投資家に定期的なキャッシュフローをもたらす「配当」は、投資の果実をもっとも実感しやすい指標と言えます。そのため、株式やETFの個別銘柄を選択する際の材料として、「配当」を重視している投資家も多いと思われます。
「配当」を重視する投資家にとってETFを活用するメリットの一つは、少額からでも分散投資が可能な点にあります。配当利回りの高い個別株への投資は直観的に理解しやすく、配当水準も魅力的ではあるものの、予想外の減配や無配となった場合には期待していたキャッシュフローが得られなくなるだけでなく、株価の大幅な下落を伴うケースも多いため、相応にリスクが高いと考えられます。
一方、ETFは一般的に数十以上の銘柄に分散投資しているため、減配・無配やそれに伴う株価下落等のリスクについては低減されることが期待されます。ただし、分散投資はリスク低減効果が得られる代わりに、期待できる配当利回りも低下する点には留意が必要です。
今回は、「配当利回り」を重視する投資家向けにSPDR ETFの中からいくつか銘柄をピックアップし、その特徴および留意点を簡単にご紹介したいと思います。
配当利回りおよび2020年のパフォーマンスの比較
(2021年2月23日時点、米ドルベース)
(出所)ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ
過去の実績は将来の投資成果を保証するものではありません。配当利回りは参照時点のものであり、随時変動します。
ティッカー | ファンド名 | 経費率 |
---|---|---|
SPYD | SPDR®ポートフォリオ S&P500®高配当株式ETF | 0.07% |
SDY | SPDR® S&P米国高配当株式ETF | 0.35% |
RWR | SPDR®ダウ・ジョーンズREIT ETF | 0.25% |
XLU | 公益事業セレクト・セクターSPDR®ファンド | 0.12% |
(参考)SPY | SPDR® S&P500® ETF | 0.0945% |
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(出所)ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ
上記は2021年2月23日時点の情報であり、将来変更される場合があります。
SPYDのベンチマークである「S&P500高配当指数」は、S&P500指数の採用銘柄のうち、原則として配当利回りが上位の80銘柄で構成されます。各銘柄の構成比率については、時価総額で加重するS&P500指数とは異なり、年2回のリバランス時(1月末および7月末)において均等配分とするルールとなっています*。
このため、SPYDはS&P500指数をベンチマークとするSPYと比較して、業種別配分において大きく異なる特性を有しています。
*出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス
SPYとの業種別配分の比較
(2021年2月23日時点)
(出所)ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ
上記データは参照時点のものであり、随時変動します。
2020年のSPYDのパフォーマンスは、SPYに対して約30%劣後する結果となりました。これは、業種別で最も良好なパフォーマンスであった「情報技術」に対する配分が低位であった一方で、パフォーマンスが低迷した3セクター(「エネルギー」、「不動産」、「金融」)への配分が高位であったことが理由の一つとして考えられます。
SDYのベンチマークである「S&P高配当貴族指数」は、S&Pコンポジット1500指数の構成銘柄のうち、配当利回りの水準ではなく、過去20年以上増配を継続している銘柄から構成されています。各銘柄の構成比率は時価総額ではなく、配当利回りで加重するルールとなっているため、ポートフォリオの配当利回りが相対的に高まる仕組みとなっています。
SPYDとの違いは、長期にわたる増配の有無を重視する点にあり、相対的に業績が安定している優良企業が多く含まれる傾向があります。
SPYとの業種別配分の比較(2021年2月23日時点)
(出所)ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ
上記データは参照時点のものであり、随時変動します。
2020年のパフォーマンスにおいては、「情報技術」への配分が極端に低かったことがSPYに対して劣後した主な要因として挙げられますが、SPYDと比較すると連続増配を重視した結果として「エネルギー」や「不動産」への配分が抑制されていたことから、パフォーマンスに大きな差がつきました。
RWRは、配当利回りが高いセクターの一つである米国のREITへ分散投資するETFです。RWRのベンチマークは、金利等の不動産市況以外の要因で値動きする銘柄を除外することで、不動産への直接投資に近い成果を表すべく設計された「ダウ・ジョーンズ米国セレクトREIT指数」です。
2020年の同指数のパフォーマンスは、米国REIT市場全体(ダウ・ジョーンズ・コンポジット・オールREIT指数)を5%以上下回った*ことから、新型コロナウィルスによる米国不動産市況へのマイナスの影響が相対的に大きかったことが示唆されます。
*出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス
XLUは、S&P500指数の採用銘柄のうち、安定した配当利回りが期待できる代表的なセクターである公益事業への投資に特化したETFです。
配当利回りが高いセクターの2020年のパフォーマンスは全体的に芳しくありませんでしたが、市場が混乱した2020年の1-3月期において、XLUの下落幅は相対的に抑制されていた(▲13.5% vs. SPY:▲19.5%、いずれも米ドルベース)ことから、ディフェンシブなセクターとして位置づけることができます。
2020年のセクター別パフォーマンス
(各セレクト・セクターSPDRファンドの配当込みリターンを使用、米ドルベース)
(出所)ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ
過去の実績は将来の投資成果を保証するものではありません。
今回は、相対的に高い配当利回りが期待できる株式ETFをピックアップしてご紹介させていただきましたが、一概に配当利回りが高いといっても、様々なリスク特性の商品が存在します。ETFの銘柄選択の際には、配当利回りのみに着目するのではなく、業種別配分などのリスク特性の違いについても十分勘案したうえで投資することが重要です。
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