過去最低を更新しています。

一方で、日本全国で地震のリスクは無くなっていません。今回の東日本大震災は、関東から東北までの広い範囲にわたって複数の震源が分散して、それらが連動して起きた連動地震ですが、東北沖地震は本来は連動しないと言われていたそうです。そうであれば、将来予想される東海地震、東南海地震、南海地震が連動する可能性もあります。即ち、東海から四国までの広い範囲で大地震と大津波が起こる可能性があるのです。これに対する備えが出来ていないことは今回の地震で我々は思い知りました。

そうであれば、日本は公共投資をはじめ建設投資全体を増やす方向で政策を行わなければなりません。当面は復興のための年間10兆円の補正予算が組まれることになりそうですが、それ以外にも公共投資を増やす必要があります。

グラフ5 建設投資(名目)の推移
(出所:国土交通省、単位:兆円、2010年度は見通し)

グラフ6 国内総生産に占める建設投資の比率
(単位:%、出所:国土交通省)

3 「住」に対する考え方を変える必要性も

また、日本人は「住」に対する考え方を変える必要があるかもしれません。

今回の地震と大津波では多くの建物が流されました。特に、木造家屋は津波で流され瓦礫となりました。木造家屋は寿命が短く、老朽化が激しいにも関わらず、日本人に好まれています。しかし、木造住宅が災害が予想される地域において災害対策のリスクであることは、今回の地震と津波ではっきりしたのではないかと思います。

また、これだけの大津波でも、一部を除いて鉄筋コンクリートの大型の建物は流されませんでした。津波が予想される地域では戸建てを立てないのであれば、高台に建てる。沿岸に住みたいのであれば、鉄筋コンクリート建てで5~6階建て以上の大型の集合住宅でなければ認めないというような規制の強化が必要ではないかと思われます。

4 最終的には地方経済を豊かにする必要がある

政府が公共投資を減らせるだけ減らしていった過程で地方の経済力は下がっていきました。各種の規制緩和で大都市圏、というより東京だけ潤いましたが、地方経済の低迷は続いています。経済力を強化しなければ、災害対策の予算も出てきませんし、復興も滞ります。

地方に経済力をつけるには、地方に投じた公共予算が地方に落とされるように、規制の強化と緩和を組み合わせる必要があります。災害対策用に、地方都市の中心部や郊外に鉄筋コンクリート製の巨大な建物を建てて、そこにスーパーマーケットを入れる。その経費を補助金で賄うなどです。工場の誘致にも積極的に補助金を使うべきでしょう。

日本は大震災後の復興に取り組まなければなりません。そして、来るべき巨大災害にも備えなければなりません。短期間では無理で、5~10年以上かかることになるでしょう。これからの10年間はこれまでの10年間、すなわち公共投資を減らし続け、規制緩和が続いた時代から大きく変わる時代になると思われます。おそらく、公共投資を増やし、その代わりに様々な分野で規制緩和があると同時に規制強化も行われる時代でしょう。これは仕方がありません。日本のように災害が多く、巨大災害に備えなければならない国は、そうでない国のようにはいかないのです。

4.参考銘柄

多くの企業が今回の大震災から工場や店舗を復旧している最中であり、経済的影響額はまだ未定の会社が多い状況です。ここでは、参考銘柄をいくつかあげましたが、業績予想は全て会社予想としました。

大きく2つの分野が注目されます。一つは復興関連で、建設機械メーカー、大手から中堅、地方までの建設会社と電気工事、電話工事、道路工事などの専門会社です。

もう一つは、輸出関連です。円安もありますが、原発事故で大きく毀損した「日本」ブランドを恢復するために、政府が輸出振興策を採る可能性があると思われます。

銘柄選択のポイントもこれまでとは変わると思われます。大震災前は電力は無尽蔵でした(実際にはそうではありませんが)。電波は携帯電話会社により多く割り当てられていました。大震災後は、日本の有限な資源、土地、電力、電波などは、日本にとって真に有用な産業に、ある程度政府が関与する形で割り当てられる可能性があります。電力不足は長期間続く可能性もありますので、無駄に使う余裕はありません。電波は災害対策に有用であることがわかってきましたので、同様です。このような観点から銘柄リストを作りました。

<復興関連>

建設機械:中国での建機需要が好調で、1月の中国需要は前年比8.5%増、2月は2.1倍でした。北米でも住宅需要の回復に伴い、建機が回復しています。日本の復興需要は、中長期的に業績好調を更に後押しすると思われます。ここでは小松製作所を挙げます。震災によりいくつかの工場が被災しましたが、現在は復旧し、生産は元に戻っています。

