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●オールなカントリー?

とはいえ、絶好調な20年と21年の後に米国株をはじめ世界の株式市場に少しブレーキがかかったこともあって、最近では「S&P500一択」ではなく「全世界株式がいいのでは?」という意見を耳にすることが多くなった気がする。「全世界株式」は「オール・カントリー」とも言われるんだけど、やっぱり指数の名前なんだ。

S&P500と違ってこの日本語が冠される指数には種類がいくつかあるんだけど、最もポピュラーな全世界株式はMSCI All Country World Indexという指数。「えむえすしーあい」は指数算出会社の名前で、MSCI社が計算するたくさんの指数の中のひとつがAll Country World Index、オール・カントリー・ワールド・インデックスってわけね。オールなカントリーだから「全世界」という日本語が付けられることになった。

3×3のマスでいうとこういうこと。日本と先進国と新興国のコマを全部埋めるのがこの指数だ。

先進国はアメリカ、日本、イギリス、フランス、ドイツ、スイス、スペイン、イタリア、カナダ、オーストラリアなどなどなど。新興国は中国、韓国、台湾、インド、マレーシア、インドネシア、メキシコ、ブラジル、トルコ、ポーランド、南アフリカなどなどなど。順不同に挙げてみたけど、こんなにたくさんの国に籍を置く会社に投資したと考えて計算されるのが、MSCI All Country World Indexというわけ。会社数でいうと二千数百社だったと思う。S&P500が約500社だったのに比べると随分と多いね。

計算にあたっては二千数百社の株価を足して二千数百で割る単純平均ではなく、S&P500と同じように時価総額加重平均という方法を使ってる。時価総額とは発行済み株式数×株価なので、株式をたくさんの人に持たれている大企業で、かつ今の株価が高くなっている会社に重みを付けて指数を計算するってことだ。したがって足もとではやはりGoogleとかAmazonとかAppleといった米国の巨大IT企業のシェアが高いんだよね。そこはS&P500と同じ。

この表はオール・カントリー指数を連動対象としたあるインデックスファンドの月次レポートの一部なんだけど、これを見るとアメリカ企業が58.4%で、次に多いのは日本企業で、でもわずか5.5%で、次がイギリス、スイス、フランスとヨーロッパの企業が続いている。中国や台湾は合わせると4%ちょっとを占めているね。

あくまで本コラムをわかりやすくするために示したものであり、具体的な商品の内容を解説するものではありません。当社ファンドの現在および将来の組入を示唆するものでもありません。

右の表を見ると、国が分散されている結果として通貨、つまり為替変動リスクが分散されている。意味わかるかな。日本人の我々が日本の投資信託で海外の国の株を買っているわけなので、必ず為替変動リスクがあるわけ。今はとりあえず「円高はマズイ、円安はラッキー」と覚えておいて。

この表を見てわかるのは、米ドルは62.3%だけであとはユーロはじめ色んな通貨に分散されているということだよね。これは基本的にいいことだ。ニュースで見聞きするのは日本円と米ドルのレートばかりで、毎日円高だ円安だと言ってるじゃない。でもユーロもポンドも円との交換レートはそれぞれに動いていて、それぞれに「円高はマズイ円安はラッキー」なので、その変動要因が分散されているのはいいことだ。

それでもこっちの「組入上位10銘柄」という指数におけるシェア、つまりその企業の株価の上下が指数をどれだけ大きく動かすかという順番で見てみるとこの通り。やっぱりこの時点ではAppleとかMicrosoftとかAmazonとかAlphabet、あ、アルファベットはGoogleのことね、が並んでるよね。やっぱり米国企業がずらりと並んでいる。

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つまり、顔ぶれという意味では実はS&P500とあまり変わらないというのが、今のS&P500とオール・カントリーの関係だと言える。これはいい悪いじゃなく、それくらい世界の中での今の米国巨大IT企業たちの株価が高く存在感が大きいってことだ。

ただ、この同時点でのS&P500を連動対象にしたあるインデックスファンドの上位10銘柄の表を並べてみると、顔ぶれはほぼ一緒だけど「比率」のところがかなり違うのがわかるよね。

あくまで本コラムをわかりやすくするために示したものであり、具体的な商品の内容を解説するものではありません。当社ファンドの現在および将来の組入を示唆するものでもありません。

たとえばAppleはオール・カントリーでは4.6%だったけど、S&P500では7.27%もあるね。Microsoftはオール・カントリーでは3.8%だったけど、6.8%だ。顔ぶれは同じでも、一つひとつの企業のシェアが格段に小さい。つまりオール・カントリーの方が一つひとつの銘柄の株価の上下に振らされる程度が小さいってこと。さっきの為替変動リスクが分散されているのと同じだね。

このことは、これら上位の企業がガンガン上がっていくようなマーケット、相場の時にはマイナスに作用する。そういう時はそれらの比率が高いS&P500の方がより大きく上がる。これは間違いない。同時にこれら上位の企業が調子悪い時、S&P500の方が大きく下がる。これも間違いない。

長くなっちゃったね。悪いけど僕はS&P500とオール・カントリーのどちらがいいとは言いません。とにかく理解してもらいたいのは、インデックスファンドは指数選びがすべてだということ。だから指数の仕組みと中身をある程度でいいから理解してほしいと思うわけ。人の意見や人気ランキングなんかで安易に決めることだけはないように、と思ってるわけ。

ということでついつい長くなっちゃった。ではまた。

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