近年の各種貴金属や資源価格の上昇に伴い、世界的にコモディティ投資の拡大が続いています。
コモディティ投資をいち早く手がけていた金融機関や年金基金などの機関投資家に加え、コモディティ投資を実現できる金融商品の充実とともに個人投資家にも身近な投資対象として広がりをみせているようです。
コモディティには実物商品としての特性や、市場および市場参加者が異なるなど独自の要因から、株式とは異なった値動きをする傾向があります。今回の特集では、コモディティ市場を動かす要因をとらえ今後の価格トレンドを見通すことで、地に足のついたコモディティ市場の見方を解説します。
コモディティのうち市場での取引対象となるのは、原油やガスなどの化石燃料や鉄鉱石、金や銀などの各種金属資源、さらに米、とうもろこし、大豆などを始めとした農産物が主となります。市場で取引可能なほど生産量が多く、なおかつ世界のどの国でも利用価値があり、流通可能な品目であればこそ取引所で売買されるのです。
ところでコモディティは株式と価格決定要因が決定的に異なる側面があります。それはコモディティは"消費"される実物資産であるということです。株式の場合は市場を通じ投資家の間で循環し続けますが、コモディティは最終的に製品の原材料になったり、食べられたりすることで、物自体が無くなってしまいます。
消費された分が速やかに供給されるのであればよいのですが、資源であれば世界中から原材料を探しだし、採掘して、輸送するという作業が必要です。農産物でも、在庫がなければ製品を育てる時間が必要となるため、需要を満たすまで供給が回復するには相当の時間がかかります。
こうした事情からコモディティは需給がひっ迫すれば価格は上昇圧力を、需給が緩和すれば下落圧力を受けることになります。そして需給バランスがどちらかに傾くと、その傾向が持続的に続きやすいと考えられます。
つまりコモディティの価格は需給バランス、および将来的な需給の見通しに左右されやすい傾向があるのです。コモディティの価格動向を予想するためには、需給を左右する要因を見極めることが大切とされるのもこのためです。
実は近年、コモディティ各品目の需給動向に大きな変化がおこっています。その動きを読み解くカギは"新興国"です。
まず下のグラフをご覧ください。
これは2003年および2009年での主要コモディティに対する新興国の需要の比率をグラフ化したものです。2009年の値をみると石炭や銅、さらに大豆では、すでに需要の半分以上が新興国によって占められています。さらに原油やアルミなどでも新興国の存在感が高まっており、新興国が買い手としてコモディティの需給に対し大きな影響力を握っている状況が伺えます。
なぜこうした状況が起こっているのでしょうか?
近年、新興国では高度成長を実現するためインフラ整備や各種施設の建設などに莫大な資金を投じています。特にリーマンショック以降は、金融危機の影響を回避するための内需刺激策の一環として様々な公共事業投資を拡大させているところです。
公共事業やインフラ整備を行うと、様々な物(建物や道路など)を作るため幅広い種類の素材が使われますが、これは結局コモディティの消費を増加させる要因に他なりません。つまり新興国の経済成長が加速させるため国を整備しようとすればするほど、コモディティに対する需要が膨らむことになってしまうのです。
代表的な新興国だとしても、いまだインフラ基盤は必ずしも整備されていないというのが現状です。新興国各国が今後、経済成長を求めるのであればさらなる投資は不可欠となります。ということは少なくとも新興国が高成長を続けるうちは、インフラ投資の拡大が続き、需給ひっ迫によってコモディティ価格が上昇圧力を受けやすくなると見込まれるのです。