大手建設会社:復興予算は被災地の地元の建設会社に優先的に発注されると思われますが、工事規模が大きいときは大手建設会社にも回ってくると思われます。また、全国的にインフラ投資をする動きになれば、大手建設会社、大成建設大林組鹿島建設清水建設には恩恵があると思われます。

電気、電話、道路などの専門業者:火力発電所の増設や、送電変電設備の増設などの電源開発には、関電工東京エネシスのような電気工事会社が携わります。協和エクシオコムシスホールディングスなどの電話工事会社やNIPPO日本道路前田道路などの道路会社もあります。

電源開発:原発の停止によって、代替電源の開発が急務となっています。停止中、休止中、定期点検中の原発の再開が不透明になっているため、火力発電所の増設が必要です。ここでは日立製作所三菱電機を挙げます。また、太陽電池メーカーのパナソニック京セラには中長期的に注目したいと思います。

住宅関連:仮設住宅の建設が始まりましたが、本格的な復興と住宅建設が始まるのは、がれきの片づけが終わってからになるのでまだ先です。どういう姿になるかはわかりませんが、省エネと家丸ごと、ビル丸ごとのパナソニックを挙げておきます。

<輸出関連>

電子部品:海外でスマートフォンとタブレットPCのブームが続いているため、関連する電子部品の需要の伸びが続いています。積層セラミックコンデンサ、SAWフィルタ、通信用セラミックパッケージなどです。村田製作所は被災した工場の復旧が完了し、受注も上向いているようです。京セラは自社工場の被災はありませんでした。京セラについては、電子部品だけでなく、日本で2位の太陽電池の国内需要に注目したいと思います。

民生用エレクトロニクス、ゲーム:テレビ、デジカメなどの売れ行きが日米欧で1月以降悪化しています。各社の想定が強気すぎたこと、デジカメは韓国メーカーなどの在庫処分が影響しているようです。また、3月からは日本は地震で大幅減少、欧米も福島原発事故の心理的影響で悪化していると思われます。

一方、足元では円安が進んでいます。表3のような各社の為替前提を上回る円安になっていますので、新年度は為替については楽と言えます。

ゲームは、ニンテンドー3DSが世の中の雰囲気もあって、日米欧ともに大きくヒットするに至っていません。しかしこれは、発馬初期のソフトの大半がサードパーティ製ソフトであり、任天堂製が1作しかないためもあります。3DSのユーザーは任天堂製ソフトを待っていると思われ、任天堂製ソフトがある程度まとまって出る夏以降に盛り上がる可能性があります。

ここでは任天堂ソニーを挙げました。

自動車:日本の自動車産業は今回の大震災で最も大きな被害を受けた産業の一つです。自動車は2~3万点の部品で構成されており、下請構造が非常に複雑です。今は一次部品メーカーの状況が分かってきたところであり、次いで2次、3次部品メーカーの状況が徐々にわかってきたところです。東北に工場を持つ多くの部品工場が被災しており、今は各社とも部品の流通在庫を使って生産できるだけ生産しています。前述のようにルネサスエレクトロニクスのひたちなか工場が6月に再開されるため、日本の自動車生産もそれに合わせて立ち直ると思われますが、それまでは国内生産は低水準でしょう。ただし、円安ですから、株価の位置によっては長期投資の妙味も期待できそうです。

また、電気自動車の先行きも注目したいと思います。

ここでは、トヨタ自動車本田技研工業日産自動車ジーエス・ユアサ コーポレーションを挙げました。

表11 参考銘柄の業績推移


単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成。
注:予想は、全て2011年3月期3Q決算時の会社予想。

表12 参考銘柄の株価とPER、PBR(2011年4月11日終値)


注:PBRはマーケットスピードより。
単位:円、倍

業種分類スクリーニング
証券取引所が定める業種分類(33業種)と比べて、東洋経済の業種分類データは、約480業種と極めて詳細なカテゴリのもと、最大収益事業を基準に分類しているため、より実勢に沿ったカテゴリ検索ができます。トレンドやテーマに関連した銘柄をスピーディーにチェック!

