掲載日:2023年8月16日
2024年から新しいNISAが開始されますが、一方ではジュニアNISAが2023年をもって廃止されます。2023年が最後の年となるジュニアNISAについて、今からでも利用すべきなのか、これまで投資してきた分は今後どうなるのかなど、ジュニアNISAの気になるポイントについてご説明します。
まずジュニアNISAの制度について確認しておきましょう。
通常の証券口座では利益に対して20%(復興特別所得税を除く)課税されますが、NISA(少額投資非課税制度)口座の中では非課税となります。ジュニアNISAは、そのようなNISAの中でも口座開設者を未成年に限定した制度として2016年1月に開始されました。
ジュニアNISAの概要をまとめると次のようになります。
利用できる方 | 日本にお住まいの未成年者の方 (口座を開設する年の1月1日現在) |
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非課税対象 | 株式・投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益 |
口座開設可能数 | 1人1口座 |
非課税投資枠 | 新規投資額で毎年80万円が上限 |
非課税期間 | 最長5年間 |
投資可能期間 | 2016年~2023年 |
運用管理者 | 口座開設者本人(未成年者)の二親等以内の親族(両親・祖父母等) |
払出し | 18歳までは払出し制限あり。 |
ジュニアNISAの概要(出所:金融庁ホームページ)
利用できるのは、日本に住み、口座を開設する年の1月1日時点で未成年の方です。つまり、今年の場合なら、2023年1月1日時点で17歳以下の方が対象となります。
非課税となる利益は、株式や投資信託等への投資から得られる配当金・分配金(インカムゲインと呼ばれます)や値上がり益(譲渡益/キャピタルゲインと呼ばれます)になります。
口座開設できるのは一人あたり1口座のみで、年間80万円まで投資でき、最長5年間非課税のまま投資を継続できます。
お子様1人あたり年間80万円ですから、例えばご夫婦でお子様が2人(未成年)の場合、夫婦それぞれがつみたてNISAを利用すれば年間80万円(40万円×2)、ジュニアNISAで年間160万円(80万円×2)となりますので、家族合計では年間240万円までNISAで投資できるのです(ご夫婦が一般NISAを利用する場合は合計で年間400万円に!)。
口座開設者は未成年ですが、実際に口座を運用・管理するのは、口座開設者本人の二親等以内の親族(両親・祖父母等)となっています。
また、原則としてジュニアNISA口座で投資したお金は、18歳まで払い出すことができません。これは、ジュニアNISAが進学や就職といった子どもの将来のための 、資産形成を目的としていることによるものです(この部分は法改正がありますので、詳しくは後述します)。
最後に、ジュニアNISAで対象となる商品、対象とならない商品は以下の図のようになります。
ジュニアNISAで取引できる金融商品(出所:金融庁ホームページ)
基本的には、株式やREIT(不動産投資信託)およびそれらを対象とした投資信託(ETFを含む)が対象で、それ以外の商品は対象外となります。
ジュニアNISAは、令和5年度税制改正により、2023年末を持って廃止されることになりました。
同税制改正による2024年からの新しいNISAは18歳以上の成年向けとなっており、2024年以降は18歳未満の未成年者が利用できる非課税制度はなくなります。
ただし、1つ理解しておいていただきたいのは、2023年末までにジュニアNISA口座で投資したお金は、今後も最長5年間、もしくは口座開設者本人が18歳になるまでのいずれか長い期間、非課税で投資を継続できることです。
つまり、口座開設者本人の年齢によって実質的な非課税期間が変わることになります。
お子様がまだ小さいという方は実質的な非課税期間が長くなりますので、利用する価値が大きいと言えます。
2023年で新規の口座開設、投資は最後となりますが、実際に利用するためには2023年9月末まで(金融機関によって期限は異なる可能性があります)に口座を開設し、12月末までに投資を完了する必要があります。
なお、少し細かい話になりますが、12月末までというのは、証券取引の受渡日ベースとなります。
株式や投資信託などの証券取引では、注文を出し(申込日)、その注文が成立(約定日)、その2~5営業日後に証券と資金の受け渡しを行う(受渡日)という流れになっています。
国内株式の場合は約定日から2営業日後が受渡日となりますが、投資信託は商品によって異なりますので、年末ギリギリの注文だと受渡日が年内にならず、ジュニアNISA口座扱いで投資できなくなってしまう可能性もありますので注意が必要です。
ジュニアNISAの非課税期間は、一般NISAと同様で、原則は最長5年間ですが、口座開設者本人(お子様)の年齢によっては、その方が18歳頃まで非課税で保有できることになります。
2023年時点で①16歳の方と、②5歳の方を例として具体的に確認していきましょう。次の図をご覧ください。
