利便性の高さや、シンプルなつくりが受け入れられ、ADRの発行と取引規模は近年着実に増加しています。特に目立つのが新興国企業によるADRの活用です。
成長著しい新興国では所得水準の上昇による消費拡大や、大規模インフラ投資を背景とした需要拡大などを受け、様々なビジネスチャンスが生まれています。新興国の企業経営者にとってみれば絶好の成長機会を生かすために販売網や生産能力の拡大や、人員増強を進めたいわけですが、何をするにしても先立つものが必要になります。
ところが新興国では銀行や株式市場などの金融システムの整備が遅れるケースもあり、必要資金を調達することが難しい場合があります。新興国企業の経営者にとっては、手をこまねいているわけにはいかず、なんとかして資金調達をしたいと悩むことになります。
一方、先進国では近年新興国資産への投資が拡大しています。多くの先進国ではすでに国内市場が成熟しきっている場合も多く、企業が過当競争に巻き込まれてしまうケースも少なくありません。また政府は財政悪化に悩まされており、すでに十分な水準のインフラ整備も実施されているため、公共事業で企業が潤う余地は限られていると言えます。
自国の状況を知る先進国の投資家が、成長余力を有する新興国の有望企業に投資したいと考えるのは当然かもしれません。
こうした生まれた両者のニーズを橋渡しできるのがADRなのです。
前回ご紹介したようにADRは新規株式の発行と合わせて、海外からの資金調達を行うことが可能です。さらに有望企業であれば世界中の投資家が集う米国市場で注目を浴びることになり、自国よりも有利な条件で資金調達ができることも期待できます。
一方投資家は、有力な新興国企業への投資チャンスを待ち望んでいるわけですから、ADRの銘柄増加は歓迎されることになるはずです。
調達を行う企業、投資家の利害関係者がいわゆるwin-winの関係を築けるADRが活用されない手はありません。だからこそADRの取引規模は新興国企業の成長とともに着実に拡大しているのです。
アジア編
ではここからADRの主要銘柄の顔ぶれをご紹介していきます。すでに新興国企業のADR活用の動きについては触れましたが、その中でも特に目立つのがアジア勢の躍進です。BRICsの中心国である中国とインドの企業が高度成長時代を迎えADRの機能を活用しつつ発展しています。
またすでに先進国とならぶ経済発展を実現しつつある韓国や、ハイテク産業で躍進する台湾などの主要企業もADRに参入済みです。
上記銘柄のうちでも特に投資家の注目を集める主力企業を独自にピックアップしてみました。
すでにお気づきかと思いますが、ADRのラインナップには新興国企業でも世界市場で活躍する企業が目立ちます。アジアの成長期待を一身に集めるこれら有望企業群も、ADRを活用し先進国からの資金調達を実現できたからこそ、現在の地位を築けたのかもしれません。
次回はヨーロッパ、南米、アフリカの主要ADR銘柄をご紹介いたします。
米国株式等の取引にかかるリスク
米国株式等は、株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。また、為替相場の変動等により損失(為替差損)が生じるおそれがあります。株価指数連動型上場投資信託(ETF)は、連動を目指す株価指数等の変動等により損失が生じるおそれがあります。
米国株式等の取引にかかる費用等
米国株式等の委託手数料は、26.25米ドル/1回(1,000株まで)がかかります。1回の取引が1,000株超の場合は1株ごとに2.1米セント追加されます。売却時は通常の手数料に加え、SEC Fee(米国現地証券取引所手数料)が約定代金1米ドルあたり0.0000192米ドル(米セント未満切り上げ)。
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