今回のトピックは、クーポン(利率の形式や算式)と償還の種類の違いです。数ある中から代表的な例を紹介いたします。
クーポン(利率)の形式は、発行体の要望や投資家の需要を反映して、様々な形式があります。中でも、満期まで一定の利率で固定されている形式が一番ポピュラーですが、その他にも以下の通り代表的な形式があります。
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クーポン形式 | 利率決定の概要 | 特徴・メリット | |
固定 | 固定 | 債券期間中、一定の利率 | シンプルかつ、最もポピュラー |
固定 | ゼロ・低クーポン | クーポン無し、もしくはゼロに近い固定利率。 その替わり、割引価格で投資可能 |
定期的な利金を求めない・必要としな い投資家向き |
固定 | 固定ステップアップ | 当初の固定利率が段階的に上昇するタイプ | 通常の固定利付き債に比べ、受取り 利息の合計額が増える性質がある |
変動 | 変動「フローター」 | 定期的にその時々の金利水準を参照して 利率が変動するタイプ |
金利相場に連動して変動するため、 上昇時にはうまく適応。 |
変動 | 変動ステップアップ | 当初の一定期間は固定利率、その後は 上記の変動クーポンになるタイプ |
劣後債に多く、固定利率と比べ変動利率 は大幅ステップアップする債券が多い |
変動 | デジタル(仕組債) | 予め設定の株価などのレートを参照し、高い/ 低い利率が定期的に判定されるタイプ |
仕組債に設定され、一般的には参照レート の一定の上昇や高値推移すると高い利金の 享受が可能 |
変動 | パワー(仕組債) | 予め設定の算式に株価等の変数を代入し、 定期的に算出されるタイプ |
仕組債に設定され、一般的には参照レート の一定の上昇や高値推移すると高い利金 の享受が可能 |
多くの場合、償還の時期は数年後から十数年の期間が設定されていますが、償還しない債券や、償還日が確定していない形式のものもあります。
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償還期限形式 | 償還時期決定の概要 | 特徴・メリット | |
確定 | ブレット「ストレート」 | 満期の前に償還する条項は付いてい ないタイプ |
最も一般的なタイプ、かつシンプル |
早期 | 任意コール | 満期以前に発行企業の任意で早期 に償還する可能性があるタイプ |
発行企業は資金の需要に合わせて返金 可能で、通常はブレットよりも高い利回り が期待できる |
早期 | 自動コール「トリガー」 | 株価や市場レートが、設定された条 件を満たすと自動で早期償還するタ イプ |
仕組債に多いタイプ。市況の見立て等に 見合う条件を設定することが多い |
早期 | 任意コール付き永久 | 満期の設定は無いが、一定期間後 に任意コールが付いているタイプ。 早期償還しなければ永久(償還無し) |
金融機関の資金需要を満たし、利回り が高めの劣後債の発行が多い |
永久 確定 |
永久「パ-ペチュアル」 | 満期の設定がなく、永久に償還しな いタイプ |
恒久的または超長期の資金ニーズがある 電力会社などの発行体が発行。期間が長 い分利回りは高め |
一番多いのは額面の100%で償還タイプですが、以下の通り、変動する形式もあります。
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償還価格形式 | 償還価格決定の概要 | 特徴・メリット | |
確定 | 額面の100% | 市場レートなどに関わらず、100%で償還す るタイプ。 |
シンプルかつ、最もポピュラー。 |
変動 | 株価・為替連動 | 一定の株価上昇で償還価格が上昇か、一 定の低下で償還価格が下落する例 |
転換社債や仕組債などが例。下落リスク がある場合は利率が高めに設定されるな どのメリット |
今回ご紹介のクーポン形式、償還時期、償還価格に加えて、「第8回 債券の格付け」でお話した発行体の信用力を加えた4つの要素で、債券の性質の殆どが決まります。固定利付き債以外にも様々な形式があり、それぞれのメリットがある一方、特に変動するクーポン形式や償還価格形式の債券への投資をお考えの際には、どんなときにどのように変動するか、リスクをよく理解した上で投資判断をしましょう。
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