近年ADRの発行で存在感を高めている国がブラジルです。BRICsの一角にも数えられ代表的な新興国として知られるブラジルですが、20世紀中は経済政策が機能しなかったことで、国際間の貿易や自国産業の育成などに遅れをとり、思うような成長を実現することができませんでした。
しかし、21世紀に入ると国際商品市況の高騰によりブラジルの資源産業が潤ったことや、政府による改革が進んだことなどから経済成長が加速。さらに経済的な躍進に伴い国際的な存在感も高まったことで2016年にオリンピック、2018年にはサッカーのW杯の開催地の座を勝ち取るなど、一躍南米を代表する新興国へと上りつめることになりました。
こうした国の経済成長に伴い、ブラジルの株式市場が発展を遂げるとの期待感が国内外で高まっています。広大な国土を持ち世界的な有力企業を有する資源セクター、海外への輸出も好調な航空機等の製造業、国内経済の成長を享受できるとされる金融セクターなどが投資家の注目を集めているようです。
【コンパニア・デ・ベビダス・ダス・アメリカス(アンベブ)】 ティッカー:ABV
アンハイザー・ブッシュ・インベブ傘下のビールおよび各種飲料メーカー。ビール生産では南米で首位、世界でも5番手につけています。経済成長とともに増加が見込まれるビール需要の囲い込みを図っています。
【エンブラエル-ブラジリアン・アビエーション】 ティッカー:ERJ
ボーイング、エアバスに次ぐ世界第3位の航空機製造業者です。2000年の本土市場への上場と同時にニューヨーク証券取引所にADRの上場を果たしました。中小型旅客機や軍事関連航空機の製造に強みがあります。
【ヴァーレ】 ティッカー:VALE
鉄鉱石をはじめ、各種金属の原料となる鉱石類の採掘や販売を手がける世界の鉱業最大手企業です。主要先進国に加え新興国の主要製鉄企業を顧客とします。先進国の引き合い増による鉄鋼石価格上昇の恩恵を受ける企業として注目されています。
【ブラジリアン・ペトロリアム - ペトロブラス】 ティッカー:PBR
ブラジル政府系のエネルギー関連企業です。南米最大の時価総額を誇る大企業としても知られ、海底石油の掘削技術に定評があります。海外展開にも積極的で、日本でも沖縄の南西石油を傘下に収めています。
【テレ・ノルテ・レステ・ホールディング】 ティッカー:TNE
ブラジル最大の通信サービス企業です。2千万人以上の固定電話契約者、3千万人以上の携帯電話契約者数を誇ります。同業他社の買収も進め、南米有数の通信企業としての存在感を高めています。
アジアやブラジルのADRでは新興国の成長企業が中心でしたが、ヨーロッパのADRは世界のトップ企業がひしめいています。
世界トップ企業ゆえに、米国の市場参加者から自国での取引機会を求めるニーズがあるほか、各国の証券取引所の整備が進んでおり、米国上場にあたって乗り越える障害が新興国企業と比べて少ないことも欧州の主力企業のADR発行を後押ししているようです。
【アルセロール・ミタル】 所在国:ルクセンブルク ティッカー:MT
インドのミタルスチールが当時欧州最大手だったアルセロールを買収し誕生した世界最大の製鉄企業です。09年の粗鋼生産量は世界トップの7,320万トンで、新日本製鉄の2.5倍以上の生産力を誇ります。
【アーム・ホールディングス】 所在国:英国 ティッカー:ARMH
携帯電話向けCPUの設計などを手掛けるハイテク企業。スマートフォンには同社が手がけたCPUが搭載されることも多く、スマートフォン関連銘柄として近年世界各国の投資家の注目を集める企業に成長しています。
【アンハイザー・ブッシュ・インベブ】 所在国:ベルギー ティッカー:BUD
世界のビール市場でシェアトップを誇る飲料メーカーです。傘下に「バドワイザー」ブランドのアンハイザー・ブッシュ、ブラジルのアンベブを抱え、今後ビール消費の拡大が期待される新興国市場の開拓をすすめています。
【ユニリーバ】 所在国:英国、オランダ ティッカー:UN
一般家庭向け各種消費材の製造および販売を手掛けるグローバル企業。紅茶の「リプトン」、スープな、どの「クノール」、石鹸の「ダヴ」など日本でもおなじみのブランドを世界展開しています。
【バイオエヌテック】 所在国:ドイツ ティッカー:BNTX
ドイツに拠点を置く臨床段階のバイオテクノロジー企業。がんやその他の深刻な疾患の治療のための患者固有の免疫療法に焦点を当てる。科学的アプローチと技術プラットフォームを使用し、個別のmRNAベースの製品候補、キメラ抗原受容体T細胞、チェックポイント免疫調節剤、標的がん抗体、小分子などを含む幅広い製品パイプラインを開発する。
ADRの奥深いところは、こうした世界屈指の大企業や新興国の成長企業が、同じ米国の証券取引所に上場され、そして米国の上場企業と同様に取引できるということです。
各国独自の取引規制や制度、さらにディスクロージャーや会計制度の違いなどが米国基準に統一されることで、投資家が余分なコストや負担を強いられることなく国際投資を実現できるプラットフォームが構築されているのです。
今では当たり前のように存在しているADRですが、将来は資本市場の発展に貢献した金融商品として評価が高まるものと見込まれます。
米国株式等の取引にかかるリスク
米国株式等は、株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。また、為替相場の変動等により損失(為替差損)が生じるおそれがあります。株価指数連動型上場投資信託(ETF)は、連動を目指す株価指数等の変動等により損失が生じるおそれがあります。
米国株式等の取引にかかる費用等
米国株式等の委託手数料は、26.25米ドル/1回(1,000株まで)がかかります。1回の取引が1,000株超の場合は1株ごとに2.1米セント追加されます。売却時は通常の手数料に加え、SEC Fee(米国現地証券取引所手数料)が約定代金1米ドルあたり0.0000192米ドル(米セント未満切り上げ)。
ポートフォリオ機能・お気に入り銘柄機能
楽天証券へ資料請求して、今すぐご利用いただけます。
「ログイン前の登録銘柄と同期する」設定をしていただくことでご利用いただけます。