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第3回 債券の利回りとは(その1)・債券利回りの構成要素

第2回の債券投資の特徴・メリットでは、固定利付債の利回りは債券投資に重要な指標であることをお話しました。今回は、利回りは銘柄により差があることと、普段はあまりお聞きにならない話ですが、金融機関の観点から見る利回りの構成要素の概略を紹介します。

目次

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利回りを“分解”すると・・・

債券の利回りは、土台となる「基準金利」と個別銘柄の特性を調整する「債券スプレッド」の2つで構成されます。
個別債券の利回りは、土台部分となる米ドル建てやユーロ建てなどの額面通貨が持つ各通貨特有の「金利スワップ・レート」などの基準金利と、個別銘柄の特性から発生するリスクの大小を反映するための、「債券スプレッド」と呼ばれるリスク調整利回りから成り立っています。

言い換えると、基準金利と債券スプレッドの相場が分かっていれば、債券利回り、即ち、債券価格が決まります。単純に聞こえますが、基準金利も債券スプレッドも、一層深い要素が含まれていますので、実例とともにその概要をご説明します。

通貨が違うと・・・

最初に、同じ時点における実際の利回り(年率)を比較してみます。任意で選択した某欧州大手銀行グループが発行した3銘柄の市場利回りの実例を以下に示します。
満期に多少の差がありますが、ここでは要点が分かりやすいようにそれぞれの残存期間は8年と考えます。

  1. ユーロ建て 2025/3/17満期 固定利付き普通債券 利回り1.7%
  2. 米ドル建て 2025/6/15満期 固定利付き普通債券 利回り4.5%
  3. 米ドル建て 2025/4/1満期 固定利付き劣後債券 利回り4.9%

(※3銘柄とも2017年1月初旬時点の利回り実例)

最初に、①と②の銘柄の差は、米ドルかユーロ建てかの通貨のみと想定します。米ドル建て利回りはユーロ建てを2.8%(4.5%-1.7%)上回っていることから、8年物の米ドル「金利スワップ・レート」がユーロ建てより2.8%高いと推測できます。
②と③の差では、種別が劣後債券か普通債券かの、利金や償還金の弁済の優位性のみと想定すると、弁済順位が低い劣後債券の追加リスクを取るための報酬が年率0.4%利回りであることが推測できます。このように銘柄特有のリスク種別や大小が調整され、相場のバランスが取られています。

債券利回りの土台である基準金利の「金利スワップ・レート」は、大手銀行間においての貸出し金利と定義付けられ、通貨により高低さまざまです。上記実例時点の8年物金利スワップ・レートは、ユーロで年率0.5%、米ドルで年率2.2%と差異があります。
通貨による金利水準の差異は、それぞれの通貨が違う経済や金融環境と共存していることから発生します。

通貨が違うと・・・

債券スプレッドのからくり

先ほど①と②の銘柄間の利回り差は2.8%であり、この差は米ドルとユーロの基準金利の差であろうと推測しました。次に紹介した基準金利の実例は、米ドル2.2%とユーロ0.5%だったので、基準金利には1.7%の差しかなく、銘柄間の差の2.8%とは計算が合いません。これは間違いではなく、多くの発行体においては発行通貨によっても債券スプレッドの相場に差があることの表れです。

また、②と③の利回りの差も支払い順位の差と説明しましたが、実際には、銘柄条件の詳細の差異や発行体の支払い履行能力の強弱や市場での取引量と需給バランスなども要素として含まれています。
一見すると帳尻の合わない債券スプレッドに見られるように、債券相場には数多くの要素が複雑に入交っており、多くの学者の定量的な分析や研究の対象となっています。

一方、実務的には、債券の流通に携わる世界中の多数の金融機関や投資家が蓄積・保有している実際の市況での債券スプレッドや基準金利やそれらの相関性などの知識や蓄積されたデータが市況の均衡を保つ役割を果たしており、市場関係者間の知識や認識の差がある場合は、大勢との摺り合わせが繰り返し行われ、債券利回りを含む実務上の債券市場が成り立っています。
お客様が債券投資を考慮する際におかれましては、引き続き個別銘柄の利回りをご参考ください。

次回は、基準金利と債券スプレッドに関して、一段と掘り下げたお話を紹介いたします。

債券スプレッドのからくり

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