こうした新興国のコモディティ消費拡大は貿易面でも確認することができます。
上記左図は中国の農産物輸出入の推移をグラフ化したものです。
もともと中国は肥沃かつ広大な農地を活かし世界的な農産品生産国としての地位を確立し、伝統的に農業製品の輸出を得意としていました。
ところが2008年以降は一転して農業製品の純輸入国となっています。これは中国政府が主要農産物の輸出を制限したり、輸入農産品への関税を引き下げたことによるものです。
世界最大の人口大国として知られる中国ですが、今後もしばらくは人口が増加する見通しとなっています。こうした状況で懸念されるのが食糧不足の問題です。広大な国土を有する中国ですが、農業に適した土地は必ずしも多くは残されておらず、今後国内の農業生産を短期間で増加させることは容易ではありません。
つまり、このまま中国が順調に経済成長や人口増加を続ければ、中国国民への食糧供給が追い付かなくなる状況に陥る可能性も否定できないのです。中国政府はこうした事態を回避するため、将来の状況を見据えつつ今後さらに農産品の輸入を拡大させるものと想定されます。
ちなみに同様の現象は、中国を抜いて世界最大の人口国になると予想されるインドなど他の新興国でも起こり得ます。いずれの国でも所得水準の上昇や、生活環境の変化とともに農産品の消費の拡大しやすい状況にあるといえます。そうなれば農産品の需給はひっ迫し、持続的な価格上昇圧力がもたらされることになるはずです。
リーマンショック以降でのコモディティ価格上昇の一因として注目されているのが、投資資金の流入です。
近年、新興国の成長によるコモディティの需給ひっ迫見通しが強まったこと、さらにコモディティ投資が一般的になったことなどから、先進国の投資家がコモディティに資金を投じやすい環境が生まれていました。
これに拍車をかけたのが、リーマンショック以降に行われた先進国の金融緩和政策です。いわゆる世界的な金融危機に伴う景気悪化を食い止めるため、日本も含め先進国各国は金利の引き下げや、各種資産の買い入れなど、いわゆる大規模金融緩和策を実施しています。
ただ金融緩和政策には副作用があります。金利引き下げは、景気回復の支えとなった一方で金余りの状態を生み出してしまいました。また金融緩和策は流通するお金の量を増加させるために、通貨の価値そのものが下がってしまうという懸念を引き起こします。これにより実物資産であるコモディティの価値が相対的に高まるとの見方が強まったのです。
こうして潤沢にあふれた資金の一部は投資可能な各コモディティ資産へと流れこむことになりました。特に通貨の代替資産ともされる金が2011年に入ってからも史上最高値圏で推移するなど、実需を超えた投資資金の動向がコモディティ価格に影響を与えるパターンが構築されつつあります。
当面は先進国での景気回復の足取りが鈍く金融緩和策が巻き戻されるには相当の時間が必要とみられるほか、新興国からの需要増がコモディティ価格を押し上げるとの見方は揺らいでいません。投資資金の流入がコモディティ価格を支える構図はしばらく続くことになりそうです。
コモディティ価格の動向は突発的な事象によっても左右されます。2008年には世界最大のコメ生産国であるインドが悪天候の影響から輸出を停止した結果、世界のコメ価格が急上昇しています。今後も温暖化やそれに伴う異常気象の影響が農産物の需給をかく乱するものと想定されます。また一次産品を生産する各国は政治的に不安定なことも多く、最近の中東やアフリカでの紛争が原油価格上昇を招いたように供給不安を招くこともあるかもしれません。
ではコモディティの需給が緩和するシナリオが起こる可能性はあるのでしょうか?
