前回は、新興国の基準金利が高くなる傾向を紹介しました。今回のトピックは「債券スプレッドは利回り調整役」です。
債券の条件の違いが利回りにどう影響するのか考えてみましょう。
下の図は発行体格付け別の債券スプレッドの平均値を示します。一般的に格付けの高い発行体は、低い発行体よりも返済能力が高く貸倒れ懸念も低いとされ、債券スプレッドは低めとなります。返済能力の差は、発行体の事業収益や資金流入の大きさや安定性などに左右されます。
発行体格付け別の社債スプレッド平均 出所:ブルームバーグ(2017年3月下旬)
格付機関は、これら要因の分析と評価を元に格付けを付与・変更しています。(下の図を参照)ただし、債券スプレッドは常に格付け順となるわけではありません。また、同格付けでも差はあり、AAA格の世界銀行は数カ国からの出資金で運営されており返済能力が高いため、同格付けの発行体の中でも債券スプレッドは低めで取引されます。
AAA | 債務者がその金融債務を履行する能力は極めて高い。S&Pの最上位の発行体格付け。 |
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AA | 債務者がその金融債務を履行する能力は非常に高く、最上位の格付け(「AAA」)との差は小さい。 |
A | 債務者がその金融債務を履行する能力は高いが、上位2つの格付けに比べ、事業環境や経済状況の悪化の影響をやや受けやすい。 |
BBB | 債務者がその金融債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い。 |
債券のいろは第3回では、普通債と劣後債や額面通貨の違いと債券スプレッドの関係を紹介しましたが、債券満期までの期間の差も債券スプレッドと深い関係があります。右表では、残存期間以外はほぼ同じ米国大手銀行の2銘柄の差を比較しております。
大手銀行発行の米ドル建て普通債券2銘柄の利回り比較 (出所:ブルームバーグ(2017年3月下旬)
通常、債券の満期が長いほど貸倒れリスクが高くなるため、債券スプレッドは高めで取引されています。下記の算式からイメージできるように、投資リスクが高い分、債券利回りを高めに調整しているという訳です。
債券利回り=基準金利+債券スプレッド
利回り重視の投資案件をご検討の際は、小額からも購入可能な劣後債などもお考えください。
国内債券のリスクと費用について
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