まず2023年時点で①16歳の方が2023年にジュニアNISA口座で投資をした場合にいつまで非課税で保有できるか確認してみましょう。
上の①のように、この方が18歳となるのは2年後ですから、ジュニアNISA口座での非課税保有期間(2023年に投資した分は2027年12月末まで)終了よりも先に18歳に到達します。
このような場合は、シンプルに投資した時点から最長5年間の非課税が適用されます。
非課税期間終了時には、売却してしまうか、課税口座(通常は特定口座)に払い出してそのまま保有を継続するかを選択します。
次に2023年時点で②5歳の方です。この場合はジュニアNISAの非課税期間が終了となる2027年12月末時点でもまだ10歳です。
このような場合には、ジュニアNISA口座の残高を継続管理勘定と呼ばれるところに移管することで、その後も18歳頃まで非課税で保有を継続できます(なお、ここで“18歳頃”と書きましたが、正確には1月1日時点で18歳である年の前年12月31日までとなります)。
そして、従来は継続管理勘定へ移管するためには一定の手続きが必要だったのですが、2024年以降は非課税期間終了後に自動的に移管されるようになります。
このように、ジュニアNISAを利用した場合、最長5年間もしくは18歳頃までのどちらか長い期間にわたり非課税で投資を継続することができるのです。
生後すぐの0歳の方であれば18年間近く非課税で保有を継続できることになりますから、お子様がまだ小さい場合には、非課税メリットがかなり大きくなるわけです。
制度概要のところで、ジュニアNISAのお金は原則として18歳まで払い出しができないことに触れましたが、この点についてもう少し詳しくご説明します(なお、ここで“18歳まで”は、より正確には“3月31日時点で18歳である年の前年12月31日まで”を意味します)。
例えば、中学や高校から私立に進学して教育費負担が大きくなった場合など、18歳を待たずにお金が必要になることも考えられます。
そのような場合、ジュニアNISAのお金を払い出すと、原則としてそれまでの利益に対する扱いがすべて課税扱いになります。
また、払い出す場合も一部のみの払い出しはできず、全額を払い出して、ジュニアNISA口座を廃止することになります(ただし、災害等やむを得ない事由による場合には、例外的に非課税での払出しが可能です)。
払い出しは、これまでこのような取り扱いだったのですが、法改正により、2024年以降に払い出す場合には、年齢に関わらず、また災害等やむを得ない事由によらない場合であっても、非課税の取り扱いで払い出せるようになります。
ただし、これまで同様、一部のみを払い出すことはできませんので、全額を払い出す必要があります。
例えば、2024年以降の時点において、ジュニアNISA口座での残高が300万円あり、100万円分だけ使いたいと思っても、ジュニアNISA口座のお金を使おうとする場合は、全額を払い出すことになります。
他の手立てで100万円を用意できない場合は、ジュニアNISA口座のお金300万円を全額払い出して100万円を使い、残りの200万円は課税口座(通常は特定口座)にて再度投資し直して保有を継続するのが選択肢になるかと思います。
課税口座で利益が出た場合には課税されますが、預貯金に眠らせておくよりはよいのではないでしょうか。
ジュニアNISAが開始された2016年頃から利用されてきた方は、最長5年間の非課税期間が終了すると、翌年のジュニアNISA口座に全額移管するロールオーバーができました。
2024年から新しいNISA制度が始まりますが、お子様が18歳以上になっていればお子様の新しいNISA口座にロールオーバーできるのではないか、と考えられるかもしれません。しかし、それはできません。
2023年までのジュニアNISAと、2024年から始まる新しいNISAは完全に別の制度として扱われるため、ジュニアNISAで保有しているものについては、すでにご説明した通り、非課税期間終了時には売却するか、課税口座(通常は特定口座)に払い出すかという選択になります 。
2024年以降で非課税期間が終了する場合、その後も運用を継続していきたい場合は、一度売却した上で、2024年から始まる新しいNISA口座で買い直していくのが現実的な選択肢になるかと思います。
(2027年12月末時点で18歳未満の場合は継続管理勘定へ移管後、18歳頃に売却または特定口座に払い出し)
現在のジュニアNISAは、お子様(口座開設者本人)の年齢によって実質的な非課税期間が変わるため、幼いお子様であれば非課税期間が長くなるものの、中学生以上のお子様の場合には非課税期間は5年程度とそれほど大きなメリットにはなりません。
一般NISAにも共通するポイントですが、非課税期間が5年程度とそれほど長くない場合、非課税期間終了時点で含み損になってしまうと、損益通算や繰越控除ができないため、結果的にはデメリットしか残らない、という可能性もあります。
お子様の年齢に応じて実質的な非課税期間をご確認の上、投資対象についてもしっかり検討しながら利用していただければと思います。