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国内株式のリスクと費用について

■国内株式 国内ETF/ETN 上場新株予約権証券(ライツ)

【株式等のお取引にかかるリスク】

株式等は株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。上場投資信託(ETF)は連動対象となっている指数や指標等の変動等、上場投資証券(ETN)は連動対象となっている指数や指標等の変動等や発行体となる金融機関の信用力悪化等、上場不動産投資信託証券(REIT)は運用不動産の価格や収益力の変動等、ライツは転換後の価格や評価額の変動等により、損失が生じるおそれがあります。※ライツは上場および行使期間に定めがあり、当該期間内に行使しない場合には、投資金額を全額失うことがあります。

レバレッジ型、インバース型ETF及びETNのお取引にあたっての留意点

上場有価証券等のうち、レバレッジ型、インバース型のETF及びETN(※)のお取引にあたっては、以下の点にご留意ください。

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※「上場有価証券等」には、特定の指標(以下、「原指数」といいます。)の日々の上昇率・下落率に連動し1日に一度価額が算出される上場投資信託(以下「ETF」といいます。)及び指数連動証券(以下、「ETN」といいます。)が含まれ、ETF及びETNの中には、原指数の日々の上昇率・下落率に一定の倍率を乗じて算出された数値を対象指数とするものがあります。このうち、倍率が+(プラス)1を超えるものを「レバレッジ型」といい、-(マイナス)のもの(マイナス1倍以内のものを含みます)を「インバース型」といいます。

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信用取引は取引の対象となっている株式等の株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。信用取引は差し入れた委託保証金を上回る金額の取引をおこなうことができるため、大きな損失が発生する可能性があります。その損失額は差し入れた委託保証金の額を上回るおそれがあります。

【株式等のお取引にかかる費用】

国内株式の委託手数料は「ゼロコース」「超割コース」「いちにち定額コース」の3コースから選択することができます。

〔ゼロコース(現物取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
但し、原則として当社が指定するSOR(スマート・オーダー・ルーティング(※1))注文 のご利用が必須となります。(当社が指定する取引ツールや注文形態で発注する場合を除きます。)
ゼロコースをご利用される場合には、当社のSORやRクロス(※2)の内容を十分ご理解のうえでその利用に同意いただく必要があります。
※1 SORとは、複数市場から指定条件に従って最良の市場を選択し、注文を執行する形態の注文です。
※2 「Rクロス」は、楽天証券が提供する社内取引システム(ダークプール(※3))です。
※3 ダークプールとは、証券会社が投資家同士の売買注文を付け合わせ、対当する注文があれば金融商品取引所の立会外市場(ToSTNeT)に発注を行い約定させるシステムをいいます。

〔ゼロコース(信用取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
但し、原則として当社が指定するSORのご利用が必須となります。(当社が指定する取引ツールや注文形態で発注する場合を除きます。)

〔超割コース(現物取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
5万円まで 55円(税込)
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 115円(税込)
50万円まで 275円(税込)
100万円まで535円(税込)
150万円まで640円(税込)
3,000万円まで1,013円(税込)
3,000万円超 1,070円(税込)

〔超割コース(信用取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 148円(税込)
50万円まで 198円(税込)
50万円超 385円(税込)

超割コース大口優遇の判定条件を達成すると、以下の優遇手数料が適用されます。大口優遇は一度条件を達成すると、3ヶ月間適用になります。詳しくは当社ウェブページをご参照ください。

〔超割コース 大口優遇(現物取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。

〔超割コース 大口優遇(信用取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。

〔いちにち定額コース〕
1日の取引金額合計(現物取引と信用取引合計)で手数料が決まります。
1日の取引金額合計 取引手数料
100万円まで0円
200万円まで 2,200円(税込)
300万円まで 3,300円(税込)
以降、100万円増えるごとに1,100円(税込)追加。
※1日の取引金額合計は、前営業日の夜間取引と当日の日中取引を合算して計算いたします。
※一般信用取引における返済期日が当日の「いちにち信用取引」、および当社が別途指定する銘柄の手数料は0円です。これらのお取引は、いちにち定額コースの取引金額合計に含まれません。

【かぶミニ®(単元未満株の店頭取引)にかかるリスクおよび費用】 

リスクについて
かぶミニ®の取扱い銘柄については市場環境等により、取扱いを停止する場合があります。
費用について
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かぶミニ®(単元未満株の店頭取引)は、当社が自己で直接の相手方となり市場外で売買を成立させます。そのため、取引価格は買付時には基準価格に一定のスプレッド(差額)を上乗せした価格、売却時には基準価格に一定のスプレッド(差額)を差し引いた価格となります(1円未満の端数がある場合、買付時は整数値に切り上げ、売却時は切り捨て)。なお、適用されるスプレッドは当社ウェブサイトにて開示していますが、相場環境の急変等により変動する場合があります。

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  • 信用取引には、上記の売買手数料の他にも各種費用がかかります。詳しくは取引説明書等をご確認ください。
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