前にも話したけどS&P500という米国株式の指数は、発行している株式の数が多くて株価が高い、専門用語で「時価総額」の大きい上位500社を順に重み付けをして計算されている指数なんだけど、これに連動するインデックスファンドがここ数年とても人気がある。
その人気化の背景には、米国の株価が2020年の春先から2021年の年末まで2年間ほぼ一直線に上昇し、S&P500インデックスファンドの基準価額で見て2倍くらいになっちゃったという絶好調さがあったんだよね。S&P500のインデックスファンド「一択」で放っておけばすぐにお金が増えてしまうという状況に、この2年間は沸いた。たくさんのYouTuberが生まれ、NISAの浸透もあって実際に新しい投資家層が増えたことは、僕の業界としても嬉しいことだった。
でも、S&P500のインデックスファンドが2倍になったのは、米国という国が素晴らしくて今後も米国という国家を信じていれば間違いないという安易な話では決してないということは言っておきたい。米国が素晴らしかったのではなく、この時期にS&P500の中で大きなシェアを持っていた企業たちが素晴らしかったんだよね。
具体的にはGoogleとかAppleとかAmazonとかの巨大IT企業たちがS&P500の上位を占めていて、この2年間それらの株価がさらに上がっていったからS&P500はさらに上がっていった。思い切って単純化すれば、それがすべてだ。米国のリーダー企業がこの時期、素晴らしかった。
もちろん今後も、米国のリーダー企業の活躍を僕らの資産運用に活かしていくにあたり、S&P500はいい指数だと思う。問題は「企業の国籍を米国に絞り込んでいる点」だろうね。この3×3のマスの絵は覚えているかな。
何千本もある日本の投信も、中身を調べるとこのマスのどれを埋めているかで理解しやすくなるという話をしたよね。そして、長期間にわたる資産形成を考える君たちなら、できるだけ「賭け」をしない方がいいと思うという話もした気がする。
簡単に言えば、ひとつのマスにだけ賭けてしまうのは心配だよねって話。もちろん1つに絞った方が当たった時には大きいわけで、複数のマスに拡げれば拡げるほど、得られるリターンは薄まりがちっていうのはデメリットだ。でもまぁそれが分散するってことだからね。
僕自身若い時に深く考えず日本株のファンドで投信積立を始めてしまったのは、まさにこれだった。自分の人生設計を「日本企業縛り」の中での株価上昇に賭けてしまったんだよね。
米国株式が絶好調なたった2年間の、しかも他人の成功事例を見ただけで「S&P500一択!」「他は考えなくていい!」と盛り上がっている風潮に僕が不安を感じるのは、自分のその経験があるからだと思う。だってこういうことだもんね。
[株式]には本来、[国内]と海外の[先進国]と[新興国]の3つのマスがあるんだけど、S&P500だけにするということは先進国のマスをさらに小さく区切った小さなマスを埋めにいっているということだからね。
次ページへ>投資信託のリスクと費用について