確かに生産量が増え供給が増加することになれば、需給が緩和すればコモディティの価格は下落するでしょう。ただ、最近の傾向としてこれまでは容易に利用可能だった手頃な農地や原料、鉱山はこれまでに開発が進んだことで、新たな農地や資源をコストをかけずに見つけることは徐々に難しくなっています。つまり今後は、各種資源の生産をこれから増やすことができたとしても、これまでよりも生産するまでの費用が膨らむ可能性があります。そして、その費用増加分が販売価格に転嫁されるとすれば、供給が増えても価格は下がりにくくなると想定されます。
つまり総じて考えれば長期的観点からは、新興国の経済成長がコモディティの需給ひっ迫を招き、コモディティ価格が上昇するトレンドが大きく揺らぐことはないと考えるべきでしょう。
小額を積立てながら資産形成を図る投資家にとっても魅力的な投資対象であるコモディティ。新興国の成長を追い風に今後ますます投資家に注目され、その存在感が高まるものと期待されます。
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難易度★★★☆☆中級者向け
講師:ドイツ証券株式会社 グローバル・キャピタル・マ-ケッツ本部
コモディティ営業部長 ディレクター 山口 健一郎 氏
コモディティマーケットに精通しておられるドイツ証券株式会社 山口氏をお招きして、「コモディティセクターの見通し」について、各セクターごとにご解説いただきました。主なセクターは、「エネルギー」「工業用貴金属」「貴金属」「農産物」です。
これからのコモディティマーケット動向にご興味がある方、必見です。
ティッカー/コード | 名称 | 市場 | 信託報酬 | マーケット情報 |
---|---|---|---|---|
02809 |
|
香港その他 | 0.35% | |
鉄鉱石 | ||
---|---|---|
VALE | ヴァーレ | ブラジル |
BHP | BHPビリトン | オーストラリア |
RIO | リオ・ティント | 英国 |
金 | ||
---|---|---|
NEM | ニューモント・マイニング | 米国 |
GFI | ゴールド・フィールズ | 南アフリカ |
銅 | ||
---|---|---|
FCX | フリーポート・マクモラン・カッパー・アンド・ゴールド | 米国 |
アルミ | ||
---|---|---|
AA | アルコア | 米国 |
穀物 | ||
---|---|---|
ADM | アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド | 米国 |
BG | ブンゲ | 米国 |
原油 | ||
---|---|---|
XOM | エクソン・モービル | 米国 |
COP | コノコフィリップス | 米国 |
銘柄区分 | 銘柄名 | 通貨 | 取引所 |
---|---|---|---|
Equity Index | E-mini S&P 500 (Dollar) | ドル | CME |
E-mini S&P MidCap 400 | ドル | CME | |
E-mini S&P SmallCap 600 | ドル | CME | |
E-mini NASDAQ-100 | ドル | CME | |
E-mini Dow ($5) | ドル | CBOT | |
Nikkei225(Dollar) (CME日経225先物(ドル建)) |
ドル | CME | |
Nikkei225(Yen) (CME日経225先物(円建)) |
円 | CME | |
SGX Nikkei 225 Index Futures (SGX日経225先物(円建)) |
円 | SGX | |
SGX USD Nikkei 225 Index Futures (SGX日経225先物(ドル建)) |
ドル | SGX | |
Mini SGX Nikkei 225 Index (SGX日経225ミニ先物(円建)) |
円 | SGX | |
SGX S&P CNX Nifty Index Futures | ドル | SGX | |
SGX MSCI Taiwan Index Futures (SGX MSCI 台湾指数先物) |
ドル | SGX | |
SGX FTSE China A50 Index Futures (SGX FTSE 中国A50指数先物) |
ドル | SGX | |
Energy | Light Sweet Crude Oil (WTI) (WTI原油) |
ドル | NYMEX |
E-mini Light Sweet Crude Oil (WTI) (ミニWTI原油) |
ドル | NYMEX | |
Henry Hub Natural Gas (天然ガス) |
ドル | NYMEX | |
E-mini Natural Gas (Henry Hub) (ミニ天然ガス) |
ドル | NYMEX | |
Metals | Gold (金) |
ドル | COMEX |
miNY Gold (ミニ金) |
ドル | COMEX | |
E-micro Gold (マイクロ金) |
ドル | COMEX | |
Silver (銀) |
ドル | COMEX | |
miNY Silver (ミニ銀) |
ドル | COMEX | |
Copper (銅) |
ドル | COMEX | |
E-Mini Copper (ミニ銅) |
ドル | COMEX | |
Agriculture | Corn (とうもろこし) |
ドル | CBOT |
Mini-Sized Corn (ミニとうもろこし) |
ドル | CBOT | |
Wheat (小麦) |
ドル | CBOT | |
Mini-Sized Wheat (ミニ小麦) |
ドル | CBOT | |
Soybeans (大豆) |
ドル | CBOT | |
Mini-Sized Soybean (ミニ大豆) |
ドル | CBOT |
2011年5月16日